義母追放へのカウントダウン
「アリスンの方はどうだ?順調かい?」
「ええ、殿下にも目をかけて頂いてやる気を出してますわ。先生方も驚いてます」
「そうか、それは良かった」
本当は目をかけている以上の感情がありそうだけど、余計な心配をかけないよう黙っておく。
「そうですわお父様、殿下にパーティのお誘いを頂いたのです。アリスンもとのことでしたので、エスコートをお願いしてもよろしいですか?」
「おお、そうか…時期的に王妃様の誕生パーティか。お前がそういうならば大分教育プログラムは進んだようだね。もちろんだとも」
「ええ、お願いいたしますね」
その後は、お父様と打ち合わせをした。
ジュディスの罪を暴き、侯爵家から離縁する計画。
本来ならここで生活することなど許されないのだ、あの女は。
アリスンの件がなければもっと早く片をつけられたのにできなかった。
どう見てもお馬鹿なのになぜあの女がここまでできたかの真相は明らかになって、しかも既に終わっている。
いわゆる黒幕は―――――そう、もう死んでいたから。
つまらない話だ。その男が生きていれば八つ裂きにしてやったものを…。
後は、アリスンをどうにか説得しなくては。
最終的には、殿下の力を借りることも考えておかないと。
あの女がいなくても問題ないアリスンになってくれれば、私のミッションはクリア。
あの女と離れて3ヶ月ほど経つ。
今のところ、精神不安定だったりといった感じはないが、同じ部屋で眠るとたまにうなされていることがある。
まだ心にあの女がいるのだろうか。
しれっと追い出して居なくなったことも黙ったままにしておく案もあったのだが、アリスンにも真実を知らせる方が良いのではないかと言うことで、いつ決行するかを慎重に見極めているところだった。
せっかく良い調子でこちらを信用してくれ始めているようなのに、迂闊に行動して信頼を失ってしまっては叶わない。
あの女をどう思っているかアリスンに聞ければ良いのだが…。
とりあえず今はドレスの手配をしよう。
お父様情報でアリスンの部屋にはあの女が入り浸って荷物置きになっているそうなので、アリスンのドレスを確認することは諦め、私のドレスをアリスンのサイズに仕立て直すことにする。
自分の部屋の鍵を開けて、物色に入った。
世間話の体でアリスンへドレスを渡す話をしたら、殿下が私にはドレスを、アリスンにアクセサリーを贈ろうと言ってくださった。
間に合うのか疑問だったが、その日のうちに王室御用達のお針子達に採寸され、さすがやはり侯爵家とは格が違うなぁと変なところで感心する。
ま、うちではシーズンごとに新調するかしないかを決めているので、うちの専属のお針子達は普段はあの女で採寸と縫製の練習をしている。だから速さはなくとも技術はなかなかのものと自負している。別に張り合っているわけではない。
殿下は、パーティの準備などにも関わっているらしくあれから来ていないが、レナートが通りがかりにしたり顔で微笑みながら手を振ってきたので、今回のドレスの件は恐らくレナートに婚約者をないがしろにするなとでも言われたのかもしれない。
殿下とアリスンは私もいるアリスンの部屋でしか話すことはないので、他の人達に二人のあの雰囲気は伝わってないはずだが、義理とはいえ血の繋がっている姉妹の姉と婚約しておきながらほっといて妹に構うというのは、端から見たら眉をひそめる事項であることは間違いない。
公の場ではきちんと役割を果たすつもりでいてくれるとは思うが、当事者の私や第3者のレナートにわかるくらいだからレナートも心配してくれているのだろう。
レナートもとことん心配性だわ。
私としてはあの完璧王子の殿下が珍しいと思い、良い観察対象になりつつあるけれど。
私の方もアリスンに渡すドレスを決め、採寸を済ませ、細かい注文をつけてと忙しく動き回っていた。
さらにアリスンにダンスのレッスンをつけさせなくては。
ほぼ問題はないのだが、初めての経験で緊張して動けない可能性がある。
それはもう経験を積むか練習するしかない。
というわけでパーティ作法を教え込まれながらダンスの練習に明け暮れるアリスン。
忙しくしていると日々があっという間に過ぎ去っていく。
私はパーティの当日を迎えようとしていた。




