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【書籍化・コミカライズ8/29発売!】初夜に自白剤を盛るとは何事か! 悪役令嬢は、洗いざらいすべてをぶちまけた  作者: 六花きい
第一章:グランガルド編 ~初夜に自白剤を盛るとは何事か!~

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43.舞台裏の二人

昨夜22時頃に一話投降しています。

関連話となりますので、読み飛ばしにご注意ください。


(SIDE:ザハド)


 昼か夜かも分からない独房で、拘束されたまま水だけを与えられる。


 肋骨が折れているのだろうか、身体中を殴られ満身創痍の状態で横になること数時間。


 やっとウトウトと眠りかけたところで辺りが騒がしくなり、アシム公爵と共に突然『王の間』へと引っ立てられると、いるはずのないミランダが、何故か全身血塗れで国王不在の玉座にふんぞり返っている。


「殿下、なぜここに……いや、その前に、そのお姿は……?」


 よもや大怪我を負われたのかと心配し、思わずザハドが声を発すると、ミランダは突然歩み寄り、そのままザハドの頬を思い切り平手で打った。


(こ、これはもしや……!)


 以前覗き見した時に漏れ聞いた、かのアルディリア王妃……ミランダの姉も味わったという『闘魂注入』。


 笑いながら、『手を握っても良かったのですが、せっかくなので景気づけです』と、言っていたのを思い出す。


 手の平が頬に触れた瞬間、身体の中を温かいものが駆け巡り、骨や内臓に至る内側の怪我について、随分と回復した気がした。


 とはいえ……満身創痍の状態である自分に、よくもまあ平手打ちを選んだものだと、文句の一つも言いたくなって抗議の目を向けると、「口を開いていいと、言ったかしら?」と脅してくる。


 余計な口をきくなよ?


 仮にも大国の宰相に向かって、平然と圧をかけてくる彼女は、このような緊急時でも通常運転である。


 その後短剣を所望し、何をするつもりだと一瞬青褪めたが、あろうことか兵士の剣で自分の足を貫いた時には、ショックのあまり心臓が止まりそうになった。


 一体何のためにと慄いていると、「私の痛みは幾倍にもなってお前を襲い、苦しめるだろう」と宣い、物々しく手をかざしてくる。


 ああ、なるほど。

 自分に危害を加えたら最後、死の苦しみを味わわせてやると、反乱軍に示したいわけか。


 ……すぐに自身を傷つけるのは悪い癖なので、後で陛下に叱ってもらわなくてはならないが、ここは全力で乗っかってやろう。


 そんなことを考えていると、ミランダが光に包まれながら、それとなく合図を送ってくる。


 ここぞというタイミングで、「ぐわぁぁああッ!」と派手に叫び、痛みで七転八倒している様を表現すべく、全力で床を転げ回ったのだが、いまいちお気に召さなかったようで、最後は嘲るような冷たい目を向けられた挙げ句、小さく溜息までつかれてしまった。



 ***



(SIDE:アシム公爵)


 一体何があったというのか。


 衣服に付いた血は、どう見てもミランダのものとしか思えず、アシム公爵は訝しむような視線を投げた。


 ザハドとのやり取りで初めて加護持ちであることを知り、あまりの事にミランダを凝視していると、彼女は突然アシム公爵に向かってグラスを叩きつけてくる。


 強い目を向けられ、初めは何をしたいのか分からなかったのだが、すぐ後に飛び散ったグラスの破片を自分に向けて蹴り飛ばしてきたため、拾うよう示唆しているのだと気付いた。


 微かに身動ぎ、後ろ手で掴もうとするが、上手く掴むことができない。


 その間にミランダは、何故か勢いよく、頭からワインをかけてくる。


(――――?)


 見えない右目を隠すように、髪の毛がペタリとへばりつく。


 そのまま喉元を掴み、顔を覗き込んできたミランダの額には、じっとりと汗が浮かんでいる。


 赤黒く固まっている為分かりにくいが、血に塗れた胸元には剣で突き刺したような切れ目があり、アシム公爵はどのような想いで彼女がここへ戻ってきたのかを思い至り、顔を歪めた。


「ああ、その苦痛に満ちた顔……素敵ね」


 喉元を掴む手から流れ込んでくる加護(ちから)は、微睡むほどに温かく、最後の戦争で感覚を失った足先まで血が通っていくのを感じる。


 ああ、先程ワインを頭からかけたのは、血が通った右目を気付かれないようにするためか。


 無駄のない彼女の動きに、内心舌を巻いていると、ミランダは少し苦し気に、アシム公爵を睨み付けた。


「もっと苦悶の声を聞かせて?」


 彼女の加護は治癒に関わるもののようだが、適用範囲や使用頻度が限定されているのかもしれない。


 傷が塞がりきっていないのだろうか。

 それとも、加護の力を使いすぎて、自身の治癒が疎かになっているのだろうか。


 胸元からうっすらと染み出るミランダの血に気付き、急いで破片を拾おうと大きく身動(みじろ)ぐと、その動きを不審に思ったのか、後ろに立っていた兵士が手を伸ばしてくる。


 ここで気付かれては水の泡とアシム公爵が青褪めたところで、ミランダが扉口に向かって、苛立ったように持っていた瓶を投げつけた。


 大きな音を立てて瓶が転がり、その場にいた全員の視線が一斉に扉口へと注がれる。


(今だ……!)


 一瞬、大きく身体を斜め後ろに傾けると、すかさず後ろ手で破片を拾い上げ、気付かれないよう手の内にしまいこんだのを確認し、ミランダは声を発した。


「……興が削がれたわ」


 そして、ガルージャの進攻具合をそれとなく確認し、アシム公爵とザハドに伝える。


 拘束されているとはいえ、まだ動ける投降兵やザハドとともに、大部屋で過ごせるようになったのは有難い。


 大部屋の隅に座り、人差し指と中指で先程の破片を器用に挟むと、音を立てないよう慎重に、一本ずつ縄の繊維を切っていく。


 国境に到達するまで、あと四日。


 万が一この監獄から出られれば、自分達にもまだ、出来る事があるかもしれない。







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