リモート
その日は雨だった。それも視界が霞むほどの大雨だ。俺は部屋のベッドに転がって未来とメールのやり取りをしていた。
ー雨が酷くてカードショップ行けねぇー
ー行っても誰もいなさそうだしねー
ーバトル出来ねぇと暇だなー
未来は動画を見るのも勉強になると言っていた。けど、動画を見てるとバトルしたくなるから見るのを止めた。
ー未来は何してんだ?ー
ー今はデッキの調整してるよ。ちょっと前までリモートでバトルしてたんだけど改善点が見つかってねー
ーリモートって何だ?ー
俺がリモートについて聞くと、未来から電話が掛かってきた。しかもビデオ通話だ。通話に出ると、画面にはカードが映っていた。
「リモートっていうのは、こうやってビデオ通話でカードを映してバトルする方法だよ」
「スゲェ! こんなやり方があったのか?!」
このやり方は数年前に感染症が流行った時に開発されたやり方だと教えてくれた。考えてみれば、構築済みデッキを買った時に未来とやったのと同じだ。
「これなら離れてる人ともバトル出来るし、天気も関係無いからね」
「確かに! 未来、さっそくバトルしようぜ!」
「ごめん、デッキ広げてるからバトルは出来ないや。代わりにサーバーに招待するよ」
サーバーってのはリモートしてる人達が集まる場所で、バトルだけでなく雑談やデッキの相談とかもやってるらしい。
未来から送られてきたアドレスにアクセスしてサーバーに入った。初めは”自己紹介”という所で自己紹介をした。
ー初めまして。未来から招待されました。よろしくお願いしますー
ーよろしくー
ーよろしくねー
すぐに返事が返ってきた。その後は”対戦募集”という所でバトルの相手を募集した。こっちもすぐに返事が来たのでバトルすることになった。
「こんなに早く相手が見つかるのか?」
「今日は日曜日だからね。他の日よりは集まりやすいよ」
未来に教わりながらリモートの設定を整えると対戦部屋に入った。俺はスマホとパソコンで2つのアカウントを使うので両方とも対戦部屋に入れると、お互いに画面と音声の確認を済ませた。問題無かったのでバトルの準備を始める。
「初めまして、よろしくお願いします」
「お願いします。見にくい所があれば言ってくださいね。不明なテキストも読み上げますので」
「ありがとうございます」
準備が出来たので、俺の先行でバトルが始まった。
◇
「「ありがとうございました」」
結果は惨敗だったけど、すごい丁寧にプレイしてくれた。こっちが考えている間も、何も言わずに待っててくれて、却って申し訳ないと感じた。対戦が終わって部屋から出ると、未来が電話を掛けてきた。
「始めてのリモート、どうだった?」
「負けた。けど楽しかったよ」
「ルールの質問とかも出来るから、分からない事があったら聞いてみると良いよ。ジャッジ資格を持ってる人が応えてくれるよ」
「そうなのか?!」
サーバーには公式大会でジャッジをしてる人も参加してるそうだ。それに社会人が多いからマナーの良い人が多いらしい。
「聞きたい事ってある?」
「ルールは今の所無いけど、どうやったら強くなれるのか知りたい」
「なら、雑談の所に投稿してみようか」
未来の言う通り、雑談部屋で強くなる方法を質問してみた。1人が返事を返してくれた。
ーどのレベルで勝ちたいか教えてくれますか?ー
ーどのレベル?ー
ー友達に勝ちたいのか、店舗の大会で勝ちたいのか、みたいな感じですー
ー店舗の大会で勝ちたいですー
ーそれなら強いデッキを使う方が速いですねー