負けて始まる物語
「では、私のターン。ドロー」
俺のフィールドには5体のキャラクターが並んでいる。攻撃されても耐えられる自信があった。しかし、相手が使ったカードは俺の知らないカードだった。
「手札から《疫病感染》を使用。コスト3以下のキャラクターを全てトラッシュ、コスト4以上のキャラクターを全てレストします」
「え?!」
俺のフィールドから3体のキャラクターがトラッシュされ、2体がレストされた。これでは防御できない。手札のカードを見るが、現状を打開できるカードは無かった。
「続けてフィールドカード《森林開発》を配置します、対応はありますか?」
「いえ……」
「では、《強欲な権力者》で攻撃します。アタックは「2」ですが通りますか?」
この攻撃は通すしか無い。俺の山札から2枚がトラッシュされた。さらに《森林開発》の効果で2枚がトラッシュされた。この攻撃で俺の山札は無くなった。
山札が無くなって、自分のターンの初めにカードを引けないと負けになる。
「ありがとうございました」
「ありがとう……ございました」
何も出来ずに負けた。未来とのバトルではもっと色んな事が出来たのに、この人とのバトルでは何もさせてもらえなかった。
その後も俺は負け続けた。攻撃が通らない、カードを出しても妨害される。初めたばかりだから知らないカードがあるのは仕方ないとしても、ちょっと悲しかった。
俺のバトルが早く終わったから未来のバトルを見に行った。そこで未来が使っていたカードは、俺とのバトルでは使ってなかったカードだ。今は未来のターンみたいだ。
「手札から《ニュー・ワールド》をプレイ、山札から〈系統:未来〉を持つキャラクターをコストを払ったものとして登場させます」
「……どうぞ」
対戦相手は手札のカードを確認したが何もしなかった。
「《リアリセリング・ヴィジョンドラゴン》を登場させます。登場時効果により、リユースカードをリサイクルします。バトルフェイズ、攻撃を宣言」
「カットイン、《誇大妄想》を宣言。〈系統:未来〉を持つキャラクターのアタックを「0」にします」
「受けます。トラッシュは無しですね、ではエンドフェイズまで飛んでカットインを宣言」
(カットインは確か、相手の行動に対して使えるカードだよな? エンド時に使えるカードなんてあるのか?)
「《文明崩壊》を宣言します。対応は?」
「ありません。投了します」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
未来が勝った。相手は投了って言ってたけど、そんなに強いカードなのか気になった。
「全勝者が決まりました。今日の優勝者は『暁未来』さんです! おめでとうございます!」
他の人達も拍手していたので、俺も拍手した。大会が終わった後に未来に使ってるカードの事を聞いた。
「大地とのバトルで使ったのはティーチング用だからね。難しいカードは入ってないんだよ」
「そうなのか?!」
「大会で勝つには、ちゃんとデッキを組まないとね。あと、それ返しておいてね。お店のだから」
「おっと、忘れないうちに帰してくる」
その後は未来にカードの事を聞いたけど良く分からなかった。ただ、借りてたデッキが面白かったから同じようなのが良いと言ったら構築済みデッキを紹介された。
「初心者用のワンコインから、上級者用で数千円するものまであるんだけど……」
「何が違うんだ?」
「一言で言えば”強さ”が違う。高いデッキは強いから、そのまま大会でも勝てるよ。そのかわり使うのが難しいけどね」
「安いのは弱いけど簡単に使えるって事か」
「そういう事。大地にオススメなのは【古代の軌跡】かな。さっき使ってたティーチング用デッキを強くした感じなんだ」
「なら、それに決めた!」
「ちょっと高いけど大丈夫?」
「大丈夫だ。そのかわり、色々教えてくれよ」
「もちろん!」
《森林開発》〈系統:現代・未来〉
フィールドカード
・フィールドカードはお互いの場に合計1枚しか配置できない。
・〈系統:現代、未来〉を持つキャラクターのアタックが成功した時、アタックの数字と同じ枚数のカードを相手の山札の上からトラッシュする。