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呪い天使 17 『離間』

上前の突然の告知・・・


呪い天使 17 『離間』



「俺さ、実は明日転向することになったんだよね・・・・ははは・・・」



上前が作り笑いをしながらそういった。

全員、何の反応もすることができなかった。

これから鈴科の悪行から闘おうというときだったのに・・・。


「・・・・・・まじで・・・・・・?」


僕は口を開く。

そして開きっぱなしになった。

上前は床を見ながらうなづいていた。


「ごめんな;ははっ・・・」

「でも・・・高校生なのになんで転校なの・・・・?」

「理由は転勤ってやつだよ・・・親の仕事とかでね。」

「そぅなんだ・・・・。」

「あぁ、まぁ、もう会えないわけでもないしさっ!気楽にさっ!」

「じゃぁさっ、じゃぁさっ!パーティーでもしないっ!?」


都宮が手を広げて言った。

みんな相槌をうつ。

僕はただただうなづいただけだった。

パーティーはすぐに決まった。


僕はこの会話の返答に答えを出せずにいた。

何と言っても生徒会長のことがある。

・・・父さんと会う可能性が今ここで消えた。

副会長になれば一応は県に登録されるだろう。

だが・・・約束は守れなかった。

経験を得ることもできなくなった。

もしかしたら父さんは会長の項目しか調べないかもしれない。

どん底である。

人員不足のために、おそらく僕は副会長にはなれるだろう。

県登録でもされておくか・・・。

もう、何年も経った今だ。

父さんは忘れているかもしれない。

僕は生徒会のことは強引に割り切らせた。

・・・副会長でいいだろう。


「任せておいて!全部私が組むからっ!伊藤は行くよね?」

「あ・・・うん・・・。」


そう言って都宮は走りながら去っていった。


ここから先は僕はまだそのとき知らないことだ。

僕たちの前からいなくなった都宮は水沢の方へよってきた。


「・・・やっぱり伊藤、水沢のこと嫌ってるよ・・・・・・・・・・」


水沢は、何も驚いていない自分に気付いていた。

知っていたかのようにそのことを落ち着いて聞いていた。

やはり、伊藤は嫌っていたんだ。・・・やはり。


「伊藤、『水沢は誘わないでくれ』っていってたんだよ・・・」


水沢は適当な相槌を打った。

そして他人事のように席を立って廊下に出て行った。

都宮はそのとき気味悪く笑っていたという。


その放課後、都宮は先生に呼ばれる。

きっとあの写真のことだろう。

都宮は覚悟を決め、会議室のドアをあける。

雰囲気はまるで面接会場だった。

担任と教頭が席で腕を組みながら待っている。

机の上には書類とペン。

都宮は言われるがままに椅子に座った。


「話すことはまぁ言わなくても分かるだろう。」

「ぁ・・・はぃ・・・・・。」

「退学の話だが、取消しとなった。ありがたく思え。」


都宮は少し顔をあげる。


「退学処分ではないのですか!?」

「そういうことになる。高校のイメージもあるしな。

 だからそこのことについていくつか質問がある。」

「はい・・・。」

「あのような場所に行くのは初めてかい?」


都宮はうなづく。


もちろん心の中では舌を出して小馬鹿にしている。

別に自分のことなのだから何故そんな堅苦しい掟にしばられなくてはいけないのだろうか?

たくさん化粧すれば高校生には見えないほどにまで大人になったのに。

法律を全て守り生き抜く人なんてなかなかいないんだから。


都宮はあらゆる嘘を使った。

都宮の演技は、あたかも相談にのる可哀想な被害者のようだった。

先生達は、すっかり都宮の言うことに耳を貸してしまった。


「脅されたとはいえ、そういったことはこれから止めてくださいね。

 そしてこれからはちゃんと先生に相談して下さいね。」


「はいっ!」



会議室を出た後、都宮はメールを送ろうとしていた。


『退学にならずにすんだよ。これであの通りにすればいいね。』


送信ボタンを押し終わった後、また口元がつりあがっていた。

もちろん、普段の都宮からかけ離れているその形相を見た人は誰ひとりいない。


その日の放課後、都宮の家でパーティーは行なわれた。

僕は少し遅れてマフラーをつけて都宮の家に入った。


「あれ?水沢は?」


いつも一緒にいた友達がそこにはいない。

当然いると思っていた僕は首をかしげた。


「なんか水沢、行かないって・・・・。」


都宮の重い一言にみんなは軽く驚いていた。

そして三日月がとうとう口を滑らせた。

僕は相槌を打つことに戸惑った。


「ここ最近、そういえば水沢・・・見ないよね・・・。」


それに相槌をうつかのように上前がさらに口を滑らせた。

もちろん僕は相槌を必死に試行錯誤していた。


「ひどいな・・・もう会えないかもしれないって言うのによ・・・」


そして次々と、ここ最近の水沢への不満がこぼれる。

ここ最近話さないだとか、寄ってこないだとか、暗いとか。

僕は何も言わないでいた。

その理由は友達を侮辱したくないからという正義を貫く意思があったからではない。

ただひたすらに相槌を探し続けていたのだ。

だが何かおかしい。

唯一の男子の親友が仲間から不満の声をあげられているのにも関わらず、

僕の心は苦しもうとはしてくれなかったのだ。

それはまるで彼への愛想が尽きてしまったかのように。

ふと考えて分かることがある。

上前がいなくなるのはこの上ない辛さであることだ。

自分の中で一番消えてはいけない親友が今消えようとしていることに、心が耐えかねているような気持さえした。

今の自分の本当の親友は実は・・・

自分でも気づかぬ間に、この3人に限定されていたのかもしれない。

そして一番の親友は・・・


「まぁさ、今日は楽しみましょうよ!」


三日月が明るく振舞ってクラッカーをひいた。



パンッ



この夜、僕たち4人は何もかも忘れ、騒いだ。

食べて、飲んで、遊んで・・・・・。




・・・・明日上前は転校する。



僕に非は全くないのに、




三日月以外の水沢、都宮、上前は全員僕の前から離れてしまった。




僕はそのことにまだ気付いていなかったんだ・・・・。




『次話から波乱の展開にっ!』

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