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これで解決!ヘタレイケメンの治し方  作者: 奈瀬朋樹
はじまり
3/40

02話 成長した佐藤家

「……………記憶違いかもしれないけど、家、デカくなってない?」


電車で地元に戻り、駅からここまでの道のりは懐かしかったし、目の前にあるSATOの表札にも見覚えがあるのだが、2階建てが3階に成長、外観もゴージャスに変貌、何よりも家が横に超伸びていた。


おかしい。

以前来た時よりも3倍くらい成長している。


「隣の土地が空いた時、買収して増築しただけよ。入って」


「すみません。お土産を用意して出直してもいいですか?」


これはもう入場料が取れるレベルだ。中から芸能人が出現しても不思議じゃない訳で、どっかにミニプールもありそう。今すぐ家に戻って、引っ越しの挨拶回りで残った品物を掻き集め…。


「いらない。早く来なさい」

「……はい」


有無を許さない諭しが入り、大人しく従いました。そうして委縮しながらゴージャスな門扉を通り、ガトリング砲にも耐えられそうな玄関扉に身構えていたら、横にあるタッチパネルに美緒がカードを翳して、ロックが解除される。


カードキーなんて初めて見たよ!

監視カメラも複数設定という銀行の金庫室レベルの物々しさにツッコミを入れたいが、人様の家にあれこれ言うのはマナー違反で、とにかく平常心で失礼のない様に振る舞わねば。


「ただいま」

「おっ、お邪魔します」


すぐに入らないと警告ブザーが鳴り出して警備員が出動しかねないので、そそくさと美緒に続いたけど、予想に反して玄関は落ち着いた雰囲気で、シャンデリアもなければ虎の絨毯もない。確かに広い家だけど、中は案外普通だなーと安心していたら、美緒がスリッパを俺の足元に置いてくれて、傍にあるスリッパラックのストックが10足以上ありました。


駄目だ、油断出来ない!

これは大勢の来客があり得るという装備で、この家には螺旋階段付きのパーティー会場があるかもしれない。


「ついて来て」

「あれ? 誰もいないの?」


ただいまを伝えたのに何の返事もなく、人が来る気配もない。


「ここからじゃ叫ばないと声は届かないわ。呼び出しが必要なら、そこの内線使うけど?」

 

壁に受話器が取り付けられているが、あれ電話じゃなくて内線だったの? 内線って会社にあるアレだよね? どうやら広い家には、一般家庭には知る由もない独自ルールがあるらしい。


「兄は自室、母はリビングで寛いでいる筈よ。それに玄関が開くとアナウンス音が鳴るから、私の帰宅には気付いているから」


「……………そう、ですか」


何かもう、頷くしかない。人生初の戦慄が幼馴染の玄関になるとは夢にも思わなかった。もう考える気すら失せて、美緒の従者になった気分でついて行きました。



   ◇  ◇  ◇



「ただいま」


「おかえり美緒~、高校の入学式って時間掛かるのね~。もう夕方だけど、おやつでも…」


やたらと広いリビングのソファーで寝そべっていた女性がこちらを見た途端、台詞が止まった。原因は俺だな。そして最初は硬直していたが、すぐニヤけ顔に変貌してこちらに詰め寄ってくる。


「あらあら美緒~、こちらの殿方は誰なのかしら~? 家に呼んだって事は、お母さんに紹介する気満々って事よね。久しぶりね~、美緒が人を連れてくるなんて。しかも男の子! 美緒は無愛想だから心配だったのよ~」


全力で歓迎されている。

予想外な方向で。

そしてこの反応に美緒は鬱陶しそうな様子だから、反応に困るなぁ。


「忘れたの? これ市ヶ谷真守よ」


「えっ? それって……」


サラッとネタ晴らしをされてから、さっさと自己紹介しろと美緒が睨んでくる。引っ越し続きでこういう場面には慣れているから、ビシッと決めよう。


「お久しぶりです、あやおばさん。小4の頃によく大輔と遊んでいた市ヶ谷真守です。色々あってこの町に戻ってきました。高校も大輔達と同じ山桜で、美緒に呼ばれでお邪魔しています」


「………………………………………………」


あれ? 上手く答えられた筈なのに無言だ。

ちゃんと頭も下げたけど、失礼な所あったかな?


