補習のクソ
塩野浩司と原田翔悟は並んで歩き、一緒に教室へ入ろうとする。
教室は3階の角の部屋だ。
塩野浩司がドアを開ける。
2人の視界には窓際の席に座りタバコをふかしているスーツ姿、正確にはワイシャツとタイトスカートを着たメガネの女性がいた。
浩司「おはようキューちゃん早いねー」
ハラショー「ざーす」 (おはようございますの略)
キューちゃんと呼ばれた女性 本名 木山優 年齢 ??歳 二十代とも四十代とも見える。 胸がでかいし足が細い つまりエロい。
木山「木 山 先 生 だ」
浩司「おはようございます!木山先生」
ハラショー「校内禁煙っスよ木山先生」
木山「バレなきゃルールを破った事にはならんさ、スゥ、フゥーーー」
浩司「俺らにバレてるんですけど…?」
木山「後でいいことしてやるから黙っておけ」
木山優は塩野浩司たちのほうを見るわけでもなく外のほうを向き、更にタバコをふかしながらそう言った。
浩司「い、いいことですか先生!」
ハラショー「やったな浩司、俺はパス」
木山「おやー?原田はいいのかー?」
木山優は口元をニヤリとさせて言った。
ハラショー「どうせろくでもないことだろうよ忘れたのか?」
浩司「そうだった…」
原田翔悟と塩野浩司は先月の終業式の事を思い出していた。
~~~~回想~~~~~~
一定以上の彩度と筆記の点数に達しないと合格する事が出来ない「国家資格ルーカス三級試験」に学年7クラスの中で2人だけ落ちていた2人は木山に呼び出された。
木山「お前ら2人明日から補習な」
浩司「え⁈なんでですか!他のみんなは夏休みなのに!」
ハラショー「バカかお前、俺らはルーカス落ちたからだろうがよ」
木山「そういうお前もバカに含まれるんだがな」
ハラショー「俺はこいつと違って筆記は満点でした」
木山「受かってないんだからどっちも同じだ」
浩司「そうだぞバーカ」
ハラショー「んだと?」
浩司「ああん?」
2人の顔が今にもキスしそうなくらい近づきお互い睨み合う。その2人の後頭部を木山が叩く。
「パァン」
原田翔悟と塩野浩司はキスをした。2人ともファーストキスだ。正確にはぶつかっただけだ。
浩司「ぶぇ!」
ハラショー「おぇ…」
木山「仲良くなったところで補習開始な」
浩司「今からですか?でも俺ら体操着じゃないですよ?」
木山「あん?服なんざどうにでもなる。そうだな、濡れたら困るもんだけ今渡しときな」
ハラショー「…わかりました」
原田翔悟は制服のポケットから財布と携帯を渡す。
塩野浩司も少し遅れて財布と携帯とワイヤレスイヤホンを渡す。
浩司「でも先生、なんで濡れたら困るもんなんです?」
ハラショー「確かに」
木山「おねぇさんが今からいいことしてあげるからよ」
木山優は外見と一致した喋り方をする。
少し顔が赤らむ2人。
浩司「い、いいことって何処でですかね?」
木山「こ こ で よ」
またもとても女性的な言い方をする木山優
ハラショー「い、今からですか⁈」
木山「そ、じゃあ行ってらっしゃい」
ニコリと木山優は笑う
ここで塩野浩司と原田翔悟は気がつく2人の周りを目が痛くなるようなピンク色の線が高速回転しまるで魔法陣のようなものに囲まれている事に気がつく。
次の瞬間職員室の床であった場所が抜ける。
塩野浩司と原田翔悟は万有引力の法則に従い落ちる。
浩司&ハラショー「ワァァァァァァァァァァァァァァ
そこは何処かの上空である事を2人は認識した。
叫びながら2人は落ちてきた方向すなわち上を無意識に見ると木山優が穴を覗き手を振りながら穴を閉じた。
20秒ほど2人は叫びながら落ちると下方に職員室で見たものと同じような円が現れ2人は吸い込まれる。
2人はまた空へと飛ばされていた。しかし今度は次第に減速していく。2人は上へと向かっていた。減速が完了したと同時に2人は自分たちが都立中央近場高校のプール上空10メートル程にいる事が分かった。
今度は下は落ちていく。しかし落ちていく中で自分たちがプールのふちめがけて落ちてく事に気がつく。
浩司&ハラショー「あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ
水でない所にこのまま落ちれば死ぬそう感じた2人はなぜか抱き合い叫びながらコンクリートめがけて落ちていく。
木山「あ、やべ」
一瞬で2人の落下地点に円を作りプール中央付近に円を縦にやや水面を向くように作る。
2人はそのまま円に吸い込まれるとほぼ同時に水に叩きつけられる。ウォータースライダーで着水するよりも遥かに大きな水しぶきが上がりそれを木山優はタバコをふかしながら眺める。
塩野浩司と原田翔悟がどざえもんになっているのを確認するとピンクのロープのようなものを一瞬で作り上げ2人めがけて振るう。2人を一緒に縛り上げると腰を入れて引く。
木山優は近くまで引き寄せると初めに塩野浩司をプールのふちにあげ、寝転ばせる。その隣に原田翔悟を引き上げて置く。
