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ダンジョンハント実況中!


 携帯端末を取り出してカメラ機能を呼び起こす。

 板を通して見える景色をのぞき込む。

 とらえるのは一つの影。

 二層に出現する魔物、『変電華』。

 その概要は体内電気を感知して襲ってくるとかなんとか。

 一見ただの花に見えるそれは花弁に帯電機能を持っていると言う。

 そんな魔物を遠目にスキャンしてみた。

 スキャンには3秒間画面に対象を写し続けなければならない。

 今回は動かないからいいもののこれが動く対象になれば厄介な機能だ。


「『鍵』もないし。ヒントもなしか」


『まあ、しゃあない』

『法則性はないけど、そこらにいる奴はヒント持ってなさそうだしな』

『倒すにしても、無視して進むにしても手間があるな』


 端末越しに写る映像には、『ヒント:なし』の文字が浮いていた。

 近づかなければ動くこともないのだから、ヒントを持ってないのは当然か。

 そんな風に思いつつ、端末の電源を落としてしまいこんだ。


 現在、ダンジョンハント本戦開始から少し、俺たちCチームは足を進めながらスキャンをして『鍵』につながるヒントを探していた。


「全然だめだねぇ。二人はヒント出た?」


 音を上げたミルノさんは、振り返りそういう。

 俺は無論首を横に振ってダメだったことを表した。

 しかし、シキカさんは違ったようで。


「ヒント、見つけました」

「ホントに!?」


 ミルノさんは大きくリアクションを取る。

 大してシキカさんは、落ち着いている。凄い。


 そんなこんなで俺たちは一つ目のヒントを得た。

 その内容とは……


「『鍵』を持つ魔物は三層以降にいる…………うーん」


 代表して読み上げたミルノさんは、微妙な反応を示した。


『うーんこの』

『今二層であることを考えれば、次を無条件で飛ばせると言えばそうなのかも?』

『ヒントが三層にないって言ってるわけじゃないからなぁ』


 まあ、そんな簡単には行かないのだと、俺は思った。






 ◆


「ついに、もう一人の実行委員の彼女が合流しました!」

「遅れて申し訳ないです。配信者している秋月蝶羽(ちょうは)で~す!」


『キター』

『ちょうはちゃん合流』

『昨日ライブで、今日実行委員って体力えぐいな』


 黒髪に赤、青、黄と奇抜な色が入る少女にコメントは沸く。

 配信者秋月蝶羽は現在のダンジョン配信においては、フーカと対をなすような存在として扱われる人物である。

 

「蝶ちゃん、昨日ライブだったでしょう?ちゃんと寝れてる?」

「移動中に寝たから大丈夫。それより、昨日現地に来てくれた人、ありがとね」


『昨日は楽しかった』

『いけなかったんだよな』

『マジで休んでほしい』


 探索者、しかし彼女は配信者であり、人気を集める存在。

 故に、ライブ講演にまで手を出していた。

 探索者が様々な場所で活動することは昨今珍しくはないが、それでも未だ拒否感を示す人も多い中彼女はそれを実力で黙らせた。

 それだけに、根強いファンも多い。


「さて、蝶ちゃんも合流したし、早速色んな人を見ていきたいと思います!」

「そうだね。フーちゃんは一押しの選手はいるの?」


『それ聞きたいわ』

『いつも配信で話しているから何となく予想着くけど』


 台本の流れ通りなのか、蝶羽はフーカに促した。


「もちろんいるよ~。気になる人は沢山いるけど、一押しはやっぱり、となうちゃんだね」

「あ~やっぱり。裏でもずっとその話してるし……」


『いつも言ってるもんなぁ』

『予想通りではある』

『となうがついに有名に……』

『古参としては嬉しい反面、寂しい』


 概ね予想通りと言う感想が占めるなか、蝶羽は続ける。


「確か、となうちゃんは……」

「Eチームだね」

「早いっ!」


 即座に答えたフーカに蝶羽はそんな声を洩らす。

 そして、配信画面ではEチームのメンバー詳細と現在の映像が映し出された。


「って、もう4層!?スキャンもしつつって考えると相当早いね」

「となうちゃん流石!……まあ、今でこそ凄いけど彼女がここに至るまでは苦労も多くて」


『始まった』

『好きだなぁ語るの』

『もう10回は聞いた』


 残る二人と協力しあって、テキパキと進めていく少女を二人は見る。

 映像がつながったことで、音声も流れて来た。


《ヘキさん。こっちの援助できます?》

《了解。ダックさん、そっち頼みます》

《オッケ~》


 コンビネーションを円滑に行い進む様子は、探索者でも上位に位置するフーカと蝶羽から見ても素晴らしいものだった。


「──つい最近まで、19層に到達したばかりだったのに、とあるスキルを手に入れてから快進撃。ギリギリで募集要項を満たしたんだよね」

「一生喋ってんなぁ、フーちゃん。まあ、でも今日初対面でここまでのことが出来るのは本当に凄いです。ソロ指向が強まっている近年でここまでのことをするのは難しいですし」


