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第4話 家族(前編)

 地球のとある街のはずれに建つ屋敷は山を背にしており、広大な庭を備えている。

 山を背にしているせいか、屋敷の周囲は木々が生い茂っており、竹などの姿までもが見受けられる。


 火でも放とうものならあっという間に燃えてしまうに違いないが、異能力なんてものが存在するようになったこの世界ではそんな常識は役に立たない。


 背にした山を含め、この屋敷、この屋敷に住む者に害意を持って近付いた者は、結界の効果によって即座に昏倒させられ、無力化されてしまうのだ。


 そんな優れた効果を持つ結界に守られたこの屋敷に住む者の名字は久遠(・・)


 戦争が終結して早々にこの土地を買い取って、ただの雑木林だったこの土地を異能力で開拓し、屋敷や庭を全て一から創り上げ、家族と共に住んでいる。

 嘗て魔王城を幾つも創り上げていた久遠(くどう)(あき)にとっては造作もないことだった。



 カーテンでは完全に防ぎきれない朝日に、ベッドの上でグーっと伸びをしながら、秋は何かを思い出したように「あっ」と声を上げた。

 その隣にいる赤髪の美少女は、どうかしたの、とでも言うように秋へと顔を向ける。


「そうだフレイア。そう言えばお前のネックレスと剣、返してなかった。……ほら」


 秋は、顔を向けてくるまではテレビで天気予報を見ていた赤髪の美少女──フレイアに声をかけて、自身が身に着けていた、炎の装飾があしらわれたネックレスと、刀身が赤い剣を白い渦の中から取り出してフレイアに手渡す。


「ん、ありがとう。……でも良いの? 気に入ってたんじゃないの?」


「返すのを忘れるほどには気に入ってたけど、元々お前のだからな。それに、俺がそれを着けてたのは自分の目的を常に意識できるようにって理由からだ。お前がこうしてここにいる以上、もう俺が着けている理由はない」


