義妹の教育開始
「な、な、あなた、なにを言って…」
「私本気ですわ」
「いやいや、本気も何も、婚約者はもう私と決まってますし、側室になりたいと言うことなの?」
「うん、それでもかまいません!あの方のお側にいられるなら…」
あまりの状況に目が回ってきた。
一体なにを言えばこんなことに…?
アリスンは立ち上がり、私の前に進み出る。
真剣な、強い視線で私を見つめ、
頭を勢いよく下げた。
私は驚きで固まってしまった。
「シャーロット様お願いします!私を、王子さまにふさわしい令嬢にしてください!」
「あ、あなた、それで側室になれるとは限らないのですわよ?王家に嫁入りするものは殿下の意思だけでは決められませんし…」
いくら側室だろうと妾だろうと、王室に近づくためには周りの審査が入る。
今は元平民とはいえ侯爵家令嬢だから家柄的には問題はないかもしれないが、今のアリスンの振る舞いでは妾としてさえ認められるかわからない。
そもそも仮にも侯爵家令嬢であるアリスンを妾として召し上げることは難しい。平民と言う立場で特別な技量やらがあれば話しは変わってくるかもしれないが…
まあどちらにせよ、殿下にどうこう以前の問題の、貴族令嬢としての未熟さはなんとかする必要がある。
「それでも、可能性はあるもん!私頑張りますから!シャーロット様なら間違いないと王子さまにも言われたし!」
アリスンはこちらににじりよる。
私はおののいてじりじり後ずさる。
アリスンが私に頭を下げるなどはじめての事態だ。どうして良いかわからない。
殿下、なに言ったの本当に…
「お願いします!」
「…わ、わかりましたわ!でも、とびきり厳しくしますわよ。それでもと言うのなら、私があなたを完璧な令嬢にしてみせる!」
私がやけっぱちで叫ぶと、アリスンはぱあっと顔を輝かせて私にまた頭を下げた。
「よろしくお願いします!先生!」
そして、アリスンのしごきを開始した。
「まずはその言葉遣いですわ。王子さま、ではなく、殿下。あるよね、ではなく、ありますわ、ありますわよね、言われたしではなく、言われましたし!そんなに難しくないわ。あと、身分の高いお方とお会いするときは、できる限りこちらから出向くか、無理でも立ち上がってお出迎えすること!声をこちらから気安くかけない、お話を遮ったりしない!」
その他、気になっていたことをあれこれ言い、とりあえず今日のところは帰ることにした。
「アリスン、明日から、覚悟なさいね」
私は、なぜだかやる気になっていた。
これからは、ビシビシ厳しくいかせてもらいますから!