『マジで、すげーよ』

『連携だけで言えば相当なものだよな』


 力説がもはやお経の域に達したフーカを呆れながら横目で見て、蝶羽は賞賛を送る。

 これから彼女たちが下から上がってくれば、相当なものになるだろう。

 そんな予感がした。


「──それでスキルを得たんだけど……って聞いてる?」

「いや、ムスッとされても……」

「してないよ。それより、蝶ちゃんのお勧めはいる?」

「えーっと……」

「いや、待って、私が当てる」

「めんどうだなぁ」


『進まねぇ』

『まあ、序盤は停滞気味になるから……』

『公式チャンネルまで停滞してどうすんだよ』


 この状況を見ているすべてのものが呆れる中、「ずばり」とフーカは指を指した。


「蝶ちゃんの一押しは、弟の蓮羽くんだ!」

「普通に違う」

「え?」


『辛辣』

『仲悪いん?』

『いや、弟が好きすぎて、魅力がバレちゃうとまずいとか思ってる多分』

『それだな』


 一瞬、固まっていたフーカだが、再度気を取り直したように座りなおした。


「ま、まあ、一応見ようよ」


 その声と共に移り替わるのは、彼の属するIチームの様子だった。

 映るのは三人の少女だった。


『あれ?映像ミスった?』

『女の子しかいないけど』

『いや、あってるぞ』


『あの中の一番女の子っぽいかわいい子が、蓮羽くんこと、レンくんだ』


「お~、相変わらず、ふわふわのゆりゆりだなぁ~」

「見ないで!」

「もごごごごお!」


 フーカの形容した言葉にか、とにかく気を害したであろう蝶羽はフーカの目を塞ぐようにしてつかみかかった。

 勢いあまってか口も塞いでしまっていた。


『またか』

『いつもの流れ』


「もごぉ……じゃあ次は、本当の一押しを教えて……」

「はぁ。えっと、私の一押しはヒカゲさんです」


『ヒカゲさん。いいよね』

『わかる』

『いい趣味してるぜ』


 映像が切り替わり、映しだされたのはスラリと手足の伸びる女性であった。

 中性的な顔を持ち、形容するならばイケメンといったところだろうか。

 彼女の人気はすさまじく、モデルの仕事もこなしているためか知名度も高かった。


《この辺りにはもういなそうですね。ジチョウさんはどうです》

《ああ、こっちも終わった。ヒントもなし。どうにも機械に慣れなくて手際が悪くて申し訳ないが》

《いえいえ。苦手なところはフォローしていきましょう》


『イケメン過ぎる』

『カッコいいんだよな。普通に』

『と言うか、ヒカゲさんと並ぶとジチョウのさえないおっさん感がすげぇな』

『ジチョウもカッコいいよ。それ以上におっさんオーラが凄いけど』

『っていうか、ずっと「素敵」って聞えると思ったら、もう一人のチームメイトか』

『テケちゃんな。完全に乙女の顔してる』


 イケメンオーラを漂わせるヒカゲとおっさん感をぬぐえないジチョウと言う男。

 そして、ヒカゲだけを見て「素敵」と小さく呟くテケと言う少女のチームであった。

 そんな風にして、映像を見ていた時、不意に蝶羽が口を開いた。


「そう言えば、フーちゃん。前にDHに誘った子が予選通過したって言ってなかった?」

「ん?うん。花火ちゃんのことだよね。あの子のことも見たいと思ってたんだよね」


『誰?』

『救助の案件の時の子か』

『ちょっと前にバズってたな』

『花火ちゃんキタ』

『ウラウとやってたな』

『調べたら最近配信者になったばっかで知らんかった』

『5月からってことはまだ二か月ないくらいか?』


「お、切り替わったね」


 配信画面がまたも切り替わる。


《あ、えと。好きな食べ物とかあり、ますか》

《たべも……あ、それさっきも聞かなかった?でした》

《え、あ、えごめんなさい。えっと》

《じゃ、じゃあ、好きな……好きな……乗り物、とか》

《乗り物……?え、あ、ごめんなさいどういう意味、ですか……?のりものに好きとか、あるんですか……》

《あ、え……大学Fランなんで、すみませんあたまわるい質問して……》

《そ、そんなこと。俺中卒だから。カスだから》


《二人とももっと明るくしようよ!もっと楽しいこと考えるとか!あ!そうだ!二人は楽しい思い出とかないの?学校行事とか……あれ、二人ともどうしてそんな顔して……私変なこと聞いちゃった?》

 

「「…………」」

 

『なにここ地獄?』

『ミルノさんのチームだと思ったら、何この状況?』

『ミルノって人の労力えぐくない?』

『なにこれ怖い』

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