新商品を仕掛けよう①
新しいスタッフを雇い入れて七日目。相変わらずTANGAの売り上げは順調である。
商売は素人でも七日も店に立てば仕事には慣れてくる。日本でも新しく入った学生バイトが最低限の仕事を出来るようになるのに一週間も掛からない。勿論取りこぼしと言うか覚えていない事や出来ない事はあるにしても、その辺は都度都度教えていけば良い。販売業はレジ打ち、接客、加工が出来れば十分な戦力なんだからな。
さて、それを踏まえた上で奴隷として購入した二人はと言うと、これが評価が真っ二つに割れる事態となっている。真っ二つと言うかね。あれだよあれ。
まずは妹のローズマリー。通称ロミー。御主人様と呼ばれるのはどうにも慣れないので俺の呼び方は北翔様に変わった。
彼女は一言で表すなら超優秀。見た目良し、接客良し、勤務態度良し。仕事を覚えるのが早くて、地頭が良いから機転も利く。計算ミスもお釣りの渡し間違えもしない。手先が器用でTANGAのパッケージを剥がす地味な仕事でも文句を言わずに続けられる。そして何よりも強いのはTANGAやオナホの商品説明を淡々と熟す鋼のメンタル。
来店客が面白がってローズマリーにTANGAの使い方を聞くイベントがしばしば発生するんだが、少しの抑揚も無く説明するものだから面白味が無くて二度目は聞かないって流れが出来てる。これでほんのちょっぴりでも恥じらいを見せたりすれば性的欲求を満たしたい男達からの質問攻めに合うと思うが隙がまるで無いってのが店側としては最高だ。
唯一の欠点は真面目過ぎるってぐらいだな。
次にジークベルト。通称ジーク。北翔と呼び捨てにされるのがイラっとしてきたので俺の事はボスと呼ばせている。
奴を一言で表すなら脳筋馬鹿。見た目は良い。それだけは良い。だが仕事をまるで覚えられない。店頭に立たせたら計算ミスしまくる。お釣りを適当に渡す。商品説明なんて絶対に覚えられないし、手先が不器用だからパッケージを破る仕事すら出来ない。何ならパッケージを破ろうとしてケースを破壊する。
言い方は悪いが、商店の店員としては本当にゴミ。
しかし立っているだけで威圧感のある大柄な見た目と腕っぷしは目を見張るものがあるし、他人との垣根が無くて異様にコミュ力が高いから呼び込みをさせればかなり優秀。ジークがいるだけで店の防犯面で効果がありそうだから、店の中に入れなければ戦力ってタイプ。まあ、呆れる事も多いが嫌いになれない愛すべき馬鹿キャラだな。
二人を買うのに支払った金貨は五十枚。日本円にして五百万円相当なんだが、あの時が泣き落としで相場よりも高く買わされただろうと考えていた。しかし奴隷の相場について調べてみると、役割は正反対だが二人とも金貨三十枚の値が付いてもおかしくないスペックだった。実際に俺は二人に…ロミーには金貨三十枚を超える価値があると感じているし。ジークもまぁまぁそこそこだからお買い得だったと言って良い。ジークに関しては大食漢で家計にデバフを掛け続けるからお得感がまるでないんだけどな。
息子ウサンクには今度手土産にTANGAを包んで持って行こうと思う。
FAZNA商店は九時から十三時までと十五時から十九時までの八時間営業になっていて、今は少し遅めの昼休憩の時間だ。昼休憩は店舗の二階にある住居スペースで昼食を摂る。二人には事件さえ起こさなければ外に出ても良いと言ってはいるんだが、ロミーはいつもここにいるし、ジークは食事を終えてから外に走りに行くぐらいだな。
そうそう。食事と言えば全てにおいて完璧に思えるロミーには意外過ぎる?ベタベタ過ぎる?欠点があった。彼女は凄まじい程のメシマズ女子だった。一度ジークの肉を焼かせたら五百グラムはある肉が芯まで黒焦げになっていた。芯まで黒焦げだぞ?最早墨だぞ?竈の火で短時間で何をすればそんなに火を通せるんだ。
それ以来ロミーに料理をさせるのは危険と判断して、俺が料理を作る日々である。