頭を抱える義姉
「アリスン、良いかしら?」
「どうぞ、シャーロット様」
「…」
次の日、内心ビクビクしながらアリスンのもとを訪れたが、お姉さま呼びでないと言うことは少なからず昨日のことを根にもっているのだろう。
お父様と話し合ったものの、殿下と話をして納得したというアリスンの様子を確認して、変更が必要であればまた作戦をたて直そうということになった。
作戦続行である。
しかしこの調子では、私に頼ろうとしてくれるのだろうか?
ため息をつきたくなるがグッとのみ込み、アリスンの部屋に入る。
「ごきげんようシャーロット様!」
「ごきげんよう、アリスン…ってあなた…」
「…?なにか?」
思ったより明るい声に安心したのも一瞬、アリスンが目も当てられない状況になってると気づいた私は、思わずあきれた声を出してしまったが、アリスンは気づいていない、気づいていないようだ…
アリスンはドロワーズのみの格好で、ベッドにうつ伏せで寝転びながら本を読んでいた。まあそれは、自室だから許そう。
問題は…
きょとんとした表情のアリスンは手にしていたクッキーに目をやり、私の方に差し出した。
「あ、食べる?」
「要りませんわよ!」
そしてアリスンのベッドに置いてあるクッキーの皿を回収し、テーブルに置く。
「ベッドの上でものを食べてはいけません!」
「シャーロット様ってばお堅いわね~。宿舎と言ったら夜の秘密のパーティ、パーティで食べるのはお菓子と相場が決まってるのに。」
「今は夕方!一人でパーティーしてると言うのあなたは!?」
ガミガミ言うと、アリスンは口を尖らせながらも素直にベッドから下り、椅子に座り直した。
流石に紅茶はテーブルにセットされていたようだ。
にっこりと私に笑いかけてくる。
「では、シャーロット様、一緒にパーティしましょ!」
開いた口が塞がらない。
殿下…あなたは一体なにをアリスンに吹き込んだの?
なにを言えばこんなに友好的なアリスンが出来上がるの!?
私は何も言えず、楽しそうにパクパククッキーを食べるアリスンを見つめ、ため息をついた。
とりあえず、ベッドの上のくずを片付けて、後で私の侍女に掃除してもらおう。
私は特待生なので、自分の侍女を連れている。
宿舎内の清掃は、清掃員もいるが各自の部屋は各自で掃除をすることになっている。
本当ならアリスンにやらせなくてはいけないが、今は、まあ良いだろう。
そう、説教が先よ!
アリスンと同じテーブルに席につき、淑女たるもの、ごろごろと寝転がりながらベッドでお菓子を食べるなど行儀が悪い、と言う説教を行った。
本当は人が来たらごろ寝してないで起きて応対しなさいともいってやりたかったが、招かれざる客であることが露呈するのではと恐れて言わずにおいた。
アリスンは説教が効いていないのか、にこにこした顔を崩さず楽しそうだった…
なんなの…先が思いやられる…
思わず頭を抱えそうになった私に、アリスンは言った。
なんの脈絡もなく。昨日の話すらまだできていない中。唐突に。嬉しそうに。キラキラとした眼差しで。
「シャーロット様、私、王子さまが好きになってしまったの。だから私を、完璧な令嬢にしてほしいの」
――――今度こそ、本当に頭を抱えた。
あれ?いまこの瞬間、ベッドで寝転がりながらかっぱえびせんを食べている人がいるよ?
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明日はおやすみ。