呪い天使 10 『挨拶』
もう、終わりが見えてくるはずだ・・・
呪い天使 10 『挨拶』
忘れもしない夜となった。
やっと僕の無罪が確定された。
あの三日月っていう人のおかげで、僕は助かったんだ。
三日月が目撃したのは鈴科の友人の上前戒。
先生はまずは上前に目を付けて色々と調べられ、上前はすぐにでも先生に呼ばれるだろう。
そうすれば鈴科がこの件に関する真の計画者だということが出てくるはずだ。
鈴科も、これにこりてイジメをしなくなればいいなぁ・・・。
すぐに眠りについたあと、すぐに朝はやってきて、久し振りに水沢と登校することが出来た。
僕は水沢に全て語った。
両手を使って、分かりやすく、大きく語った。
そんな僕を水沢は笑ってくれた。
途中で都宮とも合流し、いつも通りの仲良い3人組になった。
朝、ほぼ一番のりで学校に来た僕たち3人は同時にドアを開け、誰もいないだろう教室に向かって大声で
挨拶をした。
ドアを開けると何も変わらぬ教室が目に入りカーテンが開かれたまま日差しが教室を照らしている。
都宮と水沢は
「朝早くに学校来るっていいねー」など話している。
だが・・・僕だけは会話に声が出なかった。
二人とも互いに話していて目線がずれ、そこを見てなかったらしい。
しかし僕の目には教室に入った瞬間映し出された。
水沢も都宮も、途中で気付いて、大きな挨拶をしたことを悔やんだ。
同時に朝早くから学校に来なければよかったとも後悔した。
そこには、上前の胸倉をつかむ鈴科がいた。
鈴科は僕たちにこの現場を見られたことに動じず、冷静な表情のまま僕たちの方に寄ってきた。
そしてたった一言、こういう。
チクったら殺すからな・・・
動じたのは僕たちだった。
鈴科の変わり果てた形相に体が固まってしまった。
教室から鈴科が出て行った後、僕たちは上前の方へ歩き寄り添った。
今ではこの教室のすがすがしさが感じられない。
上前との距離が長く感じる。
ようやく上前に話しかけられる程度に近づいた僕らは上前に声をかけてみた。
上前の体に異常はなかった。
何故鈴科に脅されていたかを訪ねると、上前は何度も躊躇ったあと体を震わしながら答えた。
単純に三日月に目撃された失態が原因だった。
この失敗により、鈴科が先生に疑われる羽目になるのだ。
しかし実行したのは上前戒だ。
鈴科は口封じのため、上前を脅したのだった。
「伊藤・・・・・・・・ごめんな・・・・・・・・」
上前はそう言ったまま顔をあげることはなかった。
僕は気にするなよ、と言ってあげた。
更に話を聞けば上前は最初から鈴科に脅されていたらしい。
結局、上前も被害者だった。
「上前・・・。あのさ・・・先生に言おうよっ!ねっ!?」
「えっ・・・でも・・・・」
「なんで・・・。全員で先生に言えば怖くないよ・・・!」
「伊藤・・・お前・・・・あいつの恐ろしさ知らないだろ?」
「え・・・・?」
「あいつ、生徒会の一次審査で落ちたとき、刃物持ってたよな。
・・・あんなのすぐに用意できるもんじゃないよ・・・。
つまりだな・・・鈴科は、もともとそういうやつなんだ・・・。
あいつの後ろには・・・暴力団がついているんだ・・・。」
僕は言葉を失った。
鈴科は口先だけで先生、生徒からの信頼を得ていたのだ。
人はこんなにも簡単に仮面をかぶることができるのだろうか?
しかし鈴科は仮面を被り。仮面の中では僕たちを見下していたのだ。
鈴科の、存在が・・・恐ろしくなっていった。
ふとあることを思い出した。
≪「・・・別に思い当たる節はないんですけどね・・・・・・うーん・・・
あ・・・えぇ・・・と・・・人を疑うのは好きじゃないのですが・・・ ・
鈴科君が僕を恨んでも仕方無いですよね・・・生徒会のことで・・・・・
あっ・・・も・・・もちろん証拠なんてないですけど・・・」≫
僕は少なくとも先生に鈴科が怪しいと言っていた。
そして校長室のドアの前でいた人の気配・・・。
あれは絶対・・・鈴科だ・・・・・。
鈴科は全て聞いていたんだ・・・。
大変な奴を・・・・敵にしてしまった・・・・・。
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