TCGを始める
猛暑が続く8月、その日は40℃を超える猛暑日となった。家にいても暇だからという理由で宛もなく街に出てみたが、家のほうが良かったと後悔している。俺の名前は古代大地、しがない大学生だ。
「あっづぅ!! これなら家で寝てたほうがマシだったな。ん?」
街を歩く1人の人物に見覚えがあった。暁未来、同じ大学に通う幼馴染だ。小さい頃はよく一緒に遊んだが、大きくなってからは多少話す程度の付き合いしか無い。
暇だから、という理由で声を掛ける事にした。向こうにも都合が有るだろうが、少しでも話が出来れば気分が変わるだろう。
「おっす! こんな暑い日に何してんだ?」
「大地か、これからゲームショップに行く所だよ。大地は何してるんだ?」
「暇だから外に出たんだけど、熱くて溶けそうになってる」
未来と一緒にゲームをやった記憶が蘇る。未来はゲームが隙で、色んなゲーム機を持ってた覚えがある。俺は最新機種を持ってないが、中古で面白いゲームが買えれば時間つぶしになる。そう考えて、未来に付いて行くことにした。
「面白いかは分からないけど、それでも良いなら……」
「決まりだな。それで、この辺にゲームやなんてあったか?」
今、俺達がいるのは住宅街だ。スーパーやコンビニはあってもゲームショップは見たことがない。新しく出来たのだろうか。
「駅の裏側にあるよ」
「そっちはあんまり行かないから分かんねぇや」
素直に未来に付いていくと、雑居ビルの2階にある店に入った。けど、俺が思っていたゲームショップとは雰囲気が違う。
「これが……ゲームショップ?」
「そうだよ。ここはカードゲームのショップだよ」
「そういや昔やったな。いまやっても面白いのか?」
「面白いよ。プレイヤーは大人の方が多いくらいだよ」
そう言われて店内を見回すと大人しかいなかった。カードゲームは子供がやるゲームという印象があったが違うらしい。
「子供向けもあるけど、大人が”昔やってたから”って理由で始めるのも多いよ」
「へぇー」
「やってみる?」
「そうだな、試してみるか」
未来は店員と話したあと、カードを受け取っていた。ティーチング用のデッキと言っていた。
「まずは、やってみようか」
「おう!」
◇
「えっと、これが使えるんだよな?」
「うん、大丈夫だよ」
「じゃあ、《ストロング・マンモス》を登場させて《暴走》のカードを使う。《ストロング・マンモス》攻撃」
「《ストロング・マンモス》の”アタック”は「5」だから、俺の山札から5枚をトラッシュ」
「ターンエンドだ」
「俺のターン、カードが引けないから俺の負けだな」
何回目かのバトルの末、ルールも覚えてきて勝てるようになってきた。
「面白いな、これ」
「だろ?」
「もう1回だ」
「ちょっと待ってくれ」
未来が席を立って店員と話し始めた。それに、気づかなかったけど店の中は人で一杯になっていた。未来が帰ってきたので何かあったのか聞いてみる。
「これからショップ大会があるんだ」
「大会もやってるのか? 俺も出られるか?」
「出られるけど、ルール大丈夫?」
「もう覚えた!」
未来に教えられながら大会の受付を済ませると、待ってる間にもう1回ルールの確認をしながらバトルした。そして、大会の時間になった。
「それではショップ大会を始めます。席について下さい」
張り出されたQRコードを読み取ると席番と対戦相手が見れる。指定された席番に座って対戦相手の名前を確認したら準備を始める。
「今日、始めたばっかなんでお手柔らかにお願いします」
「そうなんですね、分からないことがあったら何でも聞いて下さい」
気さくそうな人で良かった。
「今日は始めての方もいますので、改めて大会ルールを説明します」
店員の説明が終わるとバトルが始まった。
「「よろしくお願いします!」」