25話 孤軍奮闘からの脱却
『君はもっと〝一期一会〟を大事にした方がいいぞ』
これ以上トラブルに巻き込まない様に2人から距離を取るのは間違っていない筈なのに、どうしてこの言葉が? しかも木葉さんの抱き付きが強くなって、まるで〝それ以上言わないで〟と訴えている様、大月さんに至っては蔑んだ目で俺を見る有様だ。
2人を思っての行動なのに、間違いなのか?
もう1つの選択肢があるのは知っているけど、これはずっと選んでこなかった答えで、どう行動すればいいか全く分からない。
だけど最後には自然と答えてしまった。
「その、非常に厚かましいお願いですが、この問題を解決する為に協力してくれないでしょうか」
俺が原因で迷惑を掛けているのにお願いという、あまりの図々しさに眩暈がしそうだ。2人の顔が見られないし、やっぱりこれは悪手だったか? そう判断して勉強会の永久欠席を申請しようとした直前、木葉さんが抱き付きを解いて、真っ直ぐに答えてくれた。
「良かったです。市ヶ谷君に見捨てられるかと思いました」
「何その解釈? 木葉さんは厄介事に巻き込まれた被害者だよね?」
訳が分からない。
上手くいったとしても「仕方がない」と渋々了承してくれるイメージしかなかったのに、何で満面の笑みで歓迎? 怒涛の予想外に自分の価値観が悉くひっくり返されてしまい、最早どう喋ればいいのかさえ分からなくなっていたら、大月さんに失笑されてしまった。
「市ヶ谷は聡いのに人間関係、友達という概念を全然分かってない」
「そ、そうかな?」
「お願いも他人行儀で30点だけど、もう私達と会わないと言えば0点だった。でも優奈の言葉が全然理解できてないからマイナス30点」
「結局0点になってますけど」
理不尽な採点だけど、俺には人と深く付き合った経験がないから、どう抗議すればいいかが分からない。だからとりあえず大輔と、そして仲良くなれた人と一緒に居続けて、迷惑を掛けない様にすればいいと思っていたけど、間違っていたらしい。
だけど何を正せばいいか見当もつかずにいたら、木葉さんが答えを示してくれた。
「友達から頼られないのは悲しいです。市ヶ谷君は1人だけで頑張るのと、友達と一緒に頑張るのはどっちがいいですか? 私は市ヶ谷君が困っていたら、何だってしますよ?」
「私と優奈の仲を取り持った時は〝深く考えなくていい〟って諭したのに、自分は考え過ぎて自滅してる。それに今縁切りする方が無責任。少しは私達を頼れ」
そういう、ものなのか?
まだ実感が湧かないけど、妙に気持ちがザワザワしている。だからこれはもう理屈では説明できない何かで、それに俺も男である以上、ここまで女の子に言われたら引き下がる訳にはいかない。
きっとこれは、最高の口説き文句だから。
「分かった。訂正する。こんな正面から文句も言えない陰湿な奴に屈したくない。事実無根なのに俺達の人間関係をグチャグチャにされてたまるか! だから一緒に何とかしよう!」
「はい。分かりました」
「了解」
ああ、今回は1人で頑張らなくていいのか。
集団行動は制約が多くて不便だけど、こんなにも心強かったんだなぁ。
「あと優奈、女の子が『何でもする』とか簡単に言わない。エロい要求されたらどうるの?」
「えっ? ……………ええっ⁉ い、市ヶ谷君、エッチなのはちょっと」
「しないって! そもそもエロ活動しても何も解決しないよね? 大月さん、笑いを無理矢理に入れなくていいから!」
「これ以上のシリアスは無理。ギャグを挟まないと死んじゃう病なので」
「あ、あははははは」
「伊万里ちゃんらしいです」
緊張感がまるでないけど、1人だったら絶対に笑わなかっただろう。
「あと市ヶ谷、女子の大半はまだ半信半疑で、悲観はまだ早い。この写真も昨日の深夜から出回ったもので、悪評も浸透してない」
「そっか。因みに2人は、写真についての質問はあった?」
「昼に1度だけ。放課後に3人で勉強会をしているだけで佐藤は不参加、他の写真は分からないって伝えた。合コンってキーワードは伏せた」
よしっ、じゃあまだ疑惑段階という事か。
だったら早急に上手く立ち回ればすぐ解決できるかもしれない。
そしてその為には、関係者全員が現状を正しく把握する必要があるから……
「俺は今すぐ大輔に説明に行く。もう無関係じゃないし、大輔から誤解って言えば解決するかもしれない」
「分かった。私と優奈は情報収集しておく」
「ありがとう。本当に助かる」
「当然。あと市ヶ谷、私達は友達だから遠慮は無用だし、嫌な事はちゃんと嫌って言う。気遣いと遠慮を履き違えないでね」
「うん。ありがとう大月さん」
ぐにっ
「ひゃんでまふぁ抓るの?」
「五月蝿い。市ヶ谷が青臭いせいで恥ずかしい台詞を言わされた。これは辱めの代償」
「えーっと、じゃあ私も」
こうして両サイドから頬っぺたを抓られてから、佐藤家に向かった。




