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パーティ開始

「王太子ジョシュア殿下、婚約者のミュラー侯爵令嬢シャーロット様のおなり~」


呼ばれてから殿下と共に会場へ入る。

皆がこちらを見ている中で殿下と歩くのはいつまで経っても慣れない…まあ、まだ両手で数えられるくらしいか経験がないだけだけれど。

内心の緊張を悟られないため、余裕をみせるように回りを見回しながら口角を上げる。

表情筋が鍛えられているわ…

先に会場入りしていたアリスンと目が合う。

アリスンは私と目が合うとぎこちなく笑って小さく手を振った。

アリスンは殿下が好きだから、婚約者として私が殿下の隣にいるのは複雑な気持ちもあるのだろう。

私は微笑み返すだけにとどめ、王妃様のもとへ。



衆人環視のなか王妃様にお祝いの言葉を述べる。

私たちが最後に入場するのに、何故か挨拶は最初なのだ。

(陛下の挨拶は除くけれど)

その間またされていた貴族たちが優雅に挨拶の列をなす。

私たちはそのままホールへ向かい、ダンス。


やっぱり殿下と踊るのは緊張するけど、ダンスは好きだ。

子どもの頃よくレナートを練習相手にして踊っていた。

あの頃はそれっぽくくるくる回っているだけでも楽しかった。

大きくなるとそういう機会は減ってしまったけど、社交会で会ったときは、どちらともなく一度は踊ることが暗黙の了解となっていた。

まぁ、殿下つきになってからは殿下が他の護衛と居るときしか叶わなくなってしまったけれど。

ダンスが好きなのは、そういう昔の楽しかった気持ちがまだ残っているからかもしれない。



殿下は躍りながら辺りを見回していた。

アリスンを探しているのだろう。

目の前の、私から逸らされた深い蒼の瞳と揺れる黒髪、整った鼻梁に形よい唇を眺める。

ため息をつきたくなるほど完璧な造形だ。

対する私は地味なこげ茶色の瞳に、黒髪。

今は飾り立てているからそこまで見劣りしないはずだけど、今殿下が見ているのがアリスンだとわかってしまう私としては、自分の悪くないはずの容姿さえも厭わしくなる。

殿下が好きな訳じゃないのにこういう心境になるのは何でかしら?


殿下の視線が一定になったのでそちらを見やると、若い紳士たちに囲まれたアリスンが見つけた。

あの子ってば、やりますわね…

今日のアリスンは美しい令嬢たちがひしめき合うこの場でも目立つ華やかさだから、よもや当然と言えるのかも。

そろそろ、最初の曲が終わる。

私は殿下に声をかけた。


「殿下、私は少し休みますわ。アリスンと踊って頂けます?あの子、今日のためにとても練習しましたの」


曲が終わった頃を見計らって、驚いた表情の殿下をアリスンのもとへ連れていった。


「あっシャーロット様!」


困り顔だったアリスンが私を見つけてパッと顔を明るくした。


集っていた男性陣が私の姿を認めてさっと場所を空ける。


殿下の婚約者になってからこういう扱いを受けることが多くなった。天狗にならない私を誉めてほしい。…なってないよね?

私はアリスンに微笑みかける。


「アリスン、殿下が一曲お相手してくださるそうよ」


アリスンはポッとほほを染める。

殿下はなにも言わず、私から離れアリスンの前に跪く。

胸に手を当て、熱のこもった眼差しでアリスンを見つめる。


「アリスン嬢、私と踊ってはもらえないか?」


殿下が差し出した手に、アリスンは優雅に指を添えた。


「もちろんでございますわ」

ここでようやく殿下の名前が判明 笑

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