第4話 資源の問題
テレビで観た気球大会のようだ。
校庭にぎゅうぎゅう詰めに召喚された飛行機の群れが音もなく空へ上っていく。
戦車で懲りてのことだったが、回転したままのプロペラが風を切る音もない。不思議だ。
聞けば、基本的に「(仮)ゴーレム」というのは、マリアナ海溝から月面まで自由に活動できるらしい。
戦車、飛行機、軍艦に分けて召喚する意味がわからない。
「空飛ぶ円盤ではだめなんだよ」と、申し訳なさそうにする。
よくわからない拘りがあるのがわかっただけだ。
一番最初に召喚した菱の形をしているので菱形戦車が、水柱を上げ水上を時速60キロで疾走しつつ百発百中の大砲を打ちまくり、そのまま砂浜へ上陸後に時速100キロで爆走しながら手を緩めず撃ち続けるのは美学がないらしい。
戦艦や潜水艦も駆逐するから駆逐戦車では困るといわれても困るのはこっちだ。
ドイツが初めて造った戦車ならよいのかと聞くと、噛み合わない遣り取りのあとで、それは水陸両用の戦車ではないことがわかったついでに水陸両用作戦の講義も受ける。
水陸両用の軍用車両を改めていくつか見せてもらったところ、僕が勘違いしていたドイツのA7Vという名の戦車が一番それらしく見えた。
戦車と装甲兵員輸送車とその中間があるらしいが、前回は水陸両用の戦車などは召喚しなかったらしい。
聞けば戦車と装甲兵員輸送車を足して二で割った歩兵戦闘車を態々造った理屈もわからなくはない。
取り外しできる浮き付きの日本製水陸両用戦車は使い勝手が悪そうだった。
「(仮)ゴーレム」としては何の問題もないのだろうが。
ある程度の防御力があればタイヤが付いていてもいいとのこと。
菱形戦車はマリアナ海溝を走り回ったあと、そのまま月面に飛びこんで暴走機関車になれるのに。
タイヤでは迫力が足りないんじゃないか。
この後交渉に入ったが、僕の美学とやらを理解することは諦めて「カタログ」にできることを追加してもらうことにした。
飛行機はヘリコプターも飛行船も召喚できるらしい。
さっき手を離した風船のように飛んでいった飛行機の群れも、普通の飛行機のように滑走路を使って離発着してほしそうだったので、緊急時以外はそうすることになった。
また追加の但し書きになる。
「(仮)ゴーレム」がそれほど凄いものならば僕に世界征服しろということなのかと聞いてみると、召喚できる数と積んでいる弾薬数に耐久力の制限があるので無理だと思うが、やりたければ御自由にということらしい。
制限についても書き加えてもらうことにする。
正直なところ「(仮)ゴーレム」の特性を考えると、サイズよりも大切なことは他にいくらでもあるのではないだろうか。僕と同じ姿形をしながら今までの会話の流れではそう思わざるをえない。
僕は三つの願いの「猿の手」なのか?
「十分の一サイズの模型で軍艦の召喚を始めよう」
そういって、僕は校舎へと歩き出した。
次回「目白の伯父さんに敬意をこめて」