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防人  作者: TOUARENMEI
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招かれざる者

 海上保安庁の巡視船が襲われてから数時間後の翌日、朝5時、巡視船襲撃の報を受け、首相官邸では緊急会議が開かれていた。

 そんな中、第三国を通じて大東亜帝国と名乗る国が宣戦布告を申し出てきたと連絡が入った。

 首相である福留総理は、厳しい顔をしながらボソッと「なぜ、私の内閣でなんだ。めんどくさいことをしやがって」と言い、それを聞いていた防衛大臣の中村は声を荒げて「総理、防衛出動をお願いします。」と言ったが依然として総理は厳しい顔つきのまま黙ったままであった。

 そして、次に声を上げたのが、外務大臣である黒田であった。「総理、大東亜帝国とは日本は正式な外交ルートがありません、どのような国かもわかりません。ここで動かなければ、手遅れになります。国民を守るために、防衛出動の決断を私からもお願いします。」その声を筆頭にその場にいた各省の大臣が一斉に頭を下げ、総理は深いため息をつき、渋々防衛出動を命令した。

 これを聞いた中村はすぐさま海上自衛隊に出動命令を下令、巡視船が襲撃された地点に一番近い鹿児島県沖を航行中であった”やまと”を主力とする第7護衛艦隊を付近海域まで接近させた。第七護衛艦隊司令長官の東雲は震える声で「全艦に告ぐ防衛出動発令、我々はこれより戦闘海域に移動する。」その放送がかかった瞬間艦内は一気に凍り付いた。若い自衛官は今にも泣きそうな顔で座り込んでいる。しかし、年配の自衛官は遂に来たかと言わんばかりの鋭い顔つきで歯を食いしばっていた。

 続いてやまとの岩井艦長が放送で「やまと総員に告ぐ我々は、日本国海上自衛隊である。日本の国家、国民の生命が脅かされつつある今、我々はこの脅威を撃滅し世界に!、敵国に!、我々はお飾りの部隊ではなく、列記とした国防を担う部隊であることを知らしめよ。各員一層奮闘努力せよ!」

 第七護衛艦隊は、近年高まりつつある隣国との緊張状態において防衛のために新しい護衛艦を新設するという、その名も大和計画によって作られた新しい艦隊で、戦艦やまとを旗艦とし、むさし、こんごう、あまぎ、そして空母あかぎ、イージス艦あたご、あしがら、潜水艦くろしお、の合計8隻からなる。どれも最新鋭の艦艇である。

 この第七護衛艦隊が目標海域に接近するまで約2時間、依然として艦内の空気は凍り付いていたが、年配の自衛官から少しずつ受け入れはじめ若い自衛官を励ます風景が目立った来た。そんな中、目標海域上空を飛行中であったP-1哨戒機から敵編隊の詳細情報が伝えられた。敵は空母を含む20隻であることが判明、どれも旧ソ連製の古い型式のものであった。

 それから2時間後第七艦隊は目標海域に到達したが敵編隊は発見できず、レーダーで探りながらもう二時間、航行を続けた。その時、航海長が叫んだ「敵編隊発見! 左舷25マイル先」それと同時に敵編隊からは戦闘機10機が飛び立ちそれぞれ2発ミサイルを発射した。司令長官の東雲は「対空戦闘、艦対空ミサイル発艦」と指示を出した。艦対空ミサイルはすべて命中したのもつかの間敵戦艦から猛烈な艦砲射撃を受けた。艦内にはけたたましいブザーの音が鳴り響き航海長が叫ぶ「敵弾、右舷前方、左舷後方に二発ずつ被弾!」それを受けた岩井は、砲雷長の鷺沼に目標、敵甲板と指示した。鷺沼は震える声で「艦長本当によろしいのですか?」、岩井は一息ついて、はっきりと「かまわない」といった。それを受け鷺沼は凛とした声で「どうなっても知りませんからね。」と言い座標を打ち込んだ。そして主砲がゆっくりと敵艦の方へ回りだし準備完了のベルがけたたましく鳴った。東雲は大きな声で叫んだ「砲雷長、撃て」

 やまとのそれぞれの主砲から9発の弾が空を貫き真っすぐ敵戦艦の甲板に向かっていった。その間も敵からの砲撃は止まず。各艦はそれぞれ回避行動を行っていた。

 そして、見張りをしていた立花が叫んだ「着だーんいま!」その声と同時に敵艦が大爆発を起こし、少しずつ傾いていった。

 これを見ていたやまとのCICは沈黙に包まれていた。ー戦後80年戦争を一度もしなかった国が他国と戦闘を行い軍艦 (ふね)を沈めたーその沈黙を破ったのが砲雷長の鷺沼であった。「いっ一隻無力化!」

 今回の自衛隊の行動を見てただの脅しではなく本気であると敵が思ったのか敵艦隊は進路を南へとり第七護衛艦隊から逃げる形を取った。

 第七護衛艦隊はこれを見て一定の距離を保ちながら領海線まで監視した。

 やまとの艦内では空気が和らいでいた。若い自衛官はもう終わったのかとほっとした顔をしながら家族の写真を眺めていた。

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