多忙によりスタッフ補充①
FAZNA商店を開店して7日目。店の繁盛っぷりが激ヤバな件。
「タンガエッグとか言うのはこれか!?」
「おい!それは俺のタンガエッグだぞ!」
「どれだって中身は変わらないでしょうが!タンガエッグは誰にも平等なんですよ!」
うん…。冒険者ギルド朝の定番、血で血を洗う依頼票の取り合いかな!?
「数は用意してますから慌てて手に取らなくても大丈夫です!まとめ買いは一人三点までです!EGGじゃないノーマルTANGAも持ち歩きには不向きですが極上の体験が出来ますよ!外で使うならEGG、自室で使うならノーマルがオススメですよ!」
「店主の勧めならノーマルも買うぞ!」
「俺にもくれ!」
「こっちもだ!」
煽ったら凄い勢いでTANGAの在庫が捌けていくんだが。やっぱりTANGAって異世界でも凄まじいブームを起こすポテンシャルがあるんだな。そのTANGAの在庫を豊富に抱えてるFAZNAって流石だわ。
「TANGA EGG一点で銀貨一枚と小銀貨二枚です。ノーマルTANGA一点で銀貨二枚です。こちらは三点で銀貨三枚と小銀貨四枚です。お次のお客様どうぞ」
…
……
………
「ようやく終わった…。疲れた…」
目が回る忙しさってのはこういう事だろうな。学生時代にコンサートのグッズ販売をやっていた時を思い出したぜ。
どうやら最初にTANGA EGGを購入した冒険者がギルドで激しく勧めてくれたらしく、噂を聞きつけた冒険者が大挙して店にやって来たって流れだった。まあ、TANGAのポテンシャルを考えれば当然だろう。
「今日の売上金でTANGAを大量に仕入れないとな。パッケージは剥がして売ってるから剥がす手間が掛かるんだよなぁ。今後は高級志向のアイテムとして本格オナホも売っていくかな。あれなら一段上の快感を提供出来るし、耐久性能の高いからちゃんと洗えば長く使える。値段は高めに設定するとして。開店一週間足らずでこの忙しさは予想外だったわ。FAZNAの凄まじいポテンシャルを考えればいつかはこうなるだろうと思っていたけれども」
忙しさは予想の範疇だが、そこに達するまでの期間は予想外。一年間商店で接客を学んだとは言え、ここまでの忙しさは即売会以来で勘を取り戻すにも少し時間が掛かりそうだ。どうするかなぁ。
カララン
店の入口にはこちらの世界で手に入れた鈴を取り付けて来店があると音でわかるようにしておいた。これならセクシー動画を見ていても来店客に気付けるからな
「いらっしゃいませ」
来店客に目を向けると、そこにいたのは見知った顔の好々爺だった。
「やぁやぁホクト君。開店から日が浅いのに凄い客足みたいだね。息子に様子を見に来させたら店に入りきらない程だと聞いたよ」
「ははは。有難い事に俺一人じゃ手が回らないぐらいでしたよ。TANGAを買ってくれた冒険者から一気に広まったみたいです」
「それはそうだろうね。TANGAは素晴らしい商品だ。私も妻に隠れて使っているからね。おっと、妻には内緒だよ?TANGAに嫉妬なんてされたら見つけ次第即ゴミ箱行きになってしまう」
「奥様には言いませんよ。ヤロップさんは恩人でもありお得意様でもあるんですから」
「そう言ってくれると有難いよ。何せホクト君のファズナ商会はこれから伸びる商会だからね。そんな商会と深く繋がれるのは私にとって幸運だよ」
「やめてくださいよ。まだまだこれからです」
クレント商会の商会主ヤロップ・クレントは俺が持ち込んだセクシー女優の写真集を見て、すぐさま俺の申し出を受け入れてくれた恩人だ。俺は異世界に来てからFAZNAを疑った事は一度も無い。だが最初に飛び込んだ商会がヤロップのところじゃなかったら、俺はまだ店を持てていなかっただろうし、FAZNAを搾取されていた可能性は高い。どこの世界も商人は商魂逞しいからな。
「そうだ。ヤロップさんの商会では人が余ったりしてませんよね?今日の状況を見て、これから商品のラインナップを増やしていくのに俺一人ではすぐ回らなくなるのがわかりまして」
クレント商会は優秀な人材が多いから引き抜きなんて出来たら最高だ。商会の状況を知ってるから返答も予想出来るけどな。
「うちは余っていないかな。ほら、最近エースが独立して抜けたばかりだからね」
やっぱりか。エースってのは俺の事だろうけど、ここは惚けておくとするか。
「誰の事でしょうか?いましたっけ?そんな人」
「いたんだよ一年前にひょっこり現れた優秀な店員がね。今はホクト君の接客術を参考に次世代の店員を育てているところさ」
店員の育成には半年前ぐらいから着手してたんだよな。ヤロップは見た目は優しそうな好々爺だけど、やり手の商人だって評判なんだよ。俺の日本的な接客術は異世界ではかなり特殊だから良い部分は取り入れようって貪欲さで10歳ぐらいの丁稚から育ててるんだよ。
「結局育てるしかないんですかね。開店したばかりの店では商業ギルドで並みの条件じゃ募集を掛けても来ないでしょうし。好条件にし過ぎると変なのが混ざって面倒事しか呼びませんしね」
「そうだね。そこでホクト君に提案だ。今から育てるならば奴隷を購入するのはどうだろう。即戦力としては弱いかもしれないけれど、奴隷だったら自分の好みに合った人材を選ぶ事が可能だよ。最低限の読み書き算術が出来る奴隷が見付かればすぐ店に立たせられる。どうだろう?」
奴隷か。日本ではとっくの昔に無くなった奴隷制度だが、この世界では普通に存在している。日本の場合は奴婢って身分だったみたいだけどな。
話が逸れたが、この世界の奴隷は人権が保証されてないレベルで主人が絶対って感じで、俺はあまり良い印象が無い。今まで俺が見た奴隷って全員目が死んでたのが原因なんだけどな。
日本人の倫理感が奴隷って身分を受け入れがたいのと、そもそもあんな死んだ目をしてて使えるの?って疑問があって選択肢から外してた。けれど、ヤロップが勧めるなら見に行ってみようかな。
「一度奴隷商に足を運んでみます。お勧めの店はありますか?」
「それがいい。中央地区にあるサイデル商会なら状態の良い奴隷を多く扱っているよ。そのぶん値段は高いけれどね」
「状態が良いのは有難いですね。今日は早めに店を閉めて行ってみます」
奴隷商に足を運ぶのは初めてだな。イメージではカビ臭そうとか汚そうって印象だけれども、実際はどうなのか楽しみでもあり、怖くもある、