呪い天使 02 『生徒』
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呪い天使 2 『生徒』
1次審査当日のこと。
「えっと・・・!僕は伊藤雄です・・・!是非清き一票を・・・!」
「みなさんこんにちわ。僕は鈴科影斗といいます。よろしくお願いします。」
形だけの演説だった。
今行っている集会は立候補する人が名前をあげるためだけの会。
とりあえずマニフェストなど語ったところで意味はない。
結局一次審査で投票するのは先生だけ。
いくら良い演説をしても、偏見の目は変わらない。
今までの自分の成果が見られる所だ。
一応成績では鈴科には勝っているんだけれども・・・。
何も部活に入っていない僕と陸上部のエースの鈴科。
鈴科がそこの点では優れているから結果は見えない。
「伊藤〜!演説お疲れ!演説良かったよ!」
都宮が優しく声をかける。
水沢も同行してきた。
「結局今までの実績の勝負だから演説は関係ないけどね。」
「まぁまぁ、そんなこと言わないでさ!」
数日後だった。
一次審査の結果は発表されたある日。
学校の門にどうどうと勝った人の名前が書かれる。
粋な先生みたいで毎年恒例である。
そして僕は朝から驚くことになる。
なんせその門に書かれている名前は『伊藤雄』であったからだ。
今日、久しぶりにクラスメイトがここぞとばかりに話し掛けてくる。
「お前すごいじゃん!」
「鈴科に勝ったじゃん!」
「お前が生徒会長決定じゃねーかよっ!」
「ははっ!根暗な学校になりそうだぜ!」
「それはいいすぎだろ!まっ、雄ならいい学校にしてくれるさ。ははっ」
「じゃっ、頑張れよー」
まだ完全に決まってもいないのにこの盛り上がり。
また始まった、あの例のエール。
笑うもの、ノリについていくもの、手拍子だけするもの。
いろんな人が僕を見つめた。
目線のおきどころに困る僕は床しか見ることができない。
下を向きながらうなずくだけの僕の視界に教室を出る鈴科の顔が映った。
放課後
今日は都宮も水沢も先に帰ってしまった。
ひとりで帰るのは慣れているけれど今日はなんとなくだれかと帰っていたかった。
そう考えると、本当に誰かと帰っていればよかったのかもしれない。
今日はすごい日だと感じた。
また驚かせることがあったのだ。
普通の人は普段持ち歩いていないようなナイフが、
自分の靴に刺さり、靴は履けないくらいズタズタになっていたからだ。
なお、この物語はフィクションです