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第9話 ミス・ワタナベ

   米国 ニューヨーク南東 約100キロ沖 現地時間 午前七時

 


「(仮)ゴーレム」におこされて目が覚めた。


 いつのまにか眠っていたようだ。


 二階まである縦長のガラスで覆われた操縦席から機内へ明るい光が差しこんでいる。飛行船は北西を向いているようで、大きなガラスの右から入りこむ光のカーテンと反対側にある壁の陰影が印象的だった。


 朝七時にしては太陽が高いと思ったが、高さ3万メートルの山の上にいるのと同じことに気がつく。


 元の世界から連れだされたあとでは、はじめて僕が寝ていたことにも気がついた。機内の一人用テーブルへ右頬を下にして寝ていたようで首が痛い。


 後部左側にある簡易トイレで用を足したが、僕一人だけで本当によかった。用を足したあと簡易トイレを再召喚する。それくらいは融通をきかせてくれるらしい。機体の前も後ろもガラス張りなのは少し落ちつかないが。


 だが、壁のトイレットペーパーのホルダーが備えつけなのは心憎い。昨日もペーパーホルダーを見なければ気がつかなかったに違いない。


 最初、ボンカレーとインスタントコーヒーだけがギャレーにあったのは嫌がらせなのかと疑ったが。本来ならばこの飛行船は何人乗りだったのだろうか。

 そしてトイレはどうしていたんだろうといまさらながらに思う。



 すでに、昨日選んだ戦艦八隻は召喚を決めた順番に召喚され、ニューヨークへ艦首を向けたまま縦一列で停止しているようだ。真珠(パールホワイト)色で統一してある。


 まずは顔を洗い朝食にしよう。


 食事中に民間船が側を通過していると報告を受けたが、何か問題があるのだろうか。



 朝食後に、飛行船を高度5百メートルに下ろし、先頭の船をフランクリン・ルーズベルトに変え、艦隊の周りを二度回ったあと、飛行船を大和に下ろした。そして飛行船を消滅させる。

 

 大和を選んだのは飛行機用のエレベーターがあるからだ。実質的な意味はないが。そして名前の響きのよさである。

 ちなみに大和には副砲が四基あるほうを選んだ。



 どうして戦艦や空母での貨客船事業を渋ったのかその理由がわかった。船の内部が空洞だった。


 エレベーターに近い扉を開けると、船の底まで続く螺旋階段があるだけだった。船の中は外と同じくらいに明るいが、あちこちに扉から船底につながる螺旋階段しかない。

 ()()()の正体である。

 

 エレベーターはきっと動かないだろう。動いたほうが逆に恐ろしい。



 K級軟式飛行船を艦隊とお揃いの真珠(しんじゅ)色で再召喚したあと、高度5百メートルを維持したままルーズベルトの艦橋から百メートルほど横につける。ニューヨークへのパレードの始まりだ。

 十秒もしないうちに速度は時速60キロまで上がった。


 思ったより波飛沫(なみしぶき)が高くあがっている。



 飛行機が艦隊へ向かって飛んできているらしい。


 後部のガラスから見上げながら、「(仮)ゴーレム」に旋回している飛行機へ四十八時間以内のニューヨークへの入港、ニューヨークにいる世界中の報道関係者への会見を要求させた。


 そして幾つかの遣り取りの後、どこの国家にも帰属していないことを伝え、艦隊は僕の名字の「ワタナベ」と呼ばれることが決まった。


 ついでといってはなんだが僕の米国滞在も、入港と記者会見と一緒にして決まるのだが、ある意味こちらのほうが死活問題である。


 再召喚した飛行船には、前回九食分あったボンカレーが七食分しか残っておらず、インスタントコーヒーも減ったままだったからだ。


 水にはまだ余裕があっても空きっ腹を抱えたくはなかった。



 最後に僕が関与した交信から八時間。


 ニューヨークの10キロ沖に(とど)まって返答を待っているのだが、周りを取り囲む船や飛行機の数がどんどん増えてきているようだ。


 入港と記者会見以外には僕が内容に関与しないようにしている。キリがなかった。「(仮)ゴーレム」に対応をまかせていた。


 「(仮)ゴーレム」から、記者会見だけなら今日の夜でもできるが、僕の艦隊の入港は認められないと伝えられる。それどころか艦隊を米国領海内から退去するように要求されているらしい。


 僕の記者会見の信憑(しんぴょう)性を担保するのが艦隊だ。それを「(仮)ゴーレム」に言いふくめる。



 このまま夜になるようなら艦隊を倍にすることを決めて、「カタログ」を召喚した。

次回「(仮)国家元首」


 書きためたものではなく二十四時間以内に書いたものを投稿しているので、誤字脱字だけでなく表現さえもよく変えているのですが、第8話「ナイト・フライヤー」は変更が多すぎたために、今作では意味不明になっているところもあるかと思いますがご了承ください。


 申し訳ありません。



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