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 ダンジョン協会における大型イベント『ダンジョンハント』は今回の『ダンジョンドミノ』の影響もあって前倒しで行われることになった。

 そもそも企画自体は長い期間をかけて準備が行われていたらしい。

 だが、発表から開催までの日時が短縮された経緯の中には、『ダンジョンドミノ』によってダンジョンへの不信感が高まることに対しての負のイメージを払拭するための一手として今回の企画を使おうと言う意図もあったらしい。


 とは言え、イベントの開催日が短くなったことすら今知った俺には、別に特に思うところもないのだが。


「でも、よかったですね。ギリギリ間にあって」

「うん。当たり前だけど、締め切りも前倒しになってたからね」


 と言うのも、イベントの申し込みの締め切りも前倒しになっている。

 まあ、当たり前と言えば当たり前ではあるのだが、開催ギリギリにイベントに出ることを決めた俺としては本当にあとちょっとで締め切られてしまうところだったのだ。

 それだって、俺自身が気付いたわけではなく、涼香さんが慌てて俺に申し込みをしたのかと聞いてきて気付いたのだが。


「葦さんがもう少ししっかりしてくれれば、私も安心なんですけど」なんて彼女は言う。

 それに対して反論の余地などなく、俺は力なく笑う事しかできなかった。


 そんなこんなで受付をネットで終わらせた涼香さんは時計を見た。

 配信をする関係上、色々と通常参加と比べて記入事項がたくさんあって俺には分からなかったが、それをすべて記入するとなればいくら涼香さんでも時間が掛かる。

 時計を見れば、十分近くたっていた。


 そして涼香さんは口を開く。


「もう、お昼ですし、何か作りますよ。ちょっと待っててください」


 そんなことを行ってキッチンへと入っていった。


 食事まで面倒を見てもらっているのかと思われるかもしれないが、何も俺がその役割を押し付けたわけではないのだ。

 そもそもの話、涼香さんがご飯を作るに至るまで色々あったのだが、順に説明していこう。


 まずだ。

 俺は涼香さんを雇うという形になったのだが、仕事をするにあたって彼女を俺の家へと上げていた。

 機材はこちらにあるのだからまあ当然な話ではあるし、いくら女体化しているとは言っても、俺が彼女の家に行くのは違うだろう。

 とか何とかで、まあ、一応自由に出入りできるようにはなったのだが、そんなとき彼女が言ったのだ。


『私、こっちに住んでもいいですか?』


 まあ、理由としては、仕事をするならここに通うことになるのはもちろんなのだが、配信の色々で結構長い時間ここに彼女は滞在することになるのだ。

 だから、まあ別におかしな提案ではないのだ。

 彼女は俺がTSした存在だと知らないわけだし。

 それに、俺の借りている部屋は結構広い。

 この辺の家賃がそこまで高くないと言うのもあるのだが、お互いのプライベートを守れる程度の広さはあったのだ。


 で、まあ半ば押し切られるような形で、一緒に住むことになったのだ。

 それはもう緊張していた俺であったが、相手は全くそんなことなく。


 とにかくそんなこんなで一緒に暮らすことになったのだが、そこで俺の食生活が彼女に暴かれることになったのだ。

 別に驚くほどのことでもないが、俺が料理を出来ない関係でコンビニ飯。

 故に、涼香さんは体に悪いからと自身が作ることを提案してきた。

 どうせ自分の分も作るのだしといって。


 それと、彼女はコンビニ飯はともかく、カップ麺は食べたことはないらしい。

 もしかしたらお嬢様なのかもしれない。

 なんて思っていると、彼女は焼きそばを作って来た。

 案外庶民派のお嬢様なのだろうか。






 ◆


 そして、『ダンジョンハント』予選日。

 俺は、会場である亜奏楽(あそら)ダンジョンに立っていた。

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