かけがえのない光
去年の秋に書いた超短編を、加筆修正したものです。タイトルも変えました。ラジオ短編賞へ応募しています。
星を観ていると、ロマンチックな気分になった。
なぜなら、何億光年も離れた星の光はもうなくなってしまった死んだ星の残骸の可能性もあるからだ。
皮肉だが、何だかユニークに思えた。
目に見える世界だけが、真実だとしたら私の置かれた環境は耐え難いものだった。
幼稚園から小学校6年間、私は、存在を無視されていた。熱心にクラスメートの和の中に入れようとした教師もいたが、徒労に終わった。
むしろ「仲間外れはやめましょう」と学級会で取り上げられるとなんだか悲しい気持ちになった。
いやきっと惨めだったのだ。
なんで、存在を無視され軽い扱いだったかそんな難しいことわかりやしない。むしろ分かりたくなかった。
運動も、勉強も人並みの能力はなかった。
人付き合いにいたっては、最低だったかもしれない。どんなところが最低かって?
人の良いところは見付けない癖に、人の欠点を見付けて得意になっていた。
他人が顔色を変えてくれるのが、面白かった。私のことを意識しているって。
心がいびつだった。
人は孤独を知らなければ、悩みも少ないかもしれない。
でも、一度優しさや愛情を知ってしまうと、それがなくては生きがたくなってゆく。
私に変わるきっかけをくれた友人がいる。粘り強く向きあってくれた。
その友から学んだのは何か優れた能力なんてなくても、生きているだけで誰かに影響を与えていること、笑ってても、心が泣いてる人がいること。数えきれないことを教わった。
命ある限り、どんな幸せが待っているのかはわからない。奴の口癖だ。
そう言っていた親友は、二十歳で逝った。初めて喪失感を知った。
星を観る。今は不思議な気持ちになる。友人が空のどこかにいる気がして。
やはりセンチメンタルな気持ちになってしまう。
死んだ星の光が私に届くのなら、逆に奴に私が今幸せに暮らしていると伝わりますように。
「あなた、身体が冷えてしまうわ。早くお部屋に入って下さいな」
愛する妻の声がする。私は冷たい空気を深く吸って、灯りがともる我が家に戻った。
読んで下さって、ありがとうございます。