旅の後先、夢の続き
そうして、高瀬という町での取材は終わった。偶然助けた千鶴君の見舞いに時間が掛かってしまった。他にも色々話が集まったが、千鶴君との出会いが心に残っている。
そこで妻の反感を買う事になるとは思わかった。私には子供は居る。それなのに他所の子供を、それも年頃の少女を世話するのもどうなのかと叱られてしまった。
そして、再び千鶴君と会おうとした時、その妻、志保を説得するのに時間が掛かってしまった。
志保は了承する代わりに、高瀬町まで着いて行くと言った。そうして、私は志保と二人で千鶴君に会いに行く事になったのだ。
高瀬町は、青波台から少し離れた場所にある。
これまでも、取材で様々な町を訪れたが、地図を見ると、まだ知らない町は沢山ある。
私達は町に着くと、千鶴君と千晶さんを電話で呼んだ。そして、近くの喫茶店で話す事になった。
「お久し振りですね。」
千鶴君は以前よりも表情が明るくなっていた。時間が彼女の心を癒したのだろうか。
私達は四人並んでテーブルに座った。それぞれ注文をし、志保の前にはアイスコーヒー、私の前にはアイスミルクコーヒー。千鶴君の前にはオレンジジュース、千晶さんの前にはアイスティーが置かれた。
「迷惑ですか?」
「そう、主人が迷惑掛けてなかったか心配だったの。」
「最初は変な人とは思いましたが、色々助けてくれました。ありがとうございます。」
千鶴君はあの後少しずつ学校に通っているようだ。教室にはまだ入れていないようだが、彼女のペースで元の生活に戻ろうとしている。
「そうそう、カメラ買ってもらいましたよ!」
千鶴君は鞄からカメラを取り出した。私と同じ会社の一眼レフのデジタルカメラだった。しかも、最新機種である。
「その型のものは高かったのでないですか?」
「ええ、でも千鶴には必要なものだと思ったから、奮発しました。」
千鶴君はそのカメラで色々撮っている。写真部の活動も続けているそうで良かった。
会計を済ますと、千鶴君は私をある場所に連れて行った。それは、お寺の境内にある墓地だった。そこに千鶴君のお父様のお墓がある。千鶴君はそこに手を合わせた。
「実はあの後色々調べてたんです。父の同級生で在校中に亡くなった方が居ました。その方は女子生徒で、父と親しかったそうです。その方のお墓がここにあるそうです。」
千鶴君はその子のお墓にも手を合わせていた。墓石は古くなっていたが、花が供えられてあった。千鶴君が持って来たものだそうだ。
お寺を出た私達は駅へ向かった。すると、向こうから二人が歩いて来る。千鶴君は手を振っていた。
「千鶴!それとこの人達は?」
「私の知り合いだよ」
二人は高校生で千鶴君の友人だそうだ。私はその二人とも話した。どうやら彼らも興味深い話を持っているらしい。
「それにしても生きながらにして都市伝説呼ばありされるとはね。」
「まぁ、茂らしいと言えばそうだけど。」
私は、彼らの話にすっかり聞き入れてしまった。