呪い天使 21 『計画』
都宮は友達ではなかった・・・
呪い天使21 『計画』
三日月は曲がり角に隠れながら足を震わせていた。
夕日がバックとなりオレンジ色に輝きながらゆらいでいる視野の奥には、
都宮と鈴科が、オルゴールについて、笑いながら話していたからだ。
都宮と鈴科はしばらくして手を振って離れた。
鈴科は反対方向に行き、都宮は三日月の方に近づいていてきた。
三日月はとっさに曲がり角の奥へ走った。
影が近付いてくるのが分かった三日月は後ろを向いて目をつぶった。
コツコツと靴が地面を蹴る音が大きくなり、そして小さくなっていった。
聴覚のみで状況判断する三日月の耳はその音を必死にとらえていた。
数分後、その音は消えていった。
三日月の足は崩れ落ち、その場で倒れこむかのように座り込んだ。
三日月の目はどこも向いていなかった。
ふと下を向き、ほどけた靴の紐を直した後、家に帰った。
次の日
僕は何も知らずに学校に来た。
僕と三日月はそれぞれの教室に入り、三日月はバックを置いて僕の教室に来た。
三日月は明るく、ずっと笑っていた。
そして傍から見ればいつもと同じ光景が僕の机に広がっていた。
僕はいつもと違うことに気付いている。
三日月は笑い続けている。
笑顔なのにちっとも笑えていないのが判断できるほどだった。
どこかひきつっている。
だけど僕はあえてその点を突っ込まずに三日月の笑いに笑顔で答えるしかなかったが、
三日月はその理由を昼休みに自ら打ち明けてくれた。
「昨日、見ちゃったんだよ。 ――――――――――」
体育の時間足をひねり、保健室でのんびりしていた僕の表情は凍て付いた。
時計の針さえも止まる気がした。
視野は三日月を中心に広がっているが目に映ったのは窓の奥にいるカラスくらいだっただろう。
電気もつかず、誰もいないその部屋はどこか冷えていて、僕は一番奥のベッドに靴を履いたまま寝そべった。
ずっと、ひっそりと生えた木しか映さない窓に現るカラスのことばかり気にかけるようになっていた。
時計の針が一周し、チャイムが鳴った。
相変らず誰も居ない部屋だったが、三日月が保健室に来てくれた。
「伊藤・・・。こんなの・・・ひどすぎだよ・・・
オルゴールまで壊して・・・。鈴科に情報提供してただなんて・・・
私・・・騙されてたんだ・・・・。影で二人して笑ってたんだ・・・。
ずっと友達だと思ってたのにさ・・・
都宮・・・私のこと嫌ってたんだ・・・
鈴科が何かしたのよ・・・。ひどすぎるよ・・・・・・・」
三日月がたくさん話し掛けてくるが、僕は何の反応もしなかった。
心臓が激しく鼓動してくる。
頭に笑っている鈴科と都宮の顔がよぎる。
その映像を叩き崩したがまた奴らの顔が浮かんでくる。
それをまた消し潰す。
しかしまた現われてくる。
髪の毛をかきむしりながら歯をギシギシならしたが、あいつらはまた現われてくる。
目線の向こうには三日月がいるはずなのに、僕の目には三日月はまったく映っていなかった。
次の一言までは。
次の一言までは僕は何も見えていなかった。
しかし、次のたった一言で僕の目に三日月が映ることになる。
「・・・・私たちも・・・・・・・・仕返しするべきだよ・・・・・・」
僕の目は青色に光り、三日月の手を握った。
・・・カラスの声が近くで聞こえた。