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プロローグ

「突然の異世界転移から1年。今日から俺達の伝説を始めるんだ」


 俺、加賀北翔は日本からの異世界転移者だ。

 今から1年前にタブレットでエロ動画を見ながら家で寛いでいたら突然異世界の街に転移した。


 異世界ファンタジー作品でありがちな転移したら森で即バトルって展開が無くて心底安心したが、何の荷物も持たず部屋着のスウェットとスリッパだけしか持って来れなかったのは痛かった。

 俺が過去に読んだ異世界ファンタジーでは転移した主人公が質の良い服や手持ちのハイテク機器、日本の札なんかを売却して現地の通貨を手に入れていた。


 かたや俺はと言えばハーフティンバー風の建築が立ち並ぶ近世ヨーロッパ的な世界にスウェットとスリッパと下着だけ。

 これでは全て売ってもたったの小金貨1枚。日本円に直すと1万円相当にしかならず、現地の中古服すら買えない始末だった。


 けれども憂いはあまり無かった。


 転移しても尚、俺の視界には視聴していた動画が流れていたからだ。

 

 タブレットは存在しないのに動画だけは消えずに流れ続ける。

 それはとても奇妙な光景だったが、俺にはそれが自分のスキルなのだと直感出来た。


【俺のスキルはFAZNAだった】


 何を言っているんだ?そう思うかもしれない。

 そんなの有り得ないだろう。そう思うかもしれない。

 けれども、それは事実だった。


 俺にはFAZNAがついている。そう実感したら怖いものなんて何もなかった。


 どうせならFAZNAじゃなくってDWWが良かった。なんて愚かな考えは一瞬で捨て去った。

 だってFAZNAは全ての日本男児を支える男達の屋台骨じゃないか。


【FAZNAは異世界に来たって日本男児を支えてくれるんだ】


【だったら不安や畏れなんて少しも感じる必要は無いだろう?】


 俺は上着のスウェットだけを銀貨3枚で売却した。

 そして手に入れた現地の通貨で人気セクシー女優神谷結愛の写真集を購入した。

 FAZNA通販で購入した商品が手元に届くかどうかは賭けだったが、FAZNAは俺を裏切らなかった。

 スキルFAZNAは現地通貨を利用しても扱っている商品を手元まで届けてくれた。


 それもたったの一瞬で。


 神谷結愛の写真集はエロと技術の発達していない世界において途轍もない価値を持っていた。

 俺は写真集を利用して、とある商人との繋がりを持ち、この世界の常識と商売をしていく為の知識を得た。

 そして商売のいろはを学ぶのに商会で1年間下積みをして、俺は今日、異世界で念願の店を開く。


「FAZNA商店、本日開店です!」


 俺はFAZNAで天下を取ってFAZNAの名を轟かせる。

 それが全ての日本男児を支えてくれるFAZNAへ、世界を超えた恩返しになるだろうから。

カクヨムにて先行公開中

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