砂糖水
隣の台で食べていたこの部活の女子マネージャー諸川朱が頬を赤らめなが立っていた。
コミュ力のない俺と泉はチラリとキヨにすべてを託す。
しょうがなくため息をついたキヨは諸川に話し掛ける。
「こんなクズの集まりになんか用?」
好戦的だなぁ、託して大丈夫なのか…?俺が言うのもなんだが。
「えーと、そのウエハース交換してみない?せっかくの最後の夕食だしね!」
「まじか!ありがとう!でなに交換する?ウエハース何味がいい?せっかくだし全部あげよっか!」
「いやぁ、流石に全部は食べきれないよ〜。」
なんか露骨に嫌な顔されてたぞ今…
キヨ鈍いからなぁ…
自分の顔に自身がなく、真剣に告白されても嘘告だと思いこんでたことが過去に何度かあって女の子を泣かしたこともあったらしいし…
そして実際キヨはモテる。ただ絡んでる友達が俺と泉しかいないのと、本人は気づいてないがラノベ主人公といい勝負の鈍さが相まり、今ではあまり告白されなくなってる。
本人は気づいてないが鈍感系ラノベ主人公の末路を辿ってる気がする。
歯がゆすぎるんだよ!くっつけ!
「じゃあ焼いた出来立て風のウエハースあげる。よっ!と。」
器用にトングでウエハースを3枚挟んで持ってる皿に投げ入れた。
「あっ、ありがとう。」
諸川が隣の台に皿を置き直してきて、フルーツの缶詰を持ってきてくれた。
「じゃあ、皆で食べてね。ウエハースありがと!」
ポニーテールの髪を少したなびかせ、早足で自分の台に戻る。
「朱、物好きだね〜。」
「誰なの?ね〜?吐きなさいよ〜!」
そんな楽しげな会話を小耳に挟みながら当の本人を伺っても、ウエハースでつみ木をやってる始末だ。
若干呆れながらもいつも通りの日常に少し安心と喜びを感じ、さっきもらった缶詰の中のフルーツのカスと砂糖水のまじった少しの幸せの汁啜りながら焼け焦げたウエハースを見つめた。