35話 急転直下
「大輔!?」
「さっ、さささささ、佐藤君!!」
ヤバい! 大輔の登場に山葉さんが動揺してる!!
勘違いで大迷惑をかけた事が発覚して今は精神が不安定だから、大輔との接触は避けた方がいいと思ったのに。
「あれ? 確か……、山葉さんだったよね? 憶えてる? 同じクラスだったよね?」
「とっ、当然です! 忘れるなんて不可能です‼ ………………あの、突然ですみませんが、この小さい男の子は、本当に佐藤君なのですか?」
そうして〝市ヶ谷真守・観察日記〟で俺と一緒にいる写真を大輔に見せると。
「あっ、昔の僕と真守だ! うわー、すっごく懐かしい!」
大輔の無邪気な反応と裏腹に、山葉さんの血の気が下がり、どんどん顔が青くなっていく。
「じゃ、じゃあやっぱり、佐藤君は市ヶ谷真守と友達、なのですか?」
「うんっ! 真守は僕の大親友だよ!」
「ジャボギャ‼」
女の子が発していい筈のない悲鳴を吐いてから、更に恐る恐る。
「じゃあ、市ヶ谷の悪評を流した犯人を、どう思っていますか?」
「それは……………、許せないよ。真守がいなかったら僕は成長できなかった。真守は僕の支えで、大親友で、だからその親友を悪く…」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
ノートを投げ捨て、半狂乱になった山葉さんが窓際にいた俺と美緒を突き飛ばし、窓枠に足を掛けてから身を乗り出して。
「今すぐこの救いようのない肉体を浄化せねば! 後の佐藤君に祝福を!!!」
「ちょっ!! 駄目だ山葉さんっ!!!」
この一瞬がやけにスローモーションで、倒されたせいで山葉さんを掴む事ができず、そのまま窓からダイブしようとした後、大輔が落下してしまった。
◇ ◇ ◇
「アホか!! 落ちそうになった山葉さんを引っ張った反動でお前が落ちてどうする!!」
「兄さん大丈夫!? 私が見える!?」
あの瞬間、咄嗟に駆け寄った大輔のお蔭で山葉さんは助かったけど、代わりに大輔が3階から落下してしまい、下に停めてあった車の屋根部分に背中から激突、凄まじい轟音が学校中に鳴り響いたのだ。
この後に駆け付けた大月さん・木葉さんを保健室に直行させて、俺と美緒は外履きにも履き替えず一直線に大輔のもとへ向かったのだが、車の上側はペッチャンコ、廃車確定レベルで大輔がめり込んでいて、その車のフロントバンパーに飛び乗って大声で呼び掛けると。
「……………真守、……………美緒」
「よかった、意識はある!」
「兄さん、大丈夫なの兄さん?」
「駄目だ美緒、今は揺らしちゃ駄目だ! 落ち着け!」
「だって、だって兄さんが、私のお兄ちゃんが!!」
それでも大輔を揺らそうとする錯乱状態の美緒を止める為、全力で抱き付いた。
「後で好きなだけ俺を殴っていいから、今は堪えろ美緒!!」
「でも、でもでもっ!!」
今までの平静が嘘みたいに駄々っ子になってしまった美緒を宥め続けていると、掠れた大輔の声が聞こえてきた。
「泣かないで美緒。僕は……、大丈夫だから……」
「ほんとだよ! 絶対だよお兄ちゃん!!」
「あと真守、再会できて……、嬉し……かった……よ……………」
そう言ってから大輔が目を閉じて、動かなくなってしまった。
「おい大輔ふざけんな! 大丈夫なら目を開けろ! 気をしっかり持ちやがれ!!」
「おに、お兄ちゃ……、おにいちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」




