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2話 バカは目的と手段の区別が出来ない

 やっぱりブランクを感じる……

 少しでも伝えたい事を文章に出来るように頑張りますね!

 村を出て数キロという辺りを3人は歩いている。


 気絶していたジュンは10分もしないうちに目を覚まし、今は意気揚々と先頭を大股で歩き、今にもスキップし出すのではないだろうかという有様である。


 このジュンの回復の早さのせいか多少の折檻では堪えない。


 前世の若い頃は暴走族の頭を張るようなヤンチャであったが大人になり多少落ち着いたと同時にアニメにハマり、特に異世界モノを好んで見ていた事を知る兄貴。


 今のジュンにとって楽しいのは分かるが、と咥えた煙草の口の端から紫煙を吐き出す。


「浮かれ過ぎて足が地に着いてない。コイツはやらかしの反省はなさそうだな……」


 ジュンに反省を促す事は躾のなってない犬にエサを待てさせる方が超楽勝ミッションに化ける事は重々分かっているがなんとかしないと紫煙を胸に満たしながら考える。


 兄貴の考えの一端を理解したのか、おずおずと伺うように話しかけてくる。


「ジュラも今回の事は色々と思う所はあるけど、少しはお兄さんのせい、ううん、お兄さんが基点になってるのもあるんだよ?」

「俺が?」


 予想外の角度からのアプローチを受けた兄貴は普段鋭い目をする目を少し大きくしてジュラを見つめる。


 ジュラの話を要約すると兄貴は村の未婚の女達にロックオンされていたらしい。


 まったく気付いてなかった兄貴はポカンと口を開けて呆けてしまう。


 どうやら兄貴は恋愛に疎いどころかからっきしだったようだ。


 やっぱり気付いてなかったと苦笑するジュラは笑いを堪えながら続ける。


「だって、お兄さんと結婚したら食べるのに困る事態を想像するの難しいもん。あれだけ色々モノ作り出来たらどこでも生きていけそうだし?」


 ジュラの言葉にムゥと唸る兄貴に自分が着ている服や背にあるモーニングスターやピンクのカバンを指差し「お兄さん薬とかも作れるしね」と告げられる。


 薬に関してはある過程で詳しくなり出来るようになった副産物である事を知らないジュラを見て複雑な兄貴。


 ある過程の話は割愛するが確かに言われてみれば損得勘定で考えればターゲットにされるのは理解出来た。


 だが、同時に少し落胆してしまっている事に兄貴は気付く。


 恋愛感情というより、物件扱いである事にである。


 前世の兄貴であれば年も取っているせいか、「結婚って大半そんなもん」と達観していたが、自分でもある程度自覚はしていたが体が若返ったせいか多少、肉体に心が引っ張られている事に。


 地味にダメージを受ける兄貴だが、ジュラに悟られないように紫煙を吐く事で気持ちを整理させて脱線気味の話の筋を戻す。


「で、それでジュンのやらかしに繋がるんだ?」

「んとね、『にいやんを金にしか見えてないメスにくれてやる訳にはいかんやろ?』って言ってジュラの前から飛び出したのが1年前の話なんだけど」


 ジュンのモノマネ込みでの説明に変な感心をする。ジュンのモノマネが意外と上手かったからだ。


 変な脱線してしまったがジュラの言葉に一瞬感動してしまった兄貴だったがオチが見えてしまった。そう兄貴としての経験からである。


 確かに兄貴に対する思いからくる義憤が始まりでちょっと口説かれたぐらいでフラフラとするヤツなんてというのを証明だったのだろうと兄貴は理解する。


 しかし、兄貴は知っている。ジュンという男は目的が手段に簡単に逆転してしまうヤツである事を……


 つまり、途中から目的を忘れて手段が主目的に変わったのだろうなっと。


 所謂、やってる最中に楽しくなってしまったってのが容易に想像出来てしまった兄貴であった。


 ふと我に返る瞬間もあっただろうが「結果オーライやん、ワイ凄い」と笑ってるジュンのドヤ顔が脳裏に浮かぶ。


「……一瞬、感動した自分を殴ってやりたい」

「えっ? ジュラは色々と複雑だけどどうしてお兄さんは……」


 どう感情を処理したらいいか悩むジュラであったが兄貴を心配そうに見つめる。


 兄貴はそのジュラの複雑な気持ちを理解している。幼い頃からジュンをどう見ているかと。


 兄貴は思う。


 ジュンが女にだらしないのは前世からであるし諦めもある。


 だが、同時にジュンの本当に心寄せる女に対するやっかいな側面がある。


 それを分かっているにも関わらず前世では見守ってしまって失敗している。


 今も兄貴を心配そうに見上げるジュラの頭に大きな手をのせて撫でる。


「俺の事は気にするな。俺がなんとかしてやる」

「え? え? どういう事?」


 当然、兄貴の想いなど理解出来ないジュラを兄貴は微笑ましげに見つめ、撫でる手をどける。


 そして、ズンズンと浮かれ切って兄貴達を置き去りに遠くなりつつあるジュンの背を見て嘆息する。


「とりあえず、どんどん先に行くバカを止めるところから始めるか」

「あっ、本当だ、あんなに遠くに」


 兄貴の言葉でジュンの現在に気付いたジュラ小走りで追いかけていく。


 その背を眺めながら兄貴は呟く。


「今世は言い訳して失敗しない。例え、おせっかいと煙たがられる事になろうとも」


 紫煙を吐き出し、大股で2人を追いかけて足早に歩を進める。


 視線の先ではジュンをジュラが止めようと頑張る姿が見える。


「じ、ジュン君、道も分からないのに1人でいっちゃ駄目だよ」

「大丈夫、なんとかなるなる」


 などとやってるんだろうなっと肩を竦める兄貴。


 道程、本当に色んな意味でのこの長い道程になる苦悩を飲み込み、それを拳に載せてジュンに拳骨して優しく諭す為に更に足を早めて追いかけて行った。

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