浩司「ゲホ、ガハ!」
塩野浩司は口と鼻に入った水を吐き出す。
浩司「あ゛、死ぬかと思った…ハァ、ハァ」
ハラショー「ゲホォ!」
次に原田翔悟も水を吐き出す。
ハラショー「ゼェ、ハァ」
木山「お疲れさん、どうだい?補習の感想は」
木山優はタバコをくわえつつ2人を見おろす。
ハラショー「ざっけんなよ!こんなの何処が補習なんだよ!」
木山「うーん、確かにお前は違ったな。」
木山「だが塩野は今回の補習が気に入ったみたいだけどな」
ハラショー「はぁ?」
原田翔悟が塩野浩司を見る。塩野浩司の頭部上半分だけが真っ青になっており、ツルピカであった。
浩司「いや、キューちゃん俺もうこんなの受けたくないけど…」
ハラショー「ぶぁっはははははははは
原田翔悟は堪え切れなくなり大声で笑いだした。
木山「塩野お前自分の頭見てみろ」
木山は微笑みながらそう言った。
浩司「あたまぁ?」
何が何かわからない塩野浩司は頭頂部へ手を置く。
自分にあるはずの髪が無く、まだ濡れているため冷たい感触とともにペトリと音がなる。
浩司「ん⁈」
急いでプール方へ向かいまだ揺れている水面で確認する。頭部の横には髪があるものの青い頭部の上半分は丸く、まるでカッパのようであった。原田翔悟はまだ腹を抱えて笑っている。
浩司「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁああ!」
叫ぶと塩野浩司の体から青い煙が全身から吹き出る。
ハラショー「ハゲてんだよw」
原田翔悟は笑いつつ喋る。
浩司「うるせぇぇぇぇえ!」
塩野浩司はまた青い煙を吐き出す。
パァン
木山優が手を鳴らし大きく音を出す。
原田翔悟は笑うのをやめ木山優を見る。
塩野浩司は我に返り木山優を見る。
木山「よくやった塩野、お前は合格だ。」
塩野「え?まじで?」
ハラショー「なんでこのハゲが合格なんですか?」
原田翔悟は不満げな顔をする。
木山「いいか原田、こいつはとっさにいままでうっすらとしか出ていなかった色をここまで鮮やかに変化させた。さらには落下時に頭部を守らなくてはと感じたんだろうな防御膜とヘルメットを生成した上でお前を守るように落下してきた。おそらくあのままコンクリートへ落下したとしてもお前の命だけは助かっただろうな。」
ハラショー「...じゃあよ、なんで俺は色が出なかったんだ?」
木山「それは今回の補習がお前にあっていなかっただけさ、悔やむことじゃないよ」
ハラショー「でもよ...」
木山「そんなに気にするな!明日からおねえさんがもっといいことしてやるよ」
浩司「まぁまぁ、俺が優秀だっただけだってお前が落ち込むことはねぇ」
塩野浩司はドヤ顔で原田翔悟に話しかける。
木山「塩野、やはりお前はバカだ。」
浩司「なんで!?」
木山「今回は命の危機を感じてようやく搾りかすを集めただけなんだよだから頭部しか守られていないし防御膜も水に落ちただけで吹き飛んでいる。普段からそれくらい出せるようになりな!」
浩司「は、はい!」
木山「原田!お前もこんなハゲに負けるんじゃないよ!」
ハラショー「は、はい!」
木山「二人とも返事が小さい!」
浩司&ハラショー「はいぃぃぃいい!!!!」
~~~~回想終了~~~~
浩司「なんてことあったなぁ...」
ハラショー「あれから俺は南極でカラオケさせられたし...」
浩司「俺は世界のあらゆる動物に追われたし」
ハラショー「お前はハゲが1時間で戻ったのはよかったんじゃないか?w」
浩司「お前だってまつ毛が凍ってた時は爆笑だったけどなw」
木山「はいはい、懐かしい思い出はそこまでにしな」
浩司「懐かしいったって昨日までやってたじゃんかよ」
ハラショー「そうだぜ木山先生、てか火山でも歌ったしもう歌うところねーよ。もういいんじゃねーの?」
木山「そうだ、補習は今日で終わりだ」
浩司「え?マジで!」
ハラショー「やったぜ!!」
木山「今日の補習は私に一撃入れることだ」
そういうと塩野浩司と原田翔悟は肩を落とす。
浩司「いやーキューちゃんそれはないって」
木山「木 山 先 生」
ハラショー「それはないぜ木山先生、俺らを世界各地に飛ばしたみたいに逃げられたら手も足もでねーよ」
浩司「そうだよキュ...木山先生」
木山「私のワープは今回は使わん。それから右手も使わん。これくらいハンデがあればいいだろう?」
ハラショー「なるほど、それくらいなら...」
浩司「うーん...」
木山「じゃあ制限時間は夕方5時まで、場所は校舎内。用意スタート」
木山優は言うが早いか窓から飛び出しピンクの鞭を作り出すと校舎の柱を縛りターザンロープのようにして姿を消していった。
浩司「んなっ..」
ハラショー「だりいな...」
塩野浩司は唖然とし、原田翔悟はめんどくさそうな顔をする。
唐突な展開に二人は顔を見合わせるのであった。
づづく