31話 助っ人
美緒ちゃんはとっても可愛いです。
みんなは怖いと言いいますが、それはちょっとだけ口が悪いだけで、間違った行動をしているとは思えません。何よりもまっすぐで、努力家で、実は照れ屋さんなところが本当に可愛いです。
3日だけの友達って言われましたけど、私はそれ以降もずっと友達でいたいので、今のうちにうーんと仲良くなっておきたかったのですが………
「市ヶ谷の悪評は収束傾向、けど優奈の悪評が蔓延」
「はい。ごめんなさい」
伊万里ちゃんの指摘通り、私が嫌われ者になってしまいました。
市ヶ谷君の噂はデマという認識が大半で、それは翌日になっても変わらなかったのですが、今日になって私が一部女子から露骨に避けられてしまい、今みんなで食べているお弁当もあまり美味しくないです。
「裏を取ったけど、これは市ヶ谷真守とは別件よ。今は兄さんと木葉さんが一緒にいる場面が多くて、それが不満な女子の仕業よ。因みに首謀者は特定済みだから」
「流石は美緒っち。……男子が沈黙してる」
「えっ? いやその、真守ぅ」
「こういう女子のドロドロ話に男は口出し無用だよね? あと木葉さんごめん。俺の噂がなければこんな事には」
佐藤君が申し訳なさそうに頭を下げた後、市ヶ谷君がそう付け足してきました。
「いえ、市ヶ谷君は悪くないです」
「けど、木葉さんをこのままにする訳には」
ですが、どうすればいいのか見当もつきません。
一体どうすれば。
「みんな何を悩んでいるの? この首謀者は気に入らない相手を貶めたいだけの子供よ。適当な難癖で文句を吐き散らすだけの存在なんて何も怖くないわ」
「さ、美緒ちゃん。近いよー」
ずいっと凄まれましたが、今のは私を心配してくれたんだよね?
「じゃあ美緒っち、どうする?」
「簡単よ。首謀者を人気のない場所に誘導、そこでちょっと話をすれば終いい」
「おい美緒、それは平和的な解決方法だよな?」
「それは相手次第よ。大丈夫、ボイスレコーダーも持参するから」
「全力で喧嘩腰じゃねーか。危ないから止めろ!」
「見くびらないで。例え仲間を連れてきても、全て蹴散らしてみせるわ」
「美緒なら本当に問題なく蹴散らせるだろうが、そういう心配じゃないから!」
美緒ちゃんと市ヶ谷君の口論に佐藤君があたふたする中、私は美緒ちゃんの携帯に表示された首謀者にちょっと驚いています。
「この子ですか」
「あー、やっぱり。優奈は知ってるの?」
「同じ中学の子ですけど、殆ど話した事ないです」
「本当に何もなかった?」
「……………そういえば、『影で私の事を色々話していたから、●●●してきた』って私の友達が言っていたような」
「優奈、その言葉は下品、使用禁止」
「ええー」
知りませんでした!
市ヶ谷君達が気まずそうにしていますし、恥ずかしいです!!
「あと優奈、その友達って、もしかして天姫?」
「そうですけど」
「んっ? 天姫って誰?」
市ヶ谷君がそう聞いた後、伊万里ちゃんがニヤッとしてから。
「この件、私に任せて」
◇ ◇ ◇
それから昼休み・午後の授業が恙無く終わったのですが、やけに窓際が騒がしいので私も見てみると、
「見つけた!! お嬢ーーーーー、来たぜーーーーーーーーーーーーーー」
「姫子ちゃんに奏ちゃん? どうしてココに?」
別の高校に行ってしまったお友達の来訪に驚いていたら、伊万里ちゃんが私の鞄を渡してくれました。
「私が呼んだ。行って優奈、先生には私が説明しておく」
「でも、まだ帰りのHRが」
「そのHR前にココにいるって事は、向こうは授業サボって来てる。あとアレを振り回すのは止めてって今すぐ伝えに行って。下手すると先生に追い出される」
「あははははは……、じゃあ、行ってきます」
2人とは先週末に伊万里ちゃんと一緒に再会したばかりだけど、態々会いに来てくれて本当に嬉しいです。そうして校庭に飛び出すと、姫子ちゃんがアレをブンブン振り回しながら走り出して、校庭のど真ん中で抱き付いて、窓から校庭を見ていた人達から歓声が湧き上がりました。
「会いたかったぜお嬢! 事情は伊万里から聞いた! もう安心だぜ!」
「私も姫子ちゃんが来てくれて嬉しいです」
「だからその姫子ちゃんはやめてくれってお嬢」
「お嬢はずっとそう呼んでいるし、もう諦めたら? 姫子ちゃん」
「おい龍村! てめーまで姫子ちゃんって呼ぶな!」
「奏ちゃんも来てくれてとっても嬉しいです」
「お嬢が元気そうで何よりだわ」
2人は中学の大親友で、ボーイッシュでちょっと乱暴だけど、とっても優しいのが天城姫子ちゃんで、クールで大人っぽいのが龍村奏ちゃんです。
因みに〝お嬢〟は私のあだ名で、みんなからそう呼ばれていました。
「そういえば姫子ちゃん。手に持っているその……、長くて先が広がっている太い棒の様な」
「トンボだ! 校庭を滑らかにする超便利アイテムだぜ! 俺の高校から持ってきた!」
「ああ、そういう名前でしたね。でも姫子ちゃん、どうしてそんな物を?」
「聞いて驚け! 俺様は今、野球部のマネージャーなんだぜ!」
「えっ、凄いです! じゃあ夏は甲子園ですか?」
「ああっ‼ 去年は一回戦敗退の弱小高だが、俺様が来た以上はぜってー」
「天城、話が脱線してる。お嬢の件が先」
「おおっ、そうだったぜ! あの女っ、前にみっちり警告したのに、俺達がいなくなった高校でお嬢をイビるとはいい度胸だ!」
そう言って邪悪な笑みを浮かべた姫子ちゃんが、地面にトンボを叩き付ける。
相変わらずのワイルドっぷりです。
「それとお嬢、用事がもう1つある。市ヶ谷って奴に会わせろ」
「いいですけど、どうしてですか?」
「伊万里から連絡があったぜ! お嬢と抱き付いた後にエロい要求をされそうになったとか、見捨てられそうになったとか、とんでもないニブチン野郎だって!」
「ええっと、確かに間違ってはいませんけど、何かおかしい様な」
「やっぱか! ふふふふふ、俺のオカンも、後になって態度を豹変、肝心な所ですっ呆ける男の頭はカチ割れって断言してたからな!」
「要するに天城は、市ヶ谷という人にお礼がしたいの。お礼参りになるかもしれないけど」
「わぁ、それはとっても素敵ですね」
お礼参りがどういう意味か分かりませんが、きっとお礼の改まった言い方でしょう。
「木葉さーん」
「おおう、やっと来たか。あれが市ヶ…」
HRが終わって、市ヶ谷君と伊万里ちゃんがこっちに向かっていますが、それよりも先に彼が駆け付けたので、まずは彼から自己紹介をしましょう。
「紹介します。市ヶ谷君のとも…」
「すっげーーイケメンだーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」