「ふぅん……まぁ、ありがとう。ネックレスもレーヴァテインも私にとってとても大事なものだから、また私の手元に戻ってきて嬉しいわ」


「……すまなかったな」


「えぇそうね。でもまだ何かあるでしょ?」


 フレイアはネックレスを手の平に乗せたまま秋を見つめ続ける。

 数秒フレイアが何を求めているのかを考え込んだ秋は、やがてハッとした表情になり、ネックレスを手に取ってからフレイアの望みを叶え始めた。


「ん、ありがとねアキ」


 炎の装飾があしらわれたネックレスを首にかけたフレイアは、振り返って微笑んで秋に礼を言う。


「ふふっ、昔を思い出すわね。私がわがまま言って、アキにこのネックレスを買って貰ったのよね」


「あぁ。それから今みたいに、首にかけてくれ、って言われたんだよな」


 その言葉にフレイアが「そうそう、それから──」と返したところで、二人のいる部屋の扉がバターンと乱暴に騒々しく開け放たれた。


「おはよう、お父さんお母さん! ほらお父さん! 朝からお母さんとイチャイチャしてないで、庭に行くわよ! 今日こそあたしが勝つわ!」


「さっき起きたばっかりで眠いんだ」


「だからよ! お父さんが寝起きの今なら私でも掠り傷ぐらいつけられるはずだもの!」


「掠り傷って……勝つつもりないだろ、お前」


「細かいことはいいのよ。さ、行くわよ、早く!」


 少しの問答を繰り広げ、環奈は秋の手を引いてベッドから引き摺り出し、無理矢理連れていく。


「じゃあ私もそろそろ朝御飯を作ろうかしら。それまでには戻ってくるのよ二人とも」


「分かってるわお母さん! ほらお父さん、いい加減自分で歩いて!」


 寝室から出ていく二人を見送ってからフレイアはテレビを消し、ダブルベッドから出て、寝間着から着替え始める。


 晴れた四月の朝は暖かかった。





■□■□





「寝起きのお父さんにも勝てないなんて……」


「自分から突っ込んでる限り無理だって姉貴」


 落ち込む環奈にそう言うのはアグナ。箸が進まない様子の環奈の皿からひょいひょいと幾つもおかずを奪って、躊躇うことなく口に運ぶ。


「いやぁ、今日はいい一日になりそうだわぁ」


「む、人のおかずをとったらダメなのだぞアグナ。すまぬな環奈。代わりに我のをあげるのだ」


 アグナが取ったおかずと同じものを環奈の皿に移すのは黒龍ニグレド。

 自分の娘がやったことだからと自分のおかずを分けることで詫びる。


『近頃世間を賑わしている安土(あんど)研究所が、昨日新たに研究成果を発表しました』


 居間に備え付けられた大きなテレビからそう聞こえてくると、食卓を囲んでいるほとんどの人間がそちらへと目を向けた。


 人工的に生命を造り出そうと励む集団が日夜研究に励んでいる場所が安土研究所だ。そんな研究目的を持っているからだろうか。いつからか動物や魔物などの生命を使った非道と呼ぶべき研究を繰り返していると噂が広まり始めて話題になった。

 そんな注目の的をマスコミが放っておくわけもなく、研究所が何か行動すれば逐一それがテレビで報道されて噂は広がるばかりで、最近では良い話題の種だった。


「まったく、不名誉にもほどがある。非道な実験なんかしてないってのに。科学と魔法が合わさった今だからこそ、アンドロイドと言う夢を実現させるチャンスなんじゃないか。……なぁジェシカ。お前なら分かるだろ?」


「もっちろん。いいよねぇアンドロイド。人間そっくりだけど人間じゃなくて、命令すればその通りに動いてくれてさぁ。……そんで、家政婦アンドロイドに自我が芽生えて人類に反乱するってところまで含めていいよね」


「後半のは別にいらないが、家政婦アンドロイドは暮らしを豊かにしてくれるから、希望があるのなら造らないとダメだ。そこまでできるようになったなら、今度は搭乗可能な人型ロボットとかパワードスーツとかだな。……研究所名はどうしようか。アンドロイドだから安土にしたんだし、岩田(がんだ)研究所とかにしとくか」


 そう、安土研究所は秋が立ち上げた研究所で、研究所の職員は全て魔物の魂を使用して、形を限りなく人間に近付け、簡単な命令をしただけの蘇生生物だ。食事も睡眠も必要なく、昼夜問わず働き続ける人材と言うわけだ。

 ちなみに、報道機関の応対をしているのは特に秋と関わりがあるわけでもない一般人として暮らしている蘇生生物だ。研究所について口外しないようにと命令して、高額の謝礼を渡せば便利な駒となった。


「は? 親父はあの研究所で働いてんのか!?」


「あの研究所を立ち上げたのは俺だが、職員でもなければ所長でもない。ただ立ち上げただけだ。蘇生生物達にやらせれば勝手に研究は進むし、わざわざ俺が働く意味はない」


「なーんだ。ビックリした。結局クソニートなのに変わりはねぇわけだ」


「ダメですよアグナお姉様、お父様のことをそんな風に言ったら。確かにお父様はお母様達みたいに家事もしないでぐーたらしてるだけですけど、色んなところに根を張っていてちゃんと収入はあるんですから」


「あのなクレア。オレは親父が働いてねぇことに文句言ってるわけで、金のことに文句言ってるわけじゃねぇんだわ」


 アグナにクレアと呼ばれた少女は、幼く清楚な顔立ちに、灰色のような銀髪と金色の瞳の少女で、その身に纏う衣服は殆どが白色だ。


「でもお金さえあればそれでいいとも思いませんか?」


「お前、可愛い顔してそんな黒いこと言うなよな……」


「え? えっと……冗談のつもりだったんですけど……」


「冗談には見えなかったよ姉ちゃん」


「そんな、のぶ君まで……!?」


 アグナでけでなく、溺愛する弟にまでそう言われてショックのあまり箸を落とすクレア。きっとその脳内では弟に嫌われてしまったのではないかと言う考えが渦巻いていることだろう。

