大会リベンジ1
「おっしゃ! 目的のカード買ったぜ!」
「大地!」
「おっと、すまん」
未来に手伝ってもらって、プロキシでデッキを回してみて感触の良かったカードを買った。さっそくデッキのプロキシと入れ替える。
「大地、今日の大会も出るの?」
「ああ、前回のリベンジだ」
「頑張ってね」
レジで未来と一緒に大会の受付をしていると、未来に話しかける人が来た。
「未来殿、ご無沙汰でござる」
「あれ? 現さん。お久しぶりです」
見た目はイケオジなのに話し方がキモい。ギャップが酷すぎて人間性を疑いたくなるレベルだ。俺は未来に尋ねる。
「この人、誰?」
「この人は現実さん、このお店の常連だった人だよ」
「失礼でござるな、未来殿。拙者は今でも常連のつもりでござる」
「すいません。けど、仕事は大丈夫なんですか?」
「寝る間も無いほど忙しいでござる。しかし、気分転換は必要ゆえ本日は楽しませて貰うでござる」
そう言って現さんって人は大会の受付を済ませると店を出ていった。
「大丈夫なのか?! あの人」
「良い人だよ。それに、全国大会の優勝経験もあるんだ」
「マジか?!」
「それにカード関係のグッズメーカーを立ち上げた凄い人だよ」
「あの喋り方でか?!」
「このショップの外だと普通だよ」
全国大会で優勝するには変人になるしか無いのか、と思ってしまった。その後は、未来と話していると大会が始まる時間になった。店員が店内に貼ったQRコードを読み取って、指定された席に座る。
「貴殿は先程の青年ではござらんか」
「えっと、確か現さん……でしたっけ?」
「そうでござる。覚えてくれて光栄でござる」
「……」
「私の話し方が気になりますか?」
「え?! あっ、いや」
「大丈夫ですよ。この話し方でお相手させて頂きますね」
俺が固まっていると、急に普通に話し始めた。しかも、超丁寧だ。さっきも思ったけどギャップが酷すぎる。現さんに言われて、ゲームの準備をしていない事に気づく。
「すいません、すぐ準備します」
「ゆっくりで構いませんよ」
参加者全員の準備が完了したことを店員が確認すると、開始が宣言された。
「「よろしくお願いします」」
現さんの先行でゲームが始まった。相変わらず知らないカードばかりだ。けど、俺は俺に出来ることをするだけだ。
◇
「……10体目の《警邏隊トークン》で攻撃。成功したので《森林開発》の効果で追加でトラッシュします。ターン終了です」
「俺のターン、ドロー出来ないので負けです。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「〈系統:古代〉で纏めたビートデッキなんですね」
ビートとはビートダウンの事で、攻撃して勝ち切る戦略を意味する言葉だそうだ。現さんは俺のデッキを「シンプルに纏まっている」と褒めてくれた。
「でも、まだ勝てないんですよね」
「始めたてなら皆そうですよ。知らないカードも多いでしょうし」
「そうですね。今も始めて見るカードばっかりでした」
「知らないカードが分かる様になれば、少しずつ勝てるようになりますよ」
現さんと雑談していると、次の組み合わせが発表された。現さんにお礼を言って席を移動した。
今回は手早くゲームの準備をした。店員が開始を宣言するとゲームが始まった。
「「よろしくお願いします」」