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パーティへの誘い

「シャーリー…」

「…」

「シャーリー?大丈夫?」

「はっ、あ、ああレナート。」


考え事をしてぼうっとしていたらしい。

ふと我に返ると、レナートがじっとこちらを見つめていた。

隣を見上げると榛色の瞳と目が合う。

レナートは私が見ていた方を見やると、少し険しい顔で私に向き直る。


「…辛くない?」

「え?ええ、大丈夫よ。殿下もアリスンも、楽しそうで良かったわ」

「君は?」

「私?まあ、いい気持ちはしないけれど仕方ないわ。お互いに好きみたいだし。でも、どうなるのかしら…あのふたり」


私が二人に目をやると、レナートも苦い顔で二人を見る。

レナートがそんな顔する必要ないのに。


「…わからない。でも後で、あいつには婚約者ほったらかすなって釘さしとくよ」


レナートは殿下と付き合いが長いので、公の場でない限りはかなり気安く接することができるみたい。

私は安心してもらおうとレナートに微笑みかけた。


「平気よ、気にしないで」

「いや、気にするって…」


そうこそこそと小声で話しているところへ、侍女がティーセットの準備を終えやって来た。

テーブルがセットされ、ようやく四人で席につく。


「そうだシャーロット、今日は今度のパーティの誘いに来たんだよ。良い機会だからアリスンも一緒に来てもらえると嬉しいと思ってね」

「ええ、アリスンも良いですわね?」

「えー!私も良いのですか?」

「もちろんだとも」

「キャーうれしい!」


全身で喜びを表現するアリスンに、作法がどうのとか水を指すのは止めておいた。



まぁ、経験も積まないといけないから良い機会だと思う。

初回が王室主催の王妃様の誕生パーティらしいのは荷が重いかもしれないが、どうにかなるだろう。

私は婚約者として参加せざるを得ないから、前々から話しは聞いていたけど、アリスンまで誘われるとは正直思っていなかった。

逆に招待客が多いぶん、今のアリスンが多少やらかしてもそれほど目立たないだろうと踏んでいる。昔のアリスンなら話が出た瞬間に一蹴コースだけれど。

私のエスコートは殿下にしていただくとして、アリスンはどうするかしら。

お父様にお願いするか…




殿下たちが帰ったあとも浮かれているアリスンに自習を言い付けた。

私は屋敷に帰り、お父様に相談し、アリスンのエスコートの予定を取り付けることにする。

後はドレスも用意した方がいいかしら。

アリスンの持っているドレスは少々どころじゃなく派手でセンスがない。

アリスンの趣味なのか、あの女の趣味なのか…。

まあ仕立てるにしても時間がないし、ましなものを選ぶか私のものを手を入れてアリスンが着れるように直すか。

ちなみに自分のドレスは今シーズン用に用意はあるので全く問題ない。



考えながら廊下を歩いていると、屋敷の中で一番会いたくない人に会ってしまった。


「あーら、アリスンかとおもったらあなたなの?」


全く挨拶もきちんとできないのかしら。

肩が丸出し、胸元も微妙に見えそうになってなんだか品のない着こなしになっているけれど、恥ずかしくないのかしら。


「ごきげんよう。アリスンは宿舎でしっかり学んでおりますよ。ご心配なく」


あの女は私を見て顔をしかめる。失礼な…。


「何であなたは帰れるのにアリスンは帰れないのよ?」

「私は特待生として帰宅を認められておりますので」

「アリスンだって同じ侯爵令嬢なのよ?帰れるはずじゃない。あなたがまたなにか余計なことをしてるんでしょ!」

「特待生というのは家柄ではなく学業で認められますので、入ったばかりの新入生には難しいですわね」

「だから、あなただって侯爵令嬢だから特待生なんでしょ!まあ良いわ、早くアリスンが帰れるように手配しなさい。良いわね」


話が全く噛み合わない。残るのは疲労感だけね。

キーキーと言いたいことだけ言って文字通りドスドスと廊下を踏みしめながら部屋に帰っていくあの女を見送り、お父様の書斎に行く。


「お父様、シャーロットです」

「おお、お帰り」


部屋にはいるとお父様は席を立ち、ソファへ私を誘った。


「最近ジュディスがあれこれうるさくてな。今まではアリスンが欲しがるとか言うから多少は多目に見てたが、今は居ないんだから浪費はさせんと言ったらまた発狂した」


お父様は半分笑いながら私に私が不在の間の様子を面白おかしく話してくれる。


「私はあなたの妻ですわよ!とか言うから、妻らしいことをしてから言ってくれと言ったら痴女になってな」

「お、お父様…」


想像するとおかしい。


「半裸になって流し目をしてくるもんだから、私はもっとスレンダー体型が好み、あとそういう面で妻らしいことは全く求めていないからと言ったらまた発狂して出ていった」

「まあ、だから先ほどドレスがずり落ちていたのですわね。てっきり太りすぎて腕が入らなかったのかと…」


まあ、あの五段くらいありそうなお腹で誘惑されても誰も欲情すまい。そういうのが好きな人もいるらしいが…

私はこう見えて耳年増なのだ。交流の場によく出ていれば嫌でもそういう話しは入ってくる。まあ、自分の経験はさておき人の話しは面白くて好きなのだけれど。

それにしてもお父様優しすぎない?もっとグサッとくる一言をお見舞いしてあげたら良いのに。


「ま、この手のやり取りはもう五回目位なんだがな」

「うふふ、まあ、もうすぐそれも終わりですわ」

「ああ。証拠はもう揃った。証人もようやく見つかった。あとは―――」

「追い出すだけですわね!」



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