第31話 泥沼の底、不可視
連れられて進むのは辛うじて認識できる獣道。なぜ山道を通らずわざわざこんな獣道を進んでいるのか微塵も理解できなかったが、この山がどういった場所なのかを考えると納得できた。
ここ、アリティージ山は危険なモンスターが跋扈している魔境。危険があるだけで立ち入るメリットがないのだから誰も近寄らない。……山道を通らないのではなく、通れないのだ。山道なんてものは存在しないのだから通れるわけがないのである。
そんな山道すらなく人気のない山中に、恐怖心が薄れてきたとは言えど得体の知れない生物と二人きり。屋敷を出てから今までの会話は皆無。
自堕落な生活を送っているという共通点こそあるが、如何せん未知だ。無知だ。
ヒトとか魔物とか妖怪とか関係なく、命ある生物は自身の理解の及ばないものを極端に恐れる。永い時を生きており、それなりに知識のある生物となればなおさらだ。遥か昔から蓄積してきた知識をもってしても欠片すら理解できないなど、恐ろしくてたまらない。
未知であるということは弱点が不明だということ。
それはつまり、殺意などを向けられても抗えないということ。
だから、相手が未知であるということは、相手が一切の抵抗を認めない圧倒的強者であるということに他ならない。
生きるためにも、未知には触れず、未知の存在を避け、安全圏から未知を知らなければ──未知に干渉せず、密かに潜んで観察しなければならないのだ。
だが、それができない。
「……のう、儂はどこに連れて行かれるのだろうか」
「大丈夫だ心配するな。俺はお前に危害を加えるつもりはない。……まぁ、そう言って安心できるのなら苦労しないか」
「…………」
「お前は『安土研究所』って知ってるか?」
「……ふむん。聞いたことはあるのう。動物や魔物を使って人工的に生命を創り出そうとしている組織だと記憶しておる。研究の成果を発表こそするが、どれも意味不明なものばかりで話にならず、研究所の所在も不明、研究員の情報を調べても一切明らかにならず、所長すらもが不明……胡散臭いことだけが明らかで、それ以外に何も分からぬその在り方から、実在する都市伝説などと呼ばれているとか」
「結構しっかり覚えてるんだな」
みずくめがニュースを見ている印象などなく、ゲームをしているか、アニメやバラエティなどの娯楽番組、映画などを見ているかの印象しかなかったために秋は少し驚いた。
「研究に妖怪を使っているとは聞かぬが、何もかもが未知だからのう。覚えておかなければ危ういであろう。……して、それがどうかしたのかえ?」
「今向かってるのがそこだ。……あぁ、お前を実験材料として提供するとかじゃないぞ。実験はもう終わったしな」
「……っ!? ということは生命の創造を実現させたということかの!?」
「まぁ、そうなるな」
「ふむん……?」
歯切れの悪い返答にみずくめは首を傾げた。
獣道を進み、獣道すらなくなった傾斜を進み、洞窟を進み……と辿り着いたのは大空洞の中に建てられた建造物の前。
建造物は清潔感の溢れる真っ白な外観をしており、実験に不純物が混入してしまう、などの不手際を起こしたりはしなさそうな、やや潔癖な印象を受けた。だが、人目を避けるためとは言え、こんな山奥の洞窟の中に建てられていると悪い印象もついてきてしまう。
自動で開く玄関扉にみずくめは「にゅおっ!?」と声をあげる。洞窟内にその奇妙な声はよく響いた。
建物の内部は外観と同じで真っ白だ。数時間もいれば頭がおかしくなってしまいそうなほどに真っ白だった。エントランスで無理やり人型にしたような狼型や梟型、蜥蜴型などの多種多様な魔物が倒れていた。
「これは……」
「俺がここにいるんだから当然だ」
「どういうことかの」