 クレアにショックを与えたのぶ君──信幸(のぶゆき)は暗めの茶髪から覗かせた黒い瞳を可愛らしく瞬かせながらテレビに視線を送る。早食いの信幸の皿には既に何もない。


「のっぶ、そろそろ戻してあげよ。クレアが遅刻しちゃうかも」


 少ししたところで信幸にそう言うのは、マネキンほどではないが、マネキンに成りきれてしまえそうなほどの白い肌に、作り物のような顔立ちをした少女──アルカ。頭頂部の髪は桃色だが、毛先に向かうに連れて黒のグラデーションがかかっており、右の瞳が金色で、左の瞳が黒色をしている。その髪色のせいでアグナにつけられたあだ名はア○ロ。


 チラリと掛け時計に目をやれば、食事を済ませて登校の準備をする時間を考えて、ギリギリ間に合うかと言ったような具合だ。


 信幸はいつものようにクレアの頭を撫でて正気に戻し、流し台に食器を置いてから自室へと戻る。クレアの懇願するような視線が痛かったが、心の中で謝りながら無視して自室へと戻った。



 信幸達が去ったあと、食卓についているのはクレアだけではなかった。


「ほらアッシュ、いつまで寝惚けてるんですか。早く食べきって支度しないと遅刻しますよ?」


「……うーんー」


「……はぁ……」


 アッシュと呼ばれたのは、アケファロスの息子。その名の通り灰色の髪に、灰色の瞳をした端整な顔立ちの少年だ。椅子の背凭れにもたれて無気力的にだらんとしている。今にも椅子から滑り落ちて地面で泥のように眠ってしまいそうだ。


 アケファロスがそんなアッシュの耳元でフォークとスプーンをぶつけると、当然キンキンと小さく金属音が鳴る。

 飛び上がるように姿勢を正し、パッと目を見開いてアッシュは臨戦態勢のままキョロキョロと辺りを見回す。

 そこには、黙々と食事の手を進めるクレアの姿と、食器を洗う母達の姿があった。


「目が覚めましたかアッシュ?」


「……母さん……そうやって起こすのはやめてくださいって言ってますよね……」


「こうしないといつまでも起きないじゃないですか」


「そうですけど……」


「ほら文句言ってないで、あと三十分しかありませんよ。早く食べて早く準備しないと遅刻ですよ」


「え……」


 顔を青くしたアッシュは急いで椅子に座り、掻き込むように若干冷めた食事を口にし始めた。

長女

名前:環奈

性別:女

年齢:15歳(高1)

誕生日:8/19

父:秋

母:フレイア

容姿:赤髪黒目

────

長男:未登場

────

二女

名前:アグナ

性別:女

年齢:14歳(中3)

誕生日:5/25

父:秋

母:ニグレド

容姿:腰までの黒髪、黒い右目、赤い左目

────

二男

名前:マルス

性別:男

年齢:14歳(中3)

誕生日:7/12

父:秋

母:アルベド

容姿:ボサボサの白髪、黒い左目、赤い右目

────

三男女

名前:アルカ

性別:男と女

年齢:14歳(中3)

誕生日:10/14

父:秋

母:クラエル

容姿:桃色の頭頂部から毛先へ黒いグラデーションがかかった髪、金色の右目、黒色の左目

────

四男

名前:アッシュ

性別:男

年齢:13歳(中2)

誕生日:7/7

父:秋

母:アケファロス

容姿:灰色の髪と瞳

────

四女

名前:美月

性別:女

年齢:13歳(中2)

誕生日:10/29

父:秋

母:セレネ

容姿:赤みがかった黒髪、赤い瞳

────

五女

名前:クレア

性別:女

年齢:13歳(中2)

誕生日:11/18

父:秋

母:ソフィア

容姿:灰色のような銀髪、金色の瞳

────

五男

名前:信幸

性別:男

年齢:13歳(中2)

誕生日:12/12

父:秋

母:ジェシカ

容姿:暗めの茶髪、黒い瞳

────

※名字略

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