「きゃ……」

「きゃ?」


「キャーーーーーーーーーーーーーーーー」


人妻がギュッて抱き付いてきた! 薄着カーディガンっていうのもあるけど、彩さんの胸は美緒と違って大きいから、俺の胸元に柔らかい感触がダイレクトに伝わってくる。抱き付かれたら分かるって伝承は、本当だったんだな。


「どうして真守君がココに⁉ 高校まで同じって本当なの⁉ 説明しなさい美緒!」

「本人に聞いて。私は見かけたから連れてきただけ」


興奮気味な彩おばさんに対して、美緒はクールな眼差しでこちらを眺めている。同級生の母親に抱き付かれ中なのをその娘に見られるって、最高に居心地が悪いな。


「あの、恥ずかしいので離れて下さい」

「あらあらごめんなさい。だけどそっか~、恥ずかしかったのね~」


やたらと嬉しそうな反応をしながら離れてくれた後、5年ぶりに会った彩さんをまじまじと見てから、


「前より美人になってません?」


そう呟いたら、無言でまたギュッと抱き付かれちゃいました。


「聞いた美緒? やっぱりお母さんのアンチエイジング成果は本物ね。体内年齢が10歳以上若いって診断結果だからね~」

「社交辞令じゃないの?」

「うふふ~、今のは絶対本音よ~。それにお世辞だったとしても、綺麗って言われて嬉しくない女子はいないからね~」


あのー、母と娘のコミュニケーションに口を挟む気はないのですが、抱き付いたまま会話を続行しないで頂けないでしょうか。リアクションが取れずにトーテムポールの如く無心で突っ立ち続けて、程なくして彩さんの抱き付きが解かれたけど、両肩を掴まれてのニンマリ笑顔が向けられる。


「ねぇ真守君、本当に綺麗になったと思う?」


うん、ここで捻くれ解答をしたら、両肩を掴む手が首に移動するな。冗談もNGな場面だから、正解を答えよう。


「とってお綺麗です。大人の魅力には慣れてないので、ドキドキしました」


補足すると、彩おばさんは誇張する必要性が皆無なレベルの美人だ。毛先がふわっとしたセミショートがとても似合っていて、髪がかかりそうな肩付近につい目線がいってしまう。これが人妻の絶対領域なのだろうか? 高校生の子供がいるだけあって若さはないけど、程よく体が引き締まっているというか、肉感がある。フィット感のある服装のせいで体のラインが強調されているからフェロモンも駄々漏れで、魅惑的って言葉がピッタリな印象である。


「うふふふふ~、じゃあ特別に〝彩さん〟って呼んでいいわよ~」

「ああ、おばさんって呼ばれたくないから回りくどい誘導してたのね、納得」


娘の痛烈なツッコミに、彩おばさんが満面の笑みを向けながら。


「美緒~、ちょ~っと聞こえなかったんだけど、何か言ったかしら?」

「……何も」


彩おばさんは19歳の時、4月に大輔・翌年3月に美緒を出産という荒技をやってのけたと聞いている。今もおばさんって雰囲気じゃないし、本人の希望なら従っておこう。


「それにしても真守君、成長したわね~。背も高くなってるし、体つきも男っぽくなったわね~。久しぶりだから感慨深いわ~」


「そうですか? だったら嬉しいです」


ギリギリだけど身長は170を超えられたし、身なりや姿勢には気を付けているから悪い印象はない筈だ。体型も平均維持が続く程度の努力はしているし、髪もナチュラルショートで清潔感を保っている。俺自身に目立った特徴はないけど、シンプルイズベストな仕上がりという奴だ。


「そう? 背は私と同じくらいだけど」

「うぐっ、確かにその通りだが、美緒が成長し過ぎなだけで、絶対大輔よりも高くなってるよね?」 

「そんな事ないけど」

「えっ? そうなの?」


そういえば、大輔についての情報が全然ない。予想外な指摘に???を並べていたら、彩さんがポンと手を叩く。


「ああ~、そうよね。まずは大輔と再会させないとね。真守君こっち来て~」

「分かりました。ところで彩さん、大輔はどんな感じに成長しました?」

「あの子は全然変わってないわよ~。愛情注いで育てたのにね~」


困った感じな笑顔で答えてきたけど、山桜は進学校だから頭はいい筈で、背も高い。だけど俺の知っている大輔はそうじゃなくて……………、駄目だ、想像できない。そんな疑問が消えないまま、3人で移動となりました。

私の上司の家が結構広くて、マジで内線ありました。あと美緒の身長は170手前、女子としてはかなり高いです。なお、人妻の絶対領域云々は個人的見解ですので。

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