「こいつらに魂はない。分割した俺の意識などがあって漸く動く、謂わば電池式の機械のようなものだ。そもそも、人工生物の創造には魂に干渉できる俺の力が必要なのだから、それがない蘇生生物にはそもそも何もできない」
理解しようと努力したが、みずくめには半分も理解することはできなかった。
糸の切れた操り人形の墓場の如く、死屍累累とした様子で転がる肉塊達。魂がないそうだから、死体と言っても遜色ないだろう。
それらを避けながら通路を進み、厳重そうな大きい扉の前まで連れられてやってきた。二階建ての家屋を台車に乗せて通過させられそうなぐらいには大きい。
側にあったパネルを秋が操作すると、大きい扉は見た目に反して静かに横へとスライドしていった。
「……ほう……これは……なんと言うか……ふむん……」
言葉が出てこない。
開いた扉の奥には24の人型があった。培養槽のような硝子張りの円柱には培養液のような液体が満たされており、そこには22の人型があった。残りの2はものものしい無数の管に繋がれており、培養槽の外にあった。
気付けば隣にいたはずの秋は、管に繋がれた2の内の片方に歩み寄っており、それの胸の中心──人間で言うところの心臓のある部分に触れた。心臓部には『α』の文字が刻まれていた。
すると間も無くして、触れられたそれが目を開けた。
何も知らない黒い瞳は無機質で、黒い髪はただの繊維のようで、衰弱した病人のように白い肌は白紙のようで、みずくめにはとてもそれが生命体には見えなかった。
もう一方の管に繋がれたそれもだ。男女の性別の違いこそあるが、そう大して変わらない容姿をしている。
「アルファ。それがお前の名前だ」
「──アルファ──私の──名前──」
記憶するように、アルファと呼ばれたそれは繰り返して、反復して、反芻する。
目覚めと同時にアルファを繋いでいた管は外れ、アルファは身体の存在を確かめるように動いている。
可聴域にないのかどんな音なのかは聞き取れないが、アルファが言葉を発すると同時に何らかの音が確かに鳴っている。
「あなたは──?」
「俺は久遠秋。お前を創った──まぁ、親のようなものだ」
「私を──どうして──?」
「創りたかったから創った、それだけだ。だからお前がどう生きるかはお前で決めていい。だが、もし自分で決められないのなら決められるまで俺を頼ってくれ。いたずらに生命体を創った俺にはそうする責任があるからな」
「分かり──ました──ありがとう──ございます──よろしく──お願い──します──」
未知の音が邪魔をして、アルファの言葉はひどくたどたどしい。
生まれたての赤ん坊が言葉を喋れたらこんな風にでもなるのだろうか。
「……あぁ。じゃあ、他の奴も順番に起こしていくから、少し眠っていてくれ」
「他の──?」
「お前の兄弟姉妹のようなものだ」
「兄弟──姉妹──」
少し嬉しさを孕んだ呟きを残して、アルファは目を閉じた。まばたきをしたわけではない、故障したわけでもない。眠ったのだ。
「……ありがとう……か……」
アルファが眠ったのを確認すると、秋はアルファの胸部に刻まれた『α』の文字から手を離し、喉元に触れて何らかの力を行使した。
みずくめにはそれが何の力か分からなかった。
魔力でも妖力でも霊力でもない──今まで蓄えてきた知識にない、完全なる未知の力だった。
24の人型が目覚めて自分を自覚していく様子を黙って見届けた。
まだ何にも染まっていない真っ白な状態だからか、殆ど全ての個体がアルファと同じ反応をしていた。違うのは容姿と声ぐらいだった。
現在は全ての個体が、最初見た時と同じ状態にある。
培養液に入っていたものは再び培養液へ、管に繋がれていたものは再び管へ、そして再び眠りについた。
「すまない、待たせたな。じゃあ行こうか」
「別に構わぬ。……それより、次はどこへ向かうのかのう。この短時間で色々とありすぎて、儂は精神的に疲れてしもうた」
