三話
エイプリルフール翌日。菜々子のSNSにウェディングドレス姿の私達の写真と共にメッセージが投稿された。『私達結婚します』の一言。案の定コメント欄には『エイプリルフールは昨日だけど』というようなコメントが多く寄せられる。菜々子はそれを見てふっと勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「真美子、知ってる? エイプリルフールの翌日はね、トゥルーエイプリルって言って、真実を言う日なんだよ」
「真実を言う日……」
「まぁ、これもエイプリルフールに出来た嘘だって説あるけど、嘘も信じる人が多ければひっくり返るんだよ。それに、オタクは考察な好きな生き物だからね」
そう言って菜々子は一件のコメントを見せてくれた。トゥルーエイプリルについて熱く語るコメントだ。それに対して別のアカウントが「それ、エイプリルフールに出来た嘘だよ」「ななちゃんのことだから日付間違えてるだけだろ」と反論が飛ぶ。すると菜々子はそのコメントを引用して「トゥルーエイプリルって嘘だったの!? 騙された!」と、驚くような顔文字をつけてSNSに投稿する。
「ふっ……ふふ……見て、まみみ。めっちゃ拡散されてる。オタクの動揺してる顔が目に浮かぶね」
そう言っておかしそうに笑う彼女に釣られて、私も笑う。数時間して、青ざめた顔で飛び込んできたプロデューサーに説明を求められると、彼女はすっとぼけた顔でこう言った。
「えっ。当初の予定通り、ちゃんとやらかしたじゃないですか。炎上もしたし、計画通りじゃないですか?」
と。思った以上に反響があったせいか、プロデューサーはそれ以上は何も言わなかった。やはり彼女は策士だ。