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意識外


 本来単純計算で五分しかない猶予の中トミイタが喋り続けた意味を考えるべきだった。

 奴は「そちらも丁度七人ですか」と言った。

 先を急ぐ状況。尚且つ、その言葉を発する直前に起こったのは予想外の罠によっての仲間の拘束だ。

 余程自然な反応とは言えなかった。


 恐らくその言葉を発した奴の意図は、こちらの人数に対して意識を向けている素振りをしながらも、自身の陣営も七人であると言う無意識の刷り込みを行うためだろう。

 故に、俺たちは八人目の到来に気付かなかった。

 入り乱れるこの状況では、態々索敵スキルなどで遠くまでの脅威に警戒などしない。


 トミイタと同じグループであるレネカと言う女性が現れても気付けなかった。


 そもそも、足止めをされていたHグループの『鍵の破片』所有者の相手をしていたであろう彼女を俺はまんまと意識外へと追いやっていた。

 共有した情報では体のラインが出ない様な布を被っていた男にHグループは足止めを喰らっていたと聞いていた。

 しかし、恐らく女性であることを隠すための偽装。


 何故そんなことをしたかと考えれば、それは勘違いを誘発させるためた。

 トミイタと協力関係を結んだ時に奴は俺たちに昆布西口が拘束系の異能を持っているとほのめかした。

 しかも、氷の異能であるのならそうであると言えばいいところを何か含みを持たせた発言をした。

 そこから考えられるのは単なる氷魔法ではないと言う事。

 拘束に特化していると考えるのが自然だ。

 そして、その情報はこちらの陣営で共有されて尚且つ、Hグループの情報が入って来た。

 その情報を聞けば、その場に足を縫い付けられたが攻撃をされなかったし、スキャンもされなかったと言う事がわかった。

 そこまでくれば、俺の共有した情報から昆布西口が該当すると思うだろう。

 恐らく、強力過ぎるが故に拘束時の干渉不可の類のスキルだと考えれば、なるほど純粋な氷魔法での拘束ではないと思う。


 そして、今の局面氷の魔法を使う昆布西口であるが、何か要素を満たしていなくその拘束スキルを使えていない。

 であれば、ほぼ奴らの取ってくる行動の選択肢から除外しても良いだろうと判断していた。


 ただ、兆候はあったのだ。

 この場にいる全員がにらみ合うような瞬間。

 明らかにおかしい状態だ。

 そして、これを望んで起こすことが出来るのは追われる側の彼方だけ。


 そこから、何かの罠。

 すなわち、スキルの発動条件の類であると予想できたはずだった。


 だが、出来なかった。


 気付いたのは動けなくなり、尚且つレネカと言う女性を認識してからだ。


『これはユニークなんじゃね』

『嵌められた感じ?』


 そして俺たちが、その場に留まるなか彼らは再起を待つことはない。

 限られた数分の時間。

 やっとそれを予感させるように地面を蹴った。


 過ぎ去っていく背中。

 だが、こちらも何もしないなんてことはない。

 素早く状況を確認すれば、レネカを守るようにして移動したものが数名。

 そこから、スキルの中断はレネカへの干渉であると推測する。

 だが、それは現実的ではない。


 ならば、彼らが今にも出んと向かう通路の封鎖を試みる。

 爆弾を生成する。

 そして俺が投擲するときには、他も者もスキルを飛ばしていた。

 下半身は動かない。

 だが、上半身は動く。

 スキルの発動も何とか可能。


 ただ、それは想定済み。

 せりあがる氷の壁がそれらを防ぐ。

 容易に崩れるも一瞬の猶予が彼らに与えられれば逃亡は容易い。


 そして同時に、脚の違和感が消えるのを感じる。

 しかし、逃げるトミイタたちへの攻撃を行った者たちが居る反面、レネカへ向けた攻撃をしていたものがいたがすべて防がれている。

 ではなぜか。

 恐らく、それはスキルの制限だろう。

 ユニークスキルだと仮定しても、自身の自由を無くし条件次第では発動が出来るその足止めの力を複数人への同時付与。

 それが何秒も続くのはありえない。


 そして、恐らく一番早く術中を逃れたのは俺だろうと察する。


 奴らはすでに通路に達する。

 俺は、自身の身体を飛ばすように爆弾を瞬時に生成して起爆した。

 身体に負担はかかるも、時間がない。

 慣性を最大限に使って奴らに迫り、ピンボールのように通路を進む。


 小柄な体で奴らの脇を抜けていく。

 当然攻撃をされるが、それを身体を捻ってさけ、短刀でカバーする。

 数秒にも満たない一瞬の移動。

 当然スキルの恩恵で高速で相手が動こうとも何とか食らいつく。


『早』

『見えん』


 蹴りを入れて二人をよろけさせる。

 腕でガードされるも減速する。それだけで十分だ。

 速攻で落とすべきは、トミイタ、昆布西口、ヒカゲ、ジチョウ。

 スピードと突破力を考えれば、優先すべきは奴らだろう。


 しかし、ダンジョンハントに参加者。

 俺より強い人間がいるのが当然の場所ですべての邪魔は出来ない。

 生成した爆弾をばらまいた。

 そして、そこに紛れ込ませたのはナイフにつけた爆弾。


 人ではなく、通路を抜ける先へと投擲した。


 アレを起爆すれば、ダンジョンの壁が壊れたりはしないが少なからず衝撃は受ける。

 一歩をためらうか、急ブレーキをかけるか。

 何にしても止まらざるを得なくなる。


「いや、これは意味を成しません」


 だが、そこにはためらわず足を進めるトミイタがいた。

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