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これで解決!ヘタレイケメンの治し方  作者: 奈瀬朋樹
はじまり
6/40

05話 5年の誤差

「あらもうこんな時間? 夕食作らないと」


時計を確認したらもう19時で、カーテンが閉まっていたとはいえ日没に気付けなかったのは失策だ。


「すみません長居しを過ぎました。帰りますね」

「えっ? 真守帰っちゃうの?」

「もう遅いからな。大輔、明日はちゃんと登校して、お前の友達紹介してくれよ」


この何気ない台詞に何故か大輔が挙動不審になり、目もバタフライの如く泳ぎまくっている。


「……………いや、えっと、進学でバラけたから、どうだろう」


「??? それでも校内に知り合いくらいはいるだろ? 地元な…って苦しい苦しい! 美緒、後ろから襟首引っ張るな!」

「私が玄関まで送ってあげる。兄さんは夕食の手伝いを」


そう言って美緒がズンズン進みだした所で、彩さんが立ち塞がる。


「真守く~ん、折角だから夕食も一緒にどう? すぐに用意するし、何なら外食で…、あうっ!」


美緒の肘鉄がまた横っ腹にめり込み、彩さんが蹲ってしまった。

ひでぇ。


「それはまた今度、行くわよ」


結局、引き摺られながらの強制退場となりました。



   ◇   ◇   ◇



「美緒、今日はありがとな。また学校で」


改めて玄関でお礼を言ってから靴を履いている時、また襟首を掴まれて振り返ると、思いっ切り凝視されてしまった。


「…………………………」

「あの、何でしょうか?」


「市ヶ谷真守って、こんな人間だった?」


おおう、結構な物言い分だな。けど美緒の表情に悪意は感じられず、本当に疑問に思っているらしい。それに美緒はもう女子高生というお年頃で、旧友といえど異性を警戒するのは自然な事だ。


「成長期の5年は大きいし、引っ越しばかりで色んな物を見てきたから…。大体、美緒や大輔の方が変わっただろ」


この意見に美緒は無反応というか、色々考えている感じだ。

まぁ5年ぶりだし、しょうがないか。


「呼び止めてごめんなさい。帰り道分かる? もう暗いし、久々でしょう」

「それなら大丈夫。大通りの方向は憶えてるし、携帯の地図アプリもあるから。まだ買ったばっかりで慣れてないけど」


引っ越しばかりで同級生とすぐ別れるからずっと必要性を感じなかったが、1人暮らしで携帯なしは駄目だと、強制的に買わされてしまったのだ。ずっと避けてきた代物だけに、今でも持て余している感じだ。


「そう、あと興味本位で庭に行かない事。ウロウロされると警備会社から連絡がきて面倒だから」


「そんな失礼な真似しないって」


この即答に、美緒が値踏みするかの様な視線を向けてくる。


「……驚かないのね」

「いや、家の大きさに関係なく、勝手に徘徊は失礼だろ」


もう高校生になった訳で、多少の分別はあるつもりだ。

それに相手が嫌がる事を率先してやる気は毛頭ない。


「…………………………携帯番号教えて。兄さんに伝えたい」

「そういえば教えてなかったな」


なので携帯を差し出したら、意外にもお互いの連絡先を交換する事になった。美緒は警戒心が強そうだから、俺の番号を聞いて終わりだと思ったのに。


「ふーん、ココとは逆方向ね」

「前に住んでいた場所の最寄り駅を起点にして、お手頃なアパートを探したらそこになったんだよ。この辺りは一軒家がメインの住宅街だから」


ついでに住所も教えたから、おおよその場所が把握できたらしい。俺のアパートは駅から徒歩10分の物件で、佐藤家とは正反対の場所になっている。


「じゃあ、また明日」

「うん、大輔にもよろしく」


そう伝えてから佐藤家を出て、5年ぶりの再会が幕を閉じたのである。



   ◇   ◇   ◇



ただ大輔と再会できたらなーって思い付きだけで戻って来たけど、予想以上の歓迎をされちゃったなぁ。大輔達の成長云々について聞くタイミングを逃しちゃったけど、まぁ別にいっか。それにまた今度って約束もしたし、また佐藤家に行く……。


あの豪邸に、また足を運ぶのか。


さっき夕食に誘われたが、もし残っていたら、フランス料理といった難易度の高い料理がポンポン出てきて、家政婦や料理人が出現して、上級階級食事マナー講座が始まっていたのかもしれない。



不安だ。



今までの出来事を省みて、駅前の商店街の立ち寄り、マナーに関する書籍・お菓子詰め合わせ(低カロリー)を買っておきました。そして築20年の安アパートに到着して、失笑が漏れてしまう。外観は悪くないし、中もリフォーム済みで綺麗なんだけどなぁ。そんなワンルームな自宅に戻ってから、あえて非常食のカップラーメンを食べました。


うんっ、お湯を注ぐだけのこの安っぽい味最高! 豪邸に居たせいで気持ちがふわふわしていたけど、これで意識が庶民レベルに戻せた。インスタント様々である。それからは買ったマナー本を読みながら親に入学式の電話連絡をした後、大輔からSNS連絡がきていた事に気付いた。



―【無題(3)】―――――――――――――――――――――――――――――――

 大輔:大輔です。真守、このアドレスでいい?


 真守:問題ない。再開できて嬉しいぞ。

 大輔:僕もだよ! 今日はとっても楽しくて、また会えて嬉しかったよ真守!

 真守:お、おう。それは良かった。


   ~ 1時間くらい雑談 ~


 美緒:24時、2人とも寝なさい。

 大輔:あっ、ほんとだ。

 真守:美緒、まさかずっと俺達の会話見てたの?

 美緒:たまに眺めていただけ。

 大輔:じゃあ真守、続きは明日でいい?

 真守:ああ、また明日な。

 大輔:分かった。因みに真守は何時に家出るの?

 真守:7時20分。駅到着は10分後くらい。

 大輔:分かった。じゃあね真守、おやすみ。

 真守:おう、おやすみ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



美緒の奴、いるなら反応してくれよ。確かによく見たら部屋人数が3になってるけど、下ネタ系の話題をしなくて助かった。因みに大輔との会話はしょーもない世間話だったけど、男同士の会話を女子に見られていたと思うと、無性に恥ずかしい。


はぁ……、もう疲れたから寝よう。


あと外出時間を聞かれたから、どうやら駅で合流後に一緒に登校みたいだ。そんな事を考えながら明日の準備を済ませて就寝した。だから、失念してしまったのである。


佐藤家(お金持ち)の行動力を。

SNSっぽい表現を入れてみました。スマホでは改行で見辛いかもしれませんが、ご了承いただければ幸いです。

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