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10,二度目の流行病

 



 また新たな病気がケスマン国で流行った。前回同様に致死率が高く大変危険なものだった。


 朝早く姉はスカビオサ様のいる町の診療所へと向かう為に身支度をする。私は何としても姉を感染リスクの高い診療所に行ってもらいたくなかった。


 姉の部屋の扉を開き使用人に髪を結ってもらう姉に「行かないで下さい」と伝えた。鏡越しに姉の表情が見えた。


「……それは無理なお願い何だなー」


 いつものふざけた調子だったが、真剣さがあった。本気で姉を止めないと、訊かない気がする。姉はふざけた様に見えて実のところ自分の信念を決して曲げない真っ直ぐな人だ。


「……ダメです。死にますよ?」


「……かもねー。でも、ここで何もしなかったら、死んでも死に切れない。サツキ。姉ちゃんね。ずっと反省してた。サツキが前に流行病で死に掛けた時に私にはそれを救えなかった。でも、今は違う。この為に私は今まで頑張ってきた。だから行かせて?」


(姉様は幼い頃の事を未だに気にしているのですか……私は気にしていないのに……)


「ダメです。私に後ろめたい気持ちがあるのなら、私の願いを訊いて下さい」


「頑固だねー」


「姉様も頑固です」


「うわっ。思わぬ共通点っ!? 私達似てないって言われるのに、こんなところが似ててもねぇ」


「ええ。姉様が譲れば良いのです。そしたら全く似てません」


「……譲れないよ。これはちょっと母様達には内緒何だけど、サツキが病で苦しんでいた時に私は部屋の中には入っちゃダメって言われたから部屋の扉のところにへばり付いていたの」


「……何となく想像は付きます」


「その時にサツキがうなされてる声が聞こえたの。誰かっ助けてって。いてもたっても居られなくて、部屋に入ったの。そしたら、サツキ苦しんでて手を誰かを求める様に伸ばしていたんだ。手を握ったらサツキの表情が少し和らいだ」


(……やはりあの時の姉様は幻ではありませんでしたか)


「その時私は誰かに寄り添ってあげたいと思ったの。だから……行くね」


「……分かりました。どうしても行くと言うならば、私は姉様ともう口を利きません。それでも良いのなら行って下さい」


「うわっ。それ一番堪えるわっ。……行ってくるよ」


 姉は部屋を出た。


(……やはり止められないのですね。姉様何て大嫌いです)







 あれからひと月が経った。姉はずっと城に帰って来ない。


(家族にうつさない様に気を使っているのでしょうか……。それとも、忙しくて帰ってくる余裕もないのでしょうか……。ちゃんとご飯は食べているのでしょうか……)


 部屋で出来る筋トレを行いながら私はこのひと月をやり過ごした。今は腹筋をしている最中だ。扉の下の隙間から紙がスッと差し出された。


(両親からの手紙でしょうか?)


 紙を読んでみると姉からだった。慌てて扉を開けると、そこには……マスクをしたグラジオラス様が画用紙を片手に待ち構えていた。


 画用紙には[サツキ! アセビからの伝言だ! それを読め!]と書いてある。


 手紙には


[この手紙をグラちゃんに託すね。

 サツキに頼みたい事があるの。

 今回の病に効く新薬が無事に完成したんだけどトラブルが発生してね。

 材料が敵対している貴族の医師にバレて、その材料を買い占められたんだ。

 ここにその貴族の情報を書いておくからどうにかして欲しいの。

 サツキにしか任せれない。

 頼っちゃってごめんね]


 と書かれていた。


(頼っても良いのですよ。私は姉様の為になるならば頑張ります)


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