「ならちょうどいいな。次は肉体的に疲れてもらうぞ」
「何もちょうどよくないではないか……」
■□■□
飛来する一矢と撃ち抜く一発。
マーガレットが対峙している妖怪の右肩と左肩に、矢と銃弾がそれぞれ一撃ずつ直撃した。
銃弾は貫通していないため体内に残っているのだろう。ならばと無理やり矢を引き抜いたせいで篦口から鏃が抜けてしまえば、鏃が体内に残ってしまい、筋肉の伸縮で傷付いてしまったり、傷口が化膿してしまうかも知れないので無闇に引き抜くこともできない。
「流石人間、卑劣で陰湿だ。遠距離からチクチクネチネチと気持ちの悪い。こんな生き物が正義を謳っているなど、自分としては受け入れ難いな。自分が罪を犯し、お前達がそれを咎める……そうして漸く自分は罪を──立派な罪科を背負えるのだ。それが、悪人寄りの陰湿な者に咎められでもすれば、それだけ正義の炎は霞んでしまい、自分が背負える罪科も軽くなってしまう。……許容し難いぞ、人間」
正義の執行方法が正々堂々としたものでなければ、それだけ悪への報いが軽くなる。
正義を為す者が正々堂々という正義の象徴とも言える手段を取らず、悪人が使用するような陰湿な手法を取っている──それは要するに、正義の執行者が悪の道に片足を踏み入れているという状況だ。そんな中途半端な正義が悪の手法で悪を裁いたとしても、それに満足感を得たい被害者と第三者は不満を残す。
それは言ってしまえば、大罪人が処刑されず、それどころか刑期を終えてそのまま釈放されたようなもの。……悪が裁かれなかった、正義に罪が裁かれなかったということだ。
つまり、罪科を以て力を得るこの妖怪──カルマは、純然たる正義の裁きを受けられず、そのせいで満足に罪科を力に変換できなくなり、存分に力を発揮できないのである。
正義の体現者とでも言うべき甘く優しい灰頭の子供を憎悪するカルマが、そんなのを許せるわけがなかった。
「何をわけの分からないことを……」
「だがまぁ、そうだな。くすんだ正義が真っ当に見えてしまうほどに自分が禁忌に染まれば良いだけか。寧ろ、そうすればそうするほど、あの灰頭のガキに地獄を見せられる。……クククッ、魔神だか邪神だか悪神だかが自分に味方しているのやも知れないな!」
悪寒……邪気とでも言うのだろうか。自身を取り巻くだけだった嫌な空気が鎧から僅かに露出した肌を撫でた。撫でられただけなのに、背中を押されたかのように体が吹っ飛んだ。
炭のような刀身がカルマの腕に突き立つ。煤けたような体躯に炭のような刀身。煤けただけの鉄よりも炭の方が脆いように、マーガレットの剣ではカルマの皮膚に傷を付けることはできなかった。
ならばと右手を柄から離し、空中に出現させた白い渦──アイテムボックスから拳銃を取り出し、銃口をカルマの腹部に押し当て、引き金を引いた。くぐもったような破裂音がして、腹部から銃口を離すと白煙が上がるものの、銃弾がカルマの腹部を貫通しているなんてことはなく、射出した銃弾がぽろりとこぼれ落ちた。
(なぜだ……さっきは効いていたはずなのに……)
そんな一瞬の戸惑いが生んだ隙をカルマは見逃さなかった。
「まずは剣からだ」
突き立てられたままの刀身を素手で握り、そのままへし折る。パキンと小気味好い音を立てて、刀身が割れた硝子のように地面に散乱した。形状も相まって、本物の炭のようだ。
「その拳銃とやらは弾丸がなければ攻撃できないのだろう? 嘗てこの町で生きていた者達が一撃放つごとに苦々しそうな表情をしていたから知っている」
「クッ……!」
「次は拳銃……と見せかけて、左腕だ」
てっきり拳銃を握る右手を拳銃ごと握り潰されるのかと思ったが、その予想に反して、眼前の妖怪は破砕された剣の柄を握っているだけの左腕を狙うと言った。
