構築済みデッキ
「えーっと、これとこれが繋がって……、そうしたらこれが出せて……」
未来の勧めてくれた構築済みデッキ【古代の軌跡】を買った俺は、家でカードを広げていた。ティーチング用のデッキは、手札にあるカードを使うだけで良かった。でも構築済みデッキに入っているカードは違った。
相手の動きを妨害するカード、カードを持ってくるカード、トラッシュを利用するカードなど様々なカードが入っている。説明書を見ながらカードの役割を確認していく。
「でも、分かんねぇな。そうだ!」
俺は手元にあるスマホで未来にメールを送った。
ー使い方がよく分かんぇから教えてくれー
ー良いよ。ビデオ通話しようかー
ー今つなげるから、ちょっと待ってー
「おーい、見えてるか?」
「大丈夫、見えてるよ」
俺は未来からカードの使い方を習った。手札を公開して、どのカードをどの場面で使うのか教えてくれた。妨害のカードも、相手の行動全部妨害してたら足りなくなる。だから、ポイントを抑えて妨害しにいくそうだ。
「そのポイントって、どうすりゃ分かるんだ?」
「経験かな? あとは使うデッキによって”されると嫌なこと”が違うから知識も大事だよ」
「知識かー。どうせなら早く勝てるようになりたいよな」
「それなら”やりたいこと”を絞ったほうが良い」
未来が言うには”やりたいこと”が出来るデッキが強いらしい。そのために”やりたいこと”を決めて、そこに向かっていくようにデッキを組むそうだ。
「大地は初心者だから”やりたいこと”を1つ決めてデッキを組むと良いよ」
「なら、俺は攻撃したい。沢山のキャラで攻撃するのは気持ちよかったからな」
「それなら……」
未来はデッキの作り方や必要なカードを教えてくれた。予定を合わせて、カードショップで待ち合わせることにもなった。
◇
「えーっと、いたいた未来ー!」
「大地、ショップでは静かに」
「すまん、言われたカード買っといたぜ」
「早いね」
「早く試したいからな」
早速、未来とバトルした。カードを使うのは”ゲームをしてる”や”遊んでる”って感覚になるから楽しいんだって思った。そして、前よりスムーズに勝てるようになった。
「勝った!」
「いい感じだね」
「でも、ティーチング用デッキに勝ってもなー」
「じゃあ、大会用のデッキとやってみる?」
未来がこの前の大会で使ってたデッキとバトルしたけど、いつの間にか負けていた。最初は有利だと思ったんだけど、段々とキツくなって気づいたら何も出来なくなっていた。
「負けたー」
「そうだね。……バトルしてて何が辛かった?」
「途中で手札が無くなってカードが使えないのが辛かった。手札が無いと何も出来ないし」
「他には?」
「相手に強いキャラを出されると何も出来ない」
「じゃ、そこの対策をしようか」
未来に対策の仕方を教わった。対策カードはショップで売っているそうなので見に行った。
「高い……。カードってこんな高いのか?!」
「強いカードだからね」
「これ4枚だと結構な出費だぞ?」
「プロキシを使う方法もあるよ」
プロキシってのは要は偽物のカードを使うって事らしい。カードのコピーや付箋を使って代わりのカードを用意して試すそうだ。
「大会では使えないけど、遊ぶだけなら問題ないしね。で、感触が良ければ本物のカードを買って入れ替えるんだ」
未来が付箋を取り出したので、使ってみたいカードを片っ端から書いて試すことにした。
◇
「君たち、そろそろ閉店だよ」
「え?! もうそんな時間か?!」
「今日は長引いちゃったね。解散しようか」
「また、メールするな」
思ったより長時間遊べた事に久しぶりの満足感を覚えた。未来が手伝ってくれたお陰で、4枚必要だと思っていたカードも2枚あれば足りる事が分かった。
「もうすぐバイト代入るし、思い切って買うか!」