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呪い天使 20 『憤慨』

オルゴールに忍び寄る鈴科の手・・・!


呪い天使 20 『憤慨』




『伊藤の宝物のオルゴール、壊せば?次体育だし(`∀´)ケラケラ』



体育の時間が始まり、鈴科以外の全員が外に出た。



鈴科はあたりを見回した。

廊下も見渡した。

あと二分で授業が始まる。

奇麗に並んだ机の列。

鈴科はゆっくりと伊藤の机の方に向かっていった。

コツコツと音が響き渡る。

伊藤の机の前に立った鈴科はイスを下げ、机の中を見た。

目を見開き、ノートを取り出し、ガツガツと調べだした。


・・・・・あった・・・・・・・・・・・・・・。


鈴科はその小さい箱のようなものを取り出した。


タッ、タッ、タッ・・・・・・


それを見つめて口元をにやかせていた鈴科は近づいてくる足音に気付いていなかったようだ。

鈴科が伊藤のオルゴールを下に投げつける。

と同時にドアが開く。



ガッシャンッッッ!!!


ガッ――――ガララララ―――――――――――


・・・・




ドアを開けた人間・・・・それが僕だった。




時は止まった。

しばらくのあいだ沈黙が続く。

チャイムは鳴り生徒が走る音が上から聞こえるが、授業が始まったのか、音はすぐに消えていった。

中身の取れたオルゴールが、さらに僕らを沈黙の世界へと包み込んだ。


鈴科が後ろを向こうとした。

そして、ドアに向かって走り出す。

そのとき僕の口は初めて開かれる。


「おいっっっ・・・・・・・・。」


鈴科は返事することなく、消えていった。

やがてその音もさえも消えていった。

教室はカーテンの影で暗くなっていた。

僕はふいに目線を下げ、近寄った。


オルゴールは、中身と箱が分かれていた。

本体と父さんとの写真が貼ってある蓋も分かれていた。

ハンドルと音を出す金属の部分もはずれていた。


自然と目から出る何かが口に入る。

直そうとしても、とても自分の手では直せそうになかった。

修理できるだろうか・・・。

直るかどうかが、不安になっていった。

ゆらいでいる心臓と頭が僕を無の空間に投げ飛ばした。


しばらくして、ゆっくり立ちがった。

体操着をきたまま、僕は安定しないその目を必死に拭きながら校門を出て行った。

いつも使わない体力をここで使った。

偶然にも近くに修理屋があった記憶がある。

そこに、早く行きたい。

その一心で僕は走りつづけた。


修理屋は記憶通りあった。

僕は少ないお金をすてそこに費やすことにした。

「直らないことはないが分からない」・・・とあいまいなことを言わた。

だけどもその言葉は少し僕を安心にさせた。

素人から見れば

「もう直らない」の一言以外考えられないような壊れようだったからだ。

・・・鈴科・・・・・・・

そして店員からは

「いつになるか分からない」と言われ、僕は店を出た。


教室では三日月や都宮が待っていた。


どうしたの?と言われるが 別に、としか答えられなかった。

もちろん二人の表情は僕には分からなかった。


いつのまにか放課後になっていた。

都宮は先に帰ったのか、僕と三日月は二人で帰っていた。


「伊藤・・・どうしたの・・・?」

「別に・・・」

「・・・・嘘・・・つかないで・・・・・何かあったんでしょ・・・・?」


僕はとうとうその重い口を開けた。

三日月はとても僕の気持ちを分かってくれた。


「・・・・・・ひどい・・・・・ひどすぎるよ・・・・・・・・・・」


次第に僕は口数が増えていった。

三日月が励ましてくれたおかげで、しゃべれるようになってきた。


「・・・・最低だよ・・・・・・あいつ・・・・・もしもオルゴール直らなかったら・・・」

「・・・人間として最低だよ・・・。あんなやつ・・・呪われればいいのに・・・」

「いじめっ子はどうして損をしないんだろうね・・・。」


「・・・待って・・・・・・・そうよ・・・・・そうよ・・・」


「ん?」


「鈴科・・・・・そもそも何でオルゴールのこと知ってるの?」

「・・・・たしかにあのとき3人でしか見てなかったし・・・。」

「しかも鈴科本人はいなかったよ・・・?ちゃんと確認したもん・・・」

「なんで知ってるんだろ・・・。オルゴールのこと・・・。」

「分からない・・・。あっ・・・じゃぁね。」


いつのまにか信号をわたり、僕と三日月は道を変えた。

僕は、また下を向いてしまった。


三日月は、その頃ひとりでずっと考えていた。

たくさんのありとあらゆる仮説を立てていった。

当然、都宮とは親友だと思っていた。

仮説をたてたものの全く疑っていなかった。


オレンジ色に染まる景色の奥には、ある二人が映し出された。

三日月は目を疑った。

頭の中が真っ白になった。

目が震え、手には冷汗まででてきた。

目をつぶり、現実を受け入れようとしたが次は足が震えてきた。

どうしようもない恐怖に襲われ、三日月は涙を流し始めた。

三日月は曲がり角に隠れてこっそり顔を出して見続けた。



笑い合う二人の顔があった。



話の内容も聞き取れた。

それが三日月のある仮説を確実なものにしていった。




都宮と鈴科が、オルゴールについて、笑いながら話していた。

三日月が見たものは裏切りだった

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