呪い天使 19 『合流』
鈴科と都宮が組んでいた理由は・・・
呪い天使19 『合流』
『伊藤の宝物のオルゴール、壊せば?次体育だし(`∀´)ケラケラ 』
都宮は鈴科にメールを打った。
手を石鹸で洗いながら都宮はふと何日か前のことを思い出していた。
・・・・・
「この写真を撮ったのは伊藤本人だ。俺と伊藤はもともと組んでいたんだよ」
都宮はこの言葉で失望した。
怒りの矛先は伊藤に向かっていた。
もちろん、組んでいた鈴科に対しても同じだった。
日にちは覚えていないがその日からすぐのことであった。
鈴科が都宮に話し掛ける。
「都宮・・・。お前、水沢に言ったんだって?デタラメを。」
デタラメとは、もちろん『伊藤が水沢を嫌っている』ということ。
鈴科には全てを見抜かれていた。
都宮は後ろを向こうとしたが足が動いてくれず、
低く小さな声を出しうろたえた。
鈴科はそのまま話を続ける。
都宮は鈴科の口元しか見ることが出来なかった。
「まぁ一応礼を言おう。伊藤から人が離れていくんだからな。」
その一言で都宮が何かに気付いた。
はっと目を開き、動かなかった口を開かせた。
「じゃぁ、あの写真を撮ったのが伊藤ってのは嘘だったの?私と伊藤を離すために・・・・・・。」
「いや違う。まぁ信じられないと思うが聞け。」
「誰が信じるものか。」
都宮がむっとして睨みつけた。
そして背を向けて教室に戻ろうとした。
もちろん向うべきところは伊藤のもと、水沢のもと。
許してもらえないだろうが、嫌われるかもしれないが謝ろうと決意したのだ。
しかし鈴科は強引に都宮の両肩をつかんだ。
かすかに聞こえる叫び声もうるさい廊下では響かなかった。
鈴科が長々と都宮に話す。
「そもそも何で伊藤が俺と組んだかだ。というか仲はそこそこ良かったんだ。
二年に進級したその日、伊藤は隣クラスの三日月に一目惚れをした。
だが全然三日月と話せない伊藤は生徒会選挙の日、俺に相談をしたんだ。
どんな手を使ってでも彼女と仲良くするキッカケを作ってくれ、と。
最初は俺だって友人の言ったことだ。それくらい承諾した。
そのキッカケが狂言イジメをし、上前の犯行を三日月が目撃する、というものだった。
そして要望通り伊藤は三日月を手に入れた。
そこでだ。邪魔になった人間がたった一人だけいたんだ。
都宮。それがお前だ。
いつもまとわりつくお前を自分の目の前から消そうとした。
そこであいつは俺にこういった。
『都宮が何か悪いことをしているのを証拠に残して先生に渡してくれ!』
俺はその通りにしてやった。
だが俺はその写真に伊藤の暴力団と歩く姿のオマケを付けてやった。
そして伊藤は生徒会長の権限を失ったのさ。
その理由は簡単だ。
同時に伊藤は俺のことまで嫌い始めたんだよ。
三日月だけいればいいというのがあいつの思考だろう。
俺はそれに腹が立ち、伊藤を嫌い始め、狂言イジメを本物のイジメに変えようと決意した。」
「・・・・・・・・」
都宮は頭の中で考えた。
「じゃぁ・・・なんで今私に話しかけたのよ・・・?」
「そこだ。一緒によ、伊藤をつぶさねぇか?」
まったく想像もしていなかった。
鈴科とはずっと敵の関係のままだと思ってた。
「由奈ちゃんもはめるってこと?それは嫌よ。」
「図々しい奴だな。水沢はどうでもよかったのかよ?」
「だからなによ。」
「水沢に全ての事を言えば終わりだ。お前は独りになる。」
「・・・・・それは・・・・・・・・」
「伊藤は結局お前を嫌ったんだぞ?」
「伊藤は本当に憎いよ・・・。でも由奈ちゃんが・・・・。」
「その三日月が、親友伊藤をお前から奪った。」
「・・・・・」
「三日月も、きっとおまえのことが邪魔だと思ってるよ。もう既に付き合ってるんじゃねぇか?」
鈴科の言葉にはどこか説得力があった。
不確かな情報も、確かなものに聞こえてくる。
・・・三日月は嫌なやつかもしれない・・・。
「今、伊藤と鈴科の状況はどうなの?」
「俺は最近伊藤に何もしていないが、伊藤も気付き始めたのだろう。いじめられると。」
「写真のこともあって今頃震えてるでしょうね・・・。で、今度またいじめを再開するわけね。」
「そういうことだ。どうだ?」
都宮はにやりと笑いながらうなづいた。
鈴科がはじめて都宮の素顔を見た人となった。
そして都宮は鈴科と裏で会うようにしていた。
全ては伊藤をつぶすため。
もちろん鈴科が都宮に告げた狂言イジメなどは全て嘘だとも知らずに。
人はどこまで人を信じることができるのだろう?
表では上前とパーティーをした。
三日月とも仲良い素振りを見せていた。
オルゴールとかも見た。
実は都宮も鈴科も考えてみれば、もう何の被害もない。
生徒会では受かった。
退学処分も下されなかった。
しかし鈴科は屈辱をくらった。
都宮は伊藤に嫌われ、騙されていると思っている。
体育の時間が始まり、鈴科以外の全員が外に出た。