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焦り


「ん、んぅん~」


 俺は握りこんだ拳を沿うようにして天に突き出した。

 DH予選が終了しやっと外に出れたことで俺は伸びをしたのだった。


「お疲れ様です。アシさん」

「うん。涼香さんもありがとうね」


 隣を歩く涼香さんに俺はそう返した。

 今回の予選は涼香さんが居なければ、苦しいものになっていただろう。

 そう断言できるほどに彼女の存在はありがたかった。


 彼女にも長い間拘束してしまったので、何かお礼を出来ればいいな、なんて考える。

 DHの特徴故に、外部の情報を完全に遮断するためとは言え、独自に用意された個室にて裏方の仕事をしてもらうことになる。

 俺はその間ダンジョン内とは言え、比較的窮屈なこともなく動くことはできるが、涼香さんは違うだろう。


「涼香さん。何か食べに行かない?今日くらい俺がおごるよ」


 格好つけて言ってみる。

 おごるも何も、まともに外食などしたこともないのだが。

 まあ、とにかく一人でなければお店くらい入れるだろう。

 と言うか、配信ならともかく一人で知らないところには入れない。


 ただ、俺の言葉はさらりと否定される。


「ダメですよ。アシさんわかってます?今のお金の状況」

「え?」

「お金をもらっている私が言うのもなんですけど、余裕ないですからね」


 そんなことを言われて疑問を抱いた。

 俺の記憶が正しければ少なくとも3000万はまとまったお金としてあったはずだ。

 ただ、彼女はこういう。


「ダンジョンに挑むためにそろえた装備はもちろんですけど、保険とかいろいろとひかれてるんですから」

「保険……」


 そんなものに入ったのかすら俺には分からないが彼女が言うには通常のものもあるがダンジョン関係の色々も合わせると結構な出費になるらしかった。

 あとお給料を出すのも受け取っている側が考えるよりお金がかかるようだった。

 

 ぼけ~っと話を聞いて居れば個人で細々とダンジョンで活動しているのとは違うのだと言い聞かされた。

 ただ、それはともかくとして、配信活動の成果として収入もちょっとずつであるが入っているらしい。

 今回のDH予選を突破したことで、本選に出られるようになったから、より多くの人に見てもらえるように頑張ろうと俺は気合いを入れた。


 そして、労う暇もなくテキパキと動き料理を作ってくれた涼香さんに感謝しながらも俺は食事をしたのだった。





 ◆


 そして数日後、正式にDH本戦についてのお知らせを見た俺は盛大に慌てることとなった。


「え、あっ、え?どうしよ!?」


 俺は何度も何度も文章を読む。

 そしてその度に焦りは増した。

 いや、無理だ。

 最近は配信をしているから何とかなって来た部分もある。

 だけど俺は元々、教室でポツンとボッチをしているような奴なんだから、出来るはずがない。


 そんな様子の俺を涼香さんは不思議そうに一瞥した後、詳細が掛かれたモニターを見た。

 そこには、DH──ダンジョンハント本戦はチーム戦である旨が書かれていた。

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