呪い天使 14 『暴風』
写真に隠されたもの・・・
呪い天使 14 『暴風』
制服姿の僕と不良が街を歩く写真。
鈴科が僕の信頼をなくすためこんな写真を撮ったに違いない。
その写真は先生に渡され、僕の信頼は一瞬にして崩れた。
もちろん、鈴科との件には関係無いというが、最も重要な事に被害が襲う。
生徒会長の問題だ。
僕は生徒会長にならなくてはいけない。
・・・・もう、終わったのだ。
職員室では僕がいなくなった瞬間、もう一つの話題でざわついた。
もちろん僕はざわついたのを耳にしただけで、内容は何も聞いてはいない。
「・・・大変だ・・・この写真・・・・まさか・・・・・・・・・・・・」
僕が落胆の表情を浮かべながらドアを閉めたとき、都宮とばったりと会った。
今、あまり人と会いたくなかった。
「あっ、都宮じゃん・・・」
「あぁうん。伊藤、先生からなんか言われた?」
「・・・もうダメみたい・・・・・・。」
「えっ!?なんで!?」
「あとで話すね・・・・・」
「あ・・・そうか・・・。どんまいっ・・・・。」
そこで会話が詰まる。
間も長すぎると悪いので僕は適当に話題を振る。
「で、都宮はどうしたの?」
「あぁ・・・コレ。勉強よ。分からないとこあってさ」
「そうか。ん、じゃぁねー。」
「ばいばーぃ」
すぐに都宮は先生の方に向かった。
「先生ー。この問題教えてもらえませんかぁー?」
「あぁ・・・都宮か。丁度いいとこに来た。」
都宮が首をかしげながら待っていると、先生は机にある一枚の写真をつきつけた。
「なぁ、都宮。・・・この写真で何かわかることあるか?」
「あ・・・伊藤君じゃん・・・。でもこれは不良の嫌がらせだと・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
都宮は言葉を失っていた。
そして目線も体も動くことなく、震えていた。
それでも開き続けているその瞳に映し出される景色。
総勢100人と言える教師軍が自分の姿に集中している。
「・・・何かわかることあるか?」
「・・・・・は・・・・・はい・・・・・・」
時計の針は都宮が入ってから一周し終えていた。
都宮は薄汚れた廊下のタイルばかり見ながら職員室のドアに手をかけた。
ドアを開く。
いつものように『失礼しました』の一言がその口から出てくる気配はない。
そして部屋を退室する。
ドアを開けると自分の前に影ができているのに気づいた。
そしてその影で人の存在を知り、初めてその顔を上にあげた。
目の前には鈴科が立っていた。
無気味に笑いながら都宮に話しかけた。
「・・・都宮か・・・・・・。はははっ!!!!」
「・・・・・あなたね・・・・・・あの写真を撮ったのは・・・・・・・・」
鈴科は滑稽な物を見るような間抜けな顔をし、一方都宮は鬼の形相だった。
そしてその形相は鈴科を今にも殴りかかろうとしていた。
そうしてさらに鈴科の表情は笑みが強くなっていったのだ。
「それが違うんだな。教えてやろう。あの写真はな・・・・伊藤が俺に撮ってくれと頼んだんだよ。」
「・・・伊藤が・・・・?・・・意味わからない嘘はやめて。」
都宮は表情を少し変えていた。
ただ、いつもの元気はすっかりなかった。
そして・・・誰かを恨み憎む、そんな顔・・・。
「あぁ、そうだ。前から俺と伊藤は組んでたんだよ。まんまと騙されたな。」
「・・・・嘘はやめてね・・・・・・」
「嘘じゃない。それが真実だ。」
「やめてっっっ!ふざけないでよ!」
それでも鈴科は口を止めようとしない。
「そして―――――――――――――――」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
鈴科は長々と都宮に話していった。
結局鈴科との会話で都宮が職員室に入ってから二時間が過ぎてしまった。
話し終えると都宮は何も言わずに女子トイレの方に走っていき、便座のあるトイレのカギを閉めた。
その日都宮は授業にひとつも参加しなかったという。
「伊藤・・・・伊藤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
誰もいないところで鈴科は外を見つめていた。
風が鳴り響き、雲は覆い被さり、雨が今にも降りそうだった。
風になびく髪を戻しながら鈴科は一向に動こうとしない。
「・・・都宮もバカだな・・・。あんな嘘にひっかかるなんて・・・。」
鈴科は口を少し開き、笑ってみせた。
ひとつだけ空いた窓によって風は職員室に吹き荒れた。
あわてて一人の教師がそれに気づき閉めたが、一枚の写真が風で机から落ちた。
誰にも拾われることなく、それはそっと先生の机の真下に落ちていく。
その写真の奥にはホストクラブから出て、頬を赤くした都宮がいた。
都宮が鈴科を信じることになったその言葉は一体・・・