呪い天使 12 『都会』
上前の今後を考えた僕は・・・
呪い天使 12 『都会』
僕と上前は仲直りをし、上前も僕の見方についてくれた。
早く鈴科の悪行を言いたかったが暴力団を後ろに控えている鈴科に手を出せるはずもなく、先生に真実を言うなんて不可能だった。
三日月が目撃した情報は、上前の犯行だけだった。
どうにか上前の犯行を無罪にしてやりたかった。
下手すれば退学の可能性もある。
「どうすればいいかなぁ・・・?」
「たしかに考えどころよね・・・。」
試行錯誤の結果、ひとつの結論を導き出すことに成功した。
偽りの情報を先生に提供すればいいのだ。
「これで完璧かな?」
「そうじゃない!?」
「今から先生にこれを出しに行くぞっ!」
「うん!そうだね!あっ・・・私、今日用事あるから帰るね!ごめんっ!」
「・・・あ・・・僕も・・・今日、塾あるから帰るね・・・!ごめん・・・・」
「わかった!じゃぁねぇー都宮、水沢ー!」
僕と上前は担任の茂木先生を呼び、一枚の紙切れを渡して離した。
「先生、上前君の机にこんなものがあったそうなんです。」
『上前、伊藤の私物を切らなければお前も伊藤を同じ羽目にあうからな』
「そうか・・それは辛かったな」
「先生!僕と上前くんはもう仲直りしてるんです。どうか・・・」
「伊藤君本人がそういうのなら・・・まぁいいでしょう」
「ありがとうございますっ」
「ではすぐに、この紙を書いた人を探すとしよう。・・・やはり鈴科君なのかね?」
「それは・・・鈴科君と決め付けるのは早いと思います・・・」
「どうしてだ?」
「やっぱり証拠なしに疑うのはだめですよね」
「・・・そうか。じゃぁ一から調べなおそうかな」
これは信じてもらえるかどうか不安だったがすぐに信用してくれた。
やはり先生は僕たちが何も言わずとも、鈴科を疑っている様子だった。
これで鈴科が疑われなくて済むし、上前は無罪なんだ。
僕と上前と三日月は、放課後笑いながら帰ることができた。
今日の出来事をたくさん語った。
何人もの人に質問されたり言いがかりをつけられたりしたこと。
先生から信用されていたと改めて知ったこと。
そしてこれからの、鈴科への対策も考えていった。
もちろん、鈴科が何もしなくなるような、平和主義の考えだ。
「僕たちが先生に告げるというのは厳禁だ。あくまでも鈴科が自ら墓穴を掘り、先生にばれる。これが最高の形だ。」
「そうだね・・・。でも、何もしなくてこれで終わりってのが一番かも。」
「・・・だといいよねぇー・・・・・無理っぽいけど・・・」
その後、下らない話から噂話までして僕たちは笑いながら帰り道を歩く。
いつもと同じ帰り道も長く感じる。
そんなひとときもある一瞬の出来事で崩れ去る。
目の前に現れるある集団。
あれは、どう見ても暴力団だろう。
見た目ですぐ分かる。
金属バットやらギラギラした服。
スキンヘッドやらリーゼントなんかもいる。
タバコを透かしたパンチパーマの奴もいる。
小指を切っていてもおかしくないようなその姿は誰も寄せつけようとしない。
どおりでここらの道で人が少なかったわけだ。
僕たちはすぐに道を変更しようとした彼らが僕の方へと寄っていくに気付き、僕らの足は知らず知らずに止まっていた。
「伊藤ってお前?」
「・・・あ・・・・はい・・・」
「鈴科の話でよ。まぁ、とりあえず俺たちについてこい。」
「ぇ・・・は・・・?・・・は・・・はい・・・」
「気にするな、金は払ってやっからよ。」
「・・・・はい・・・」
見た目によらず彼らは落ち着いている様子だった。
もちろん彼らの様子などはこの時には気づいていない。
今は動かない足をなんとか動かそうと努力するだけ。
こんな格好をした人間を見るのは初めてだった。
それだけで動揺が隠せない。
早く、早く逃げたかった。
「あの・・・僕だけでよろしいでしょうか・・・?」
とっさに出た言葉がこれだった。
この二人だけは暴力団と一緒にいさせたくなかった。
被害は自分だけでいいというとっさの判断だった。
「・・・この女はいらねぇが、上前。お前はついてこい。」
意外な答えに僕は内心ホっとした。
でも彼らの狙いが何なのか見当がつかなかった。
それでも三日月が助かるのならばと彼らとの同行を決意した。
「伊藤・・・私・・・私・・・」
「うん・・・大丈夫。何も心配ないって。」
「ごめん・・・ごめん・・・ごめん・・・ね・・・」
三日月も同じく動揺していた。
足が震えているのも分かった。
じゃぁね、と一言言ったあと三日月はためらいながら走って帰ってくれた。
「じゃぁ、こい。でも安心しろ。何もしない。」
「・・・え・・・・?あ・・・・はい・・・・」
僕たちは言われるままに電車に乗り、街に出た。
そして僕たちは、ウラの世界を適当に歩かされた。
いかにも、危ない都会、という感じだった。
ギラギラ光ってて、喧嘩がいつどう起こっていてもおかしくない状況だ。
そんな街の中を、ずっとずっと歩かされて、僕たちは帰らされた。
何だったんだ、と不思議に思いながら、少し安心していたんだ。
すぐに駅を下りて・・・また上前と笑いながら一緒に帰った。
・・・街のどこかで、シャッター音が鳴ったことに気付かずに・・・・・。
このシャッター音とは・・・