何か強烈な嫌な予感がして、僅かに残った刀身の破片がパラパラと落ちるカルマの右手を避けるために、後ろに跳んだ。追撃を警戒するが、これまた予想に反して追撃はこなかった。ただ、手のひらについた破片をパッパッと払っているだけだ。
遊ばれている、嬲られている、甚振られている、そう思い至るのは難しいことじゃなかった。
苦しませようとしているんだ、苦しむ姿を見て悦に浸りたいんだろう。
(私の銃弾は防いだ癖に……)
背後から飛来する矢も銃弾も全て一身に受けて無反応を貫いている。
お前達の攻撃は肉体に影響を与えているが効いてはいないんだぞ、と言外に伝え、多少の絶望を与えるためだろう。
悔しいことに、それには確かな効果があった。
カルマの肩の向こうに見える援軍には、動揺が見られた。効いていないぞ、このまま続けても意味ないんじゃないか、そんなざわめきが聞こえてくるようだった。
そして、他ならないマーガレットもそうだった。『魔剣』と呼ばれる特殊な効果の付与された剣を小枝を折るかのように破壊され、抵抗できなくなった自分はこれから痛め付けられるのだと思わされれば、暗い気分にもなる。
だけど、援軍は──仲間は遠くにだけいるわけじゃない。
「剣も拳銃も効かないってのなら、拳はどうだッ……?」
すぐ真横で土を蹴る音がしたと思えば、そんな言葉が聞こえてきた。
「ジャンク!」
「おォッ!?」
駆け抜け、そのままカルマの腹部に一発の打撃を放つ。それだけでカルマは腹を押さえて後ろのよろめき、目玉をひんむいて口から呻き声と涎を垂らす。
助走がついていたとは言え、その一撃はあまりにも効果があるように見えた。
「俺の流派には『破壊の技法』ってのがあってな、これはそんなかでも内部破壊に特化した技なんだ。今のは【内壊拳】っつって打撃が当たる直前に、緊張していた筋肉を弛緩させて脱力して衝撃を体内にぶちかます技だ。どんだけ皮膚が硬くても、関係無しにダメージを与えられるからお前みたいなのを相手にする時には重宝している。……もっとも、直撃の直前に脱力しているせいで加減が難しくて、こっちにも相応の反動はあるがな」
ジャンクはそう言って赤く腫れ上がった手を擦る。
いかに相手の防御力を無視してダメージを与えられるからと言って、力の籠っていない拳で硬いものを殴ったりすれば拳が傷付くのは当たり前だ。
「ご、ごご、くこ、ほほ、ぉ、ぉォッ……!」
「好機っ!」
腹を抱えて笑うように呻くカルマへ、やや遅れてやってきたグリンが追い打ちをかけようと、掬い上げるようなアッパーをかますため、駆けてきた勢いを踏み潰すようにして踏み込んだ。
その瞬間カルマの姿が消えた。そして、次の瞬間にはカルマはグリンの側面へと移動しており、そのまま突き上げるようなアッパーを返した。
掬い上げた水が地面に落ちるように、さながら流体のように宙を舞ってグリンは地面に倒れ伏す。暫く戦闘に復帰できないであろうことは泡を吹いている姿を見れば分かった。
「……ったく、窮鼠猫を噛む、窮寇は追うこと勿れ、っていつも言ってんのに……アホ弟子が……」
「た、助かったぞ、ジャンク。ところで、ライリーとティアネーはどうした?」
「勢いよく立ち上がったティアネーが立ち眩みを起こして倒れたから、ライリーがその世話をしている」
「……はは、そうか……なら私とジャンクでなんとかしてこの場を切り抜けなければならないというわけか。予備の剣があるから戦えはするが、さて、どうしたものか……」
白い渦に手を入れ、渦中から一振りの剣を取り出し構えてマーガレットは言う。
「大丈夫だろ。有象無象はまだ怯んでるが、強者と馬鹿は動き始めてるからな」
親指で後方を差すジャンク。釣られてチラリと後ろに視線をやれば、自分とジャンク、カルマを取り囲むだけだった周囲のモンスター達に異変が起きていた。弱者を多数で甚振り、愉悦を感じているようだった下卑た視線がすっかり変わっており、あちこちへ向けられていた。
