19話 死亡フラグ
どうせ2次会はないって根拠のない思い込みをした結果がこれだ。
大輔が涙目で俺の方を見てるし、これ絶対出たくないって意志表示だよね? 俺だって合コン初参加で勝手が分からないんだから、そんな目で見るなよ。
「私達は全員参加だから、男子達もみんな来てくれるよね?」
中田さん、みんなと言いつつ視線が大輔に固定ですけど? ってよく見たら中田さんじゃなくて田中さんだった。ややこしい。
「OKOK、俺達はノープロ…って、何だよ市ヶ谷」
「ちょーーーーっと相談させてね。すぐ終わるから」
藤田をとっ捕まえて(引け)から、男子4人で円陣組んでの緊急小声会議が始まった。
(なんだよ、お前らも出たいって言ってただろ!)
(捏造するな。それに今から食事となると帰りも遅くなるし、みんな門限大丈夫か? あと大輔、お前は2次会に参加したいのか?)
(えっと、僕はちょっと…)
(おいおい佐藤! 俺達はもう中坊卒業したんだぜ! 高校生なら夜遊びして当然、てゆーかみんなでワイワイ飯食うだけなら全然疾しくねーだろ!)
(た、確かにそうだし、門限もまだ大丈夫だけど……)
(ならOK! ここで引き下がったら男じゃねーぞ! つーかお前が消えたら肉抜きの焼き肉食べ放題で詐欺じゃねーか! 2次会はお前次第なんだぜ!)
(落ち着け藤田。あと下野、お前はどうなの?)
(どっちでもいい。みんなの意見に従う)
(了解。俺も下野と同意見だ。だから大輔、お前が決めろ)
(ええっ、そんな……)
(頼む佐藤! 一生分の借りにしていーから! この通り! お願いします!)
(…………………………うん、じゃあ参加する)
やっぱり折れちゃったか。
ただの助っ人だし、ここは自分の意志を素直に言ってほしかったけど、大輔には荷が重すぎたか。それにここで断ればブーイングの嵐だろうし、仕方ないか。
「話し合い終わりました。男子も全員参加だぜ!」
「だけど門限厳しい奴がいるから、9時解散で」
藤田の後にこう付け加えておいた。
せめてゴールは明確にしておきたかったし、何よりも女子の帰りが遅くなるのは駄目だ。最近は物騒だし、補導される危険もあるからね。こうして2次会開催が正式に決まった所で、七瀬さんが挙手してきた。
「だが何処に行く? 夜料金のカラオケで食事等は、流石に遠慮したいのだが」
ああ、確かにそれは予算オーバーだ。
そうなると低予算で、尚且つ高校生でも大丈夫な場所となると……
「近くにファミレスあるけど、そこにする? 個室もあった筈だし、場所も駅前だから暗くなっても大丈夫で、ついでに今は和風スイーツフェアが開催中だけど