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短編集

学園バトルもの世界の日常風景


「げ……」

「おはよう!」


 朝。気だるげな気持ちで目覚めて、学校に登校した俺を校門で出迎えたのは、俺の苦手な奴だった。

 学ランの詰襟まできっちりと閉めたそいつは、腕に『風紀』と金地で縫われた青い腕章を安全ピンでとめている。

 朝だってのに、活力溢れた表情で、大きな声を発して挨拶をしてくる。

 こっちは低血圧何だがな……。ぼやきたくなるが、相手は風紀委員。学園の実力者だ。

 逆らうわけにもいかず、仕方無しに挨拶を返した。


「ぉハヨザマース」

「うん、おはよう! だが声が小さいぞ! もっと元気よく!」


 その風紀委員の脇をすり抜け、通用門を通り抜けようとしたところで、気が付いた。


「持ち物検査です! ご協力ください!」

「マジかよ……だりーな」


 風紀委員の面々は、毎日の朝の挨拶活動だけでなく、こうして時たま持ち物検査をやっている。

 友人などそれに引っ掛かり、エロ本を没収されて偉い目にあっていた。曰く「学舎に何足るものを持ち込んでいるのか!」だと。

 別にいーじゃねーか、俺たちは健全な男子高校生なんだし。

 その件で、貴重なソムリエが一人減ってしまうという実害を受けている俺を含む面々は、そんな愚痴の一つも溢したくはなる。

 しかし、風紀委員に面と向かって楯突くほどの勇気は持てない。


「お預かりします」

「っち……しゃーねーな。早くしてくれよ」


 だから、こうして悪態をつくようなセリフを吐きつつも、実際には素直に協力して、鞄の中身を門の横に設置された長机に提出する他ない。

 ゴト、ドサドサ

 教科書やノート等、必要なものの他に、何か余計なものを持ち込んでいないかをチェックされる。

 風紀委員の真面目どもは、隅々まで調べあげるので、隠そうとしても大体はばれる。


「何だこれは! 没収! 没収!!」

「え~!?」


 今も、隣で持ち物を検査された女子が、化粧品を没収されている。


「……どうやら、禁止物の持ち込みはされていないようですね」

「そりゃ、どーも」


 運良く、今日は何も没収されることはなかった。

 ウチの学校では、スマホはともかく他のIT機器は持ち込みは禁止だからな。今日はス○ッチ持ってこなくてよかったぜ。

 あれ没収されたら叶わねぇ。内心そう思いながら、鞄のなかに再び中身を詰め直す。

 その様子を、俺の荷物検査をした風紀委員のメガネが睨みつけるように見ていた。

 たしか、隣のクラスの奴だ。

 大方、俺の持ち物を没収して手柄をあげようとしてたんだろうが、残念だったな? メガネくん。

 勝ち誇るような表情で、俺は毎日持ってきているをベルトに差す。

 それを見て、メガネの風紀委員が何とも言えない表情を浮かべた。

 おいおい、いくら俺がチャラそうな見た目をしてるっていっても、一応剣道部なんだから、刀くらいもってくるよ。当然だろ?

 見れば、隣の女子生徒──たしかラクロス部に入ってるクラスの女子も、鋼鉄製・・・のラケットを袋にしまっているところだった。

 下駄箱に向かって歩き始めると、次の生徒が検査のために、鞄の中から荷物を取り出していた。


「……いや、おかしいだろ」


 何となく声の方に顔を向けると、メガネの風紀委員が特殊鋼で出来た茶筅片手に呟いていた。その茶筅は鋭い刃を朝の光に煌めかせていた。

 何がおかしいのだろうか、茶道部なんだから、戦うために道具がいるだろうに。


 不思議に思いながらも、俺は下駄箱に向かって歩いていった。

メガネは転生者です。

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