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これで解決!ヘタレイケメンの治し方  作者: 奈瀬朋樹
エピローグ
38/40

36話 事の顛末

「お見舞いに来たぞ大輔、本当に大丈夫なのか?」


「うん、もう大丈夫だよ。来てくれてありがとう真守。木葉さん・大月さんも」

「佐藤君が無事で本当に良かったです」

「確かに元気そうで何よりだけど……、何この豪邸? 格差社会? ア●ノミクス?」


縮こまった2人の反応が痛い程よく分かる。


俺も最初はそうだったし、大月さんなんて佐藤家を見た瞬間に帰ろうとしたからなぁ。大輔が無事退院したとの連絡が昨日あったので3人でお見舞いにやって来て、こんなやり取りを佐藤家の玄関でしていたら、彩さんがやってきた。


「お見舞いに来てくれてありがとう、真守君。それに木葉さんに大月さんよね。話は子供達から聞いているわ~。まさか美緒にこんな可愛いお友達がいたなんてね~」


そんな心から嬉しそうな反応に2人が照れながら挨拶をする中、俺は彩さんの姿にちょっと驚いていた。


「彩さん、髪切ったんですね。とても似合っていますよ」

「うふふふふ、ありがとう真守く~ん」


肩に掛かるセミショートがバッサリ切られているけど、この髪型、何処かで見た様な…。それに病院に駆け付けた一昨日の彩さんは以前までと同じセミショートで、今は土曜の朝だから、つまり大輔の看病で忙しかった筈の昨日の合間に切った事になる。


美容室の予約日だったとしても、普通キャンセルするよな?

そんな不可解な行為に疑問を感じていたら、彩さんが俺の疑問に気付いて。


「病院で真守君から事の顛末を説明してもらった後、学校から電話があったのよ。生徒が窓から落ちたとなれば当然よね~。だから事件性がないかの確認を含めて、落ち着いたらお話しをって連絡があったの。息子さんの友達の噂との関係性もあるかって件も含めてね~」


「本当ですか!?」


ヤバい。


所詮はただの噂だから多少広めた所で先生が一々気にする訳ないって見解だったけど、ここまで大事になってしまった以上、最悪俺の親が呼び出される可能性がある。そんな事態に蒼ざめていたら、彩さんが優しく抱き付いてきた。


「安心して真守君、先生方とは昨日お話して、ぜ~んぶ解決させたからね~」

「でも、どうやって?」


「うふふふふ。この件は早く終わらせた方がいいと思ったから〝事情は息子達から聞いているので、明日の金曜夕方に学校に伺って、全てご説明します〟って伝えたの。急いで病院に駆け付けたのに、当の大輔がピンピンだったしね~」


「あ、あははははは。確かに大輔は軽い打ち身だけで、ほぼ無傷でしたね」


ド派手に自動車に落下したけど、(むし)ろそれは幸運だった。


お蔭で衝撃が軽減されて、気を失ったのも軽い脳震盪というオチで、病院の精密検査でも全て問題なしだったので、念のため1日入院という呆気ない結果になったのだ。


「それから入院に必要な物を取りに行く為に一旦家に帰った時、真守君の説明に出てきた山葉さん家に連絡して、一芝居打つことにしたの。大輔と同じ中学だったから、連絡先がすぐ分かって助かったわ~」


「山葉さん? それ本当ですか?」


「ええ、沢山謝ってくれた後、快く協力してもらったわよ~。〝立ち眩みで落ちそうになった山葉さんを助けようとした大輔が、代わり落ちちゃった〟って事にする為に」


成程。

確かに事故なら仕方がないって事にできる。


「真守君の噂についても聞かれたけど、あの写真は他校との交流会の帰りで、引き留められ中の現場って説明しておいたわ~。悪評も大輔に嫉妬した女子が、騒いだだけなんじゃないかって事でね。山葉さんの名前は勿論伏せたわよ~」


「それで先生達は納得してくれたんですか? 特に〝俺が美人と一緒にタクシーに乗り込む写真〟については」


結局この美人は俺の親戚って事にしたけど、ハッキリ言って説得力がない。正体は変装した美緒だからバラせないし、だけどいくら話し合っても代案が思い付かなかったので、親戚で押し通すしかなかったのだ。


「ふっふっふっ、大丈夫よ~。彩さんはちゃ~んと2つの切り札を用意したからね~」


自慢げな様子で、その切り札とやらが出てきた。


「佐藤家の玄関前写真と、美緒の変装衣装ですか?」


玄関の写真は大輔が俺を抱えている絵だけど、一体?


