32話 気遣い
市ヶ谷の正体に、不覚にも俺様は絶叫してしまった。
「やべーぞ龍村、すっげーイケメンだ! しかもお嬢とめっちゃお似合いだぞ! ベストカップルオブジイヤーじゃねーか!」
「えっ? あの、僕は」
「来るなっ! 俺様は騙されねーぜ! そのイケメンでお嬢を誑かしたんだろ!」
「うわぁ! やめて危ないよ」
このイケメン野郎に丸め込まれない様にトンボを振り回していたら、お嬢が割って入ってきて。
「駄目だよ姫子ちゃん。お話がしたいなら暴れちゃ駄目。それは没収します」
「うぐっ! …………分かったぜお嬢、正々堂々サシでやろう」
そうして市ヶ谷になめられないように眼を飛ばしてながら、お嬢にトンボを渡したのだが
「って大丈夫かお嬢! そんなにトンボ重かったか!?」
「木葉さん、俺が代わりに持つから」
「おう、わりーな。頼む!」
伊万里の横にいるモブ男にトンボを預けてから、改めて市ヶ谷と対峙する。
「会いたかったぜ! お前にはお嬢が世話になったお礼を言っておきたかったんだ」
「えっ? お嬢って、木葉さんの事? それなら僕は何も……」
ヤベー、超緊張する。
まさか市ヶ谷がこんなイケメン野郎で、しかも超でけーうえに筋肉まであるぞ! 見れば見るほど美人のお嬢とお似合いだし、ぶっちゃけ悪い奴にも見えねぇ。だがイケメンは女を騙して遊びまくる糞で、だがこのままじゃ埒が明かねーし、右腕を前に差し出す俺様のファイティングポーズが…
ガシッ
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ、がふっ‼」
イケメン野郎からの握手に俺様は驚いて校庭をのた打ち回り、砂まみれになってからの校門柱に顔面直撃っ! 超いてぇ!!
「ごっ、ごめん! 手を伸ばしてきたから、てっきり握手のサインだと思って。大丈夫? 凄い音がしたけど、頭痛くない?」
頭を打って意識が朦朧とする中、イケメン野郎が俺様を抱きかかえてから、お凸を撫で……………、ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!!
全力で飛び跳ねて地面に顔面衝突、そこから強引に体を捻ってから即効で間合いを確保、警戒心MAXで再び俺様のファイティングポーズを構える。
「俺様をここまで追い詰めたのはお前が初めてだ。褒めてやるぜ」
「そ、そうなの? とにかく無事ならいいけど」
そうして改めて市ヶ谷と対峙したのだが、
(お腹痛い。予想以上の面白珍事。流石は天姫)
(天城はあわてんぼうだから)
(もしかしてこれ大月さんの仕業? だったからもう止めてあげなよ)
(えっ? みんな姫子ちゃんの様子がおかしい理由が分かるの?)
んんんんんんんんんんんんん?
なーんかおかしな気配を感じる。
と勘繰っていたら、別の女が近づいてきて。
「何をしているの? 兄さん」
「あっ、美緒」
「兄さん? じゃあてめーは市ヶ谷の妹か!?」
「……………何なの、この砂まみれで失礼極まりないヤンキー女は?」
「ああん? こいつが兄なら、てめーは市ヶ谷の妹だろ! 俺はこのニブチンエロ野郎に…」
ゴスッ!
がはっ、急に脇腹が。
今俺は……、何をされた………………?
「何か勘違いをしている様だから、落ち着いて話をしましょう」
そうして腹痛に襲われる中、さっきトンボを預けたモブ男が自己紹介をしてきたのだ。
◇ ◇ ◇
「ふざけんなよ! 俺だけバカみてーじゃねーか!」
「いやいや、天姫はナイスキャラ。まさか市ヶ谷を勘違いするとは思わなかった」
「天城、彼が市ヶ谷とは誰も言ってないわ。つまりこれは天城の独り相撲よ。いつもそうだけど、特に今日は面白かったわ。流石は伊万里ね」
「おい龍村、てめー伊万里と仲良くなり過ぎだろ」
「だって伊万里は、天城を愛でる会の同士だから」
「「ねー」」
「ハモんな!」
何かかおかしいとは思っていましたけど、どうやら姫子ちゃんは佐藤君を市ヶ谷君と勘違いしていた様です。ほんと、姫子ちゃんは昔からそそっかしいです。
「それで2人共、来てくれたのは嬉しいですけど、何か御用ですか? あと2人だけですか?」
「そりゃー、ってちょっと待てくれお嬢、電話だ。…………………何っ⁉ あの女、裏門から逃げようとしてるだと!? 分かったすぐ行く!!」
「という事よお嬢。他の人達は別の出口を見張っていたの。お嬢の酷い噂を流した女は、私達が平和的に話し合うから、明日から安心してね」
「そういう事だ! 今後も困った事があっら、何時でも相談してくれよなお嬢!」
「姫子ちゃん、奏ちゃん。……ありがとう」
とっても嬉しくて、また姫子ちゃんに抱き付いてしまいました。
「気にすんなお嬢。高校生でもお嬢と関われて、俺は嬉しいぜ!」
「天城はね、バカな自分が高校以降もお嬢と関わり続けるのは駄目だって、ずーっと強がっていたのよ」
「ばっ! 言うなよ龍村! 〆っぞおらぁ!」
「それはあの女を捕まえてからね」
「ああっ、確かにそっちが先か! じゃあお嬢、後で連絡すっから!」
そう言って姫子ちゃんんが走り出した後
「天城さーん、トンボ忘れてますよーーーーー」
市ヶ谷君の叫びに、走っていた姫子ちゃんが転んでしまい、その後にばつが悪そうにこちらに歩いてきてから、市ヶ谷君が持っていたトンボを奪い取りました。
「おせーよ! もっと早く言えよ! ありがとよ畜生っ!」
「す、すみません」
「あと市ヶ谷っ!! てめーには感謝してっけど、お嬢を泣かせたら殺す! このトンボでノーテンカチ割るからな!! そこのイケメンもだ!!」
「「はい。分かりました!!」」
「うしっ! じゃあなお嬢! またな!」
「またねー、姫子ちゃん、奏ちゃん」
そう言って、今度こそ2人が行ってしまいました。
その後、市ヶ谷君が恐る恐るという感じで、
「木葉さん。一応聞くけど、俺との関係って友達だよね?」
「はい、そうですけど」
「あー、うん。本人が自覚しているならいいか」
市ヶ谷君が今更な事を言ってきましたけど、何故でしょう?
それから美緒ちゃんが私の方を見て
「随分と個性的なお友達ね。木葉さんのイメージと合わないわ」
「ふっふっふっ、甘いのだよ美緒っち。これが優奈の正体。この集合写真を見て」
そうして伊万里ちゃんが先週末に撮った写真を見せてきたのですが
「悪いけど、木葉さんが女ヤンキー集団に拉致られた絵にしか見えないわ」
「酷いよ美緒ちゃん。みんな私の友達だよ」
「木葉さんが全然モテない理由が分かった。これは無理だ」
「だね。このヤンキー集団に突っ込んで優奈に告白は命懸け。今時モヤシ男子には不可能。だから市ヶ谷、気を付けてね」
「……………大月さん、言っても無駄だろうけど、面白くするのも程々にね」
もう、みんな失礼です。
だから今度は伊万里ちゃんだけじゃなく、5人で姫子ちゃん達に会いに行こう。
私の新しい友達を紹介する為に。




