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若い


「ヒント、『鍵』を持つのは四層以降の魔物……要領を得ないな」


 スキャンをしてやっと手に入れたヒントに対して不満を吐く。

 これではないに等しい。

 そんなことを思ってジチョウは腰に手を充ててわずかにでも身体を伸ばした。


『身体きつそう』

『スキルなんかで健康体より健康らしいのに、なぜここまでくたびれた感じを出せるのか』


 配信者ジチョウ。

 くたびれたおっさんを絵にかいたような見た目の彼に対してコメント欄は流れる。

 本人には見れていないために、気付いていないがこれもいつもの光景であった。


「か、『鍵の破片』見つけました!」


『かわいい』

『癒しだな』

『分かりやすくジチョウが癒されてるんだよな』

『独身でも娘を見るような顔が出来るのか』

『え?あ、いや、鍵!?』


 ジチョウがだるそうに動く横で、一人の少女が声を上げる。

 小柄で幼さの残る顔に笑顔を浮かる彼女──テケは大きく端末を上にあげた。

 現在六層。

 要領を得ないヒントを何とかやっと見つける。

 そんな状態であったために、ジチョウは急展開についていけなかった。


 ぼうっとその場に立ち尽くす中、もう一人のチームメイトのヒカゲがテケを褒める姿を見てやっと理解が追い付いた。


「は!?」






 ◆


「え、もう?」

「早いですね。Bチーム、テケさんが『鍵の破片』を手に入れたようです」


 驚くフーカ、それに対して蝶羽が状況をもう一度口に出した。


『マジで速くね?』

『いいのか?』

『運営がミスするとは思えんけど』


 コメント欄が困惑する理由は開始早々の『鍵の破片』の発見。

 僅か五つしかないそのうち一つが六層と言う低い段階にあって人の手に渡ってしまったことだ。

 ただ、驚いてはいるもののフーカの様子を見れば想定の内であったことは見て取れた。


「意外と早かったですけど、でも手に入れたら終わりというわけではありませんからね」


 そんなことを言う彼女にコメント欄はあることを思い出す。


『あ~忘れてたわ』

『五つ集める間に他に割ったらだめだもんな』


「では、一つ目のチームが『鍵の破片』を手に入れたところで、もう一度おさらいをしておきましょう」


 フーカの声で画面は変わる。

 そして人ひとりが書かれたイラストが表示される。


「今回のDH本戦では『鍵の破片』を入手した後、他のチームから守る必要があります。参加者の皆さんはダンジョン入場時に腕、脚、背中に計五個のシールを張って貰ってます」


 実物の画像が映し出されて長方形の10×4程度のシールが映し出される。

 きわめて軽量なものであり、わずか3gと書かれている。

 ダンジョン産の特別な材料を使用して作られたそれは、先ほど表示された人のイラストに腕、足、背中の順で張り付られている。


「これには、画像を映すことの出来る機能があり、『鍵の破片』を手に入れた場合、任意の自チームの人物、部位に表示されます」


 映像が更に移り変わり、シールの画面に鍵を模したイラストが表示されているのが分かった。


「そしてここからが肝心のルールです!先ほど言いましたように『鍵の破片』がシールに投影されることになりますが、これを他チームの人にスキャン機能で3秒間移されてしまうと『鍵の破片』は奪われてしまいます。ですので、どの部位に貼るかや、また多く手に入れれば入れるほど、気を付けることが多くなり、防衛も大変になります」


『まあ、手に入れれば終了だと、五つ集めらんねぇしな』

『これ、背中に貼って後ろ取られないのがベストか』

『どう考えても動かせる脚か腕だろ』

『誰に持たせるかも決められんのか。素早い人が良いんかな』


 視聴者の多くにも理解が行き渡ったのか議論が交わされる。


「『鍵の破片』を手に入れた場合には参加者全員に通知が行くので、狙われる可能性もありますね」

「チーム情報だけとは言え、立ち回りが難しくなります」

「うんうん。あ、早速スキャンを切り上げて、動き出したチームがありますね」


『自力で見つけるより、相手から取った方が確実だしな』

『ヒントが碌なのがないような状態でこれはまあだとう』


 映像が移り変わって映るのはAチーム。

 男2女1の比較的若いチームだった。


「Aチームは皆ぴちぴちだねぇ。情報によれば皆高校三年生、私にもそんな時期があったなぁ」

「ほんの数年前でしょ。というか、この歳でDHに出るほどの実力とは素直に凄いですね」


『マジでやばいぞ』

『一月になってすぐにダンジョンに入ったとしても半年足らずでDHって』

『将来有望だなぁ』

『なんか若い子がキラキラしてると辛くなる』

『有名な子じゃん。地元ニュースが取り上げてたわ』


 未だ高校在学中。

 であるならば、その才能は計り知れない。

 時間的制約と言う単純な不利、そして一年も経たないうちにここまでたどり着いていると言う事実はその言葉以上に驚異的なものであった。


『つーか、六層に一直線だけど、場所分かってんの』

『スキルの可能性はある。ユニークレベルだけど』

『これすぐ来るかもな』


 Aチームは『鍵の破片』を手に入れたBチームのすぐそこまで接近してきていた。

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