なにも考えてなさそうで考えてるフリが得意な男子高校生の日常
血肉が焼ける独特の匂い。顔中が熱気と匂いに包まれる。
「あぁ…俺の肉が…」
無作為に、なんの躊躇いもなく、さも鷹のように、鳶のように、掻っ攫っていく。それを頬張る姿はまるで腹をすかした獣のようだ。
取られた部位はもも肉のようだ。
そう、おわかりのように今海でのBBQの最中なのだ。
決してエグい惨殺胸糞シーンではない。
R指定も入れてない。
日常系ラノベでは必ず起こる海でキャッキャウフフな海のイベントを楽しんだ後肝試しが行われる前にする例のあれだ、言うなれば肝試し召喚の儀式でもある。
ちなみにこのような夢物語は現実にあるにはあるのだが、自分の身の回りで経験するかと言えば、自分が輪廻転生しない限り不可能だ。
常識的に考えてクラス共に部活でも孤立化していて周りの女子から
「山田君友達いないのかな…」
「朱ぇ〜、友達になってあげなよ〜」
「え〜。」
とか言う会話が聞こえてくるのだ。「え〜。」ってなんだよ…否定しないあたりちょっと希望はあるのかと思っちゃうだろっ!
そんなどうでもいい事を考えつつ網の上に残された残りの食材を確認した。
案の定彼らは遠慮なくもも肉を奪ったこと然り、残りの肉も平らげていた。残っていたのは黒焦げになってる玉ねぎだけだった。
ちくしょう…なんで俺だけ串から落ちた炭みたいなの食わなきゃいけねえんだよ…
その玉ねぎは少し苦く、そして玉ねぎらしくないカリッとして水気のないものだった。