「この写真はね、我が家の防犯カメラの記録写真よ。右下に日時が記載されていて、これこそが9時過ぎに解散した証であり、夜遊びをしていない証拠よ~」


流石は豪邸、こんな記録まであるとは。時間は21時32分と表記、更に噂写真のファイル名称に撮った日時(21時10分)情報があったので、これで夜遊びをしていない事が証明されている。


「じゃあ、その変装衣装は?」


まさかこの美人が美緒って説明したのか? 確かにそれはアウトじゃないけど、それはそれで問題というか、そもそもそんな説明をしても説得力がない訳で、逆に胡散臭くなりそうですけど。


「うふふふふふ、この美人は真守君の親戚じゃなく、私こと佐藤彩って事にしたの~」


「ええっ!? って、じゃあ髪を切ったのは?」


「この写真と同じにする為よ~。学校に行く前に美容室でバッサリとね~。子供の夜遊びを見つけた親が連れ帰るのも変じゃないものね~。あと真守君の知人って嘘を付いたのも、こ~んな若作りな服装のお母さんってバレるのが恥ずかしかったって理由にしておいたから~」


「いやー、普通に似合うと思いますけど」


「えー、ほんとにぃ? スカートがこ~んなに短くて胸元もパックリなのに? 昔の服でもう無理かな~って思っていたけど、じゃあ今度着てみようかしら~」


なんてゆーか、母親って凄いなぁ。


「市ヶ谷、話は終わった?」

「ああごめん。俺と彩さんだけで話して」


どうやらみんな気を遣って黙ってくれていた様だ。


「真守は母さんと仲いいよね」

「ですね。今も抱き付いていますし」

「マザコン?」


「違う! それに彩さんは俺の母親じゃないから!」


「え~、私は真守君も息子同然って思ってるわよ~。旦那は海外でつまらないし、でも浮気は駄目だし、じゃあ間を取って真守君とじゃれようかな~って」


「その間に俺を挟まないで下さいっ!」


全く、彩さんはどこまで本気なのか全然分からない。


「あと佐藤のお母さん、不躾ながら1つ気になる事があるので質問させて下さい」

「いいわよ~。どうぞ~」


この後に大月さんが携帯を出して、とある画像を見せてくれた。

大輔が落下して人間の跡がくっきりと残った、無惨な廃車写真を。


「この車、どうなりますか?」

「うわ~、初めて見たけど、もう酷過ぎて逆に面白いわね~」


「ギャグみたいに綺麗に残った人型、横で泣く持ち主の先生。市ヶ谷達が救急車で病院に行った後に撮って、ネットに上げたら昨日のアクセスランキング1位になっちゃった」


すぐに自分の携帯で確認したけど、マジで拡散していて、面白サイトとかで掲載されちゃってるけど、いいのかこれ?


てゆーか、『損害賠償おいくら万円?』ってツッコミが沢山あるんだけど。

確かに保険云々があるのかもしれないけど、どうすんだこれ?


「大丈夫よ~。持ち主の先生にはちゃ~んと謝って、お金も定価に色を付けて払ったから~」


「マジですか?」


「大輔が壊したんだから当然よ~。先生は中古車で保険もあるのでって遠慮されたけど、迷惑料も含めての一括現金払いよ~。だから安心して~」


「凄い。流石お金持ち」


まさかの成金オチに、大月さんが(おのの)いている。


大人の世界はこういう打算的な解決の方が多いらしいし、大事にしたくないから敢えて追求を避けて引き去ってくれたのかもしれない。


「あのー。ところで美緒ちゃんは? 昨日も休んでいましたけど」

「ああ、美緒はね~、塞ぎ込んじゃってね~」


美緒は救急車で移動している時も落ち着きがなくて、検査で大輔が無事と分かった途端、気が抜けたように倒れて寝ちゃったのだ。それから彩さんに預けて俺は帰ったけど、昨日は美緒も学校を休んで、連絡しても全て無反応という有様だったのだ。


「うふふ~、じゃあ真守君、美緒を励ましてあげて!」

「俺が?」


「私と大輔で駄目なら、後はもう真守君しかいないじゃないの~」

「……………まぁ、それなら」


気が進まないけど、尽力してくれた彩さんの頼みなら断れない。


「じゃあ大輔、俺達3人で買ったお見舞いの果物だ。受け取れ」

「うわぁ。ありがとう真守」


「うふふふふ、じゃあこのお礼も兼ねて、皆さんを我が家のティータイムにご招待しましょうね~。大輔は手伝ってね~」


「彩さん、その、お手柔らかにお願いしますね」

「うふふふふ、む~り~。とっておきのおもてなしをしちゃうからね~」


いい笑顔で宣言してから行ってしまった。ただでさえこの豪邸に大月さんと木葉さんはビックリなのに、俺が体験したティータイム以上のものが出てきたら、どうなるのだろう。


そんな心配をしながら、美緒の部屋に向かう事にした。

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