呪い天使 18 『送信』
上前さえもいなくなった。
呪い天使 18 『送信』
パーティーは終わり、上前は去っていった。
飛行機が僕達の上を飛び去り、だんだん小さくなっていくように離れていった。
くっきり残る飛行機雲を眺めていれば、雲は少しずつ消えていく。
飛行機雲も消え、僕達は一人一人空港から自宅に帰った。
おおよそ一週間経った頃の僕たち。
水沢は席から動かず、都宮と三日月は仲良く普通に話し、僕と三日月はさらに仲良くなった。
都宮とも僕は仲よくなっていった。
そういえば鈴科も何の行動も見せない。
都宮と三日月も不思議に思っていたが同時に安心もしてくれていた。
すべての事件は終わったんだな、と3人で笑い合った時さえあった。
忙しい日々は終わりを告げて、近頃は何か抜けている毎日を過ごした。
何もないのが一番。
暇、退屈というのが最高なのだ。
そしてそれは安らぎであることを僕に教えてくれた。
放課後
三日月と僕はたった二人で帰っていた。
三日月がそっと僕に話かけてきた。
「水沢、もう見なくなっちゃったね。なんでだろうね?」
「分からない・・・。でも、あんまし未練ないのが不思議なんだよね・・・。」
このとき僕の意思はすでに決められていた。
意識的はない。無意識的にそう決断していた。
「・・・昔はあんなに仲良かったのにね・・・。」
「・・・・今は・・・三日月と仲良くなれたからいいよっ・・・!ははっ・・・」
「ありがと!私も都宮と仲良くなれてよかった!もちろん伊藤ともね!」
三日月がそっと笑いかける。
僕はその笑顔に笑顔で答えた。
僕はここであることをひらめいた。
確かに、この時間は最高のひとときだった。
「そうだっ!今度俺の大切にしてる物を見せるよ。」
「え?なになにっ?」
「まだ言わないよっ」
無論それはオルゴールである。
過去誰にも見せたことがない。
母さんにもだ。
だが、今この帰り道に右を歩いている少女には見せられる。
むしろ見せたい。
そして分かち合いたい。
僕の今の言葉を素直に喜んでいる彼女の横顔が僕の右目に映った。
信号が見える。
信号が青く光る。
同時に僕は足を遅くした。
「今日の授業でさ・・・茂木先・・・・・」
街燈に照らされた僕たち二人は優しく笑う。
赤信号に引っかかり、二人は近くのベンチに座る。
耐えない笑いだった。
互いに話題を出し、互いに笑い合った。
本当に尽きそうにない。
「じゃぁね!明日、それをもってくるよっ!」
「うん!楽しみにしてるよ!じゃーねー!」
次の日
三日月に見せる日がやってきた。
そばには都宮もいた。
都宮を払おうとすると友人関係が崩れそうだし、
都宮には見せても大丈夫かなと思ったので、僕は二人にそれをだした。
「見て。これね、オルゴールなんだ。」
僕は全てを話した。
父さんとの思い出、楽しかったこと、辛かったことも全部語りつくした。
傍から見ればとても痛々しい少年だっただろう。
だが僕は恥ずかしいや照れくさい、といった感情さえでなかった。
満足までしている。
「きれいな音だね」
「うんうん。」
「すごいねぇー!」
二人とも目を輝かせながらそれを見た。
耳を済ませ、何回もハンドルを回した。
いい雰囲気だったが針は毎秒すすんでいき、チャイムが鳴れば授業の始まりだった。
「授業だ。号令。」
「・・・あ・・・トイレ行ってきます。」
都宮がお腹をかかえトイレに駆け込んだ。
バタッ・・・
教室のドアが閉まる
ガチャ・・・
トイレの入り口が開く
コンコン・・・ガチャ・・・
トイレの個室のドアが開く
ガチャ・・・シャッ・・・
鍵がかかる
・・・カチッ
都宮はポケットから何かを取り出した。
ピピピピ・・・・ピピピ・・・・・・
小さい画面に文字が書かれていく。
そっと都宮は笑った。
『送信』
都宮の親指が真ん中のボタンに触れた。
・・・
「はい、授業だ。これは微分積分といいましたね。今日はそこから・・・」
クラス中がノートを取り始める。
みんな集中している。
僕も、ノートをとりはじめた。
僕は黒板しか見なかった。
鈴科の机の中がかるく光った。
一番後ろの席で、鈴科は画面を覗く。
鈴科の口元がゆがむ。
鈴科は画面を閉じ、ノートをとり始めた。
『伊藤の宝物のオルゴール、壊せば?次体育だし(`∀´)ケラケラ』
都宮と鈴科に関係があった・・・!?