耳を澄ませば、声が幾つも聞こえてくる。モンスターの悲鳴や断末魔だったり、人間の裂帛の声など。その中には聞き覚えのある声も幾つかあった。
「さぁ、ほら、どんどん来なさい! あたしが相手になるわ!」
「姉さん、力の消耗を抑えるためにもあんまりそれ使わない方がいいと思うよ?」
「大丈夫よ、このぐらいじゃあたしは力尽きないもの! それに、あたしなんかよりあんたの方が遥かに危ない状態でしょうが。自分の心配をしなさい!」
「ああ、ちょっと!」
後方でモンスター達が次々と宙を舞う。道でも作るかのように、モンスターを吹き飛ばしている何者かが一直線に迫ってくる。
警戒などしない。それどころか、安心すらできる。とても心強い援軍が来たのが分かったから。
「匂うな……」
その呟きに、視線を前へと戻す。
眼前の妖怪──カルマは先ほど変わらない姿勢で立っていた。だと言うのに、その表情には影が射しているように見え、危険性を伝える黄色い瞳が黒い皮膚から浮かび上がるように輝いている。
自分の心臓が早鐘を打っているのが手に取るように分かった。
真後ろで鈍い音がした。心臓が跳ね上がり、それに伴ってピョンと体も跳ねた。それと同時に振り返る。
地面に転がっていたのは、目が額にしかない坊主頭の子供。身の丈ほどもある鉄球にでもぶつかったのか、全身がひしゃげているように見える。
顔を上げると、そのそばには自慢気な表情をした環奈が立っていた。
周囲を取り囲むモンスター達の輪を真っ直ぐに突き抜けてきたことは、環奈の後ろにぽっかり空いた道を見れば一目瞭然だった。
その道を、アッシュと有栖川セーラ、あと、面識のない二人が進んできている。あまりにも堂々と進むものだから、モンスター達は呆然とそれを見つめている。
「来たわよ、マーガレットさん! ……まったく、この組織も大概頭おかしいわよね、モンスターの大群の中にマーガレットさん達だけ送り込むなんて! 天城彼汰っていったっけ? 今度あったら文句言ってやるわ!」
「天城支部長は私達のことを、できるだけ壊したくない道具としか思っていないような人だからな……ってそれよりも、どうしてわざわざ危険地帯に来たんだ!? お前達に何かあったらクd……アキに合わせる顔がないんだが!?」
「ふふん、平気よ、大丈夫。お父さんには勝てないけど、そんじょそこらのモンスターに負ける気なんてないもの!」
胸を張って環奈は言う。それを見て何を言っても無駄だと判断したマーガレットは、環奈からカルマへと視線を移した。
カルマは肩を──全身を震わせていた。怯えているようには見えない。恐らく武者震いの類いだろう。視線を辿れば、環奈の隣に立つアッシュがいた。
マーガレットの脳裏には『生意気な灰頭を……』というカルマの呟きが過っており、この状況からそれがアッシュなのだと察することができた。
「あ、ああ、ああああああああッ!!」
自身を抱くようにして、震えを押さえるようにして、カルマは血走った目でアッシュだけを見つめる。明白すぎるその敵意と害意のこもった執着心は、もはや恋情にすら思える。
「あなたは……ッ!」
「ア、ハハハハハハハ! まさか、まさか、まさか! こんなに早く再会できるとは思わなかったッ! 昨日ぶりだな、灰色の! 会いたかった、ブチブチに、ズタズタに、グチャグチャにしてやりたくて堪らなかった!」
素直に「殺す」と言わないあたりから殺害の意思は感じられない。射殺せてしまえそうなほど鋭い視線ではないのは、その不殺の意思の表れだろう。
「……ああ……っ! 嗚呼……っ! 逢いたかった──」
愛するように、哀するように、黄色い瞳を爛々と、言葉を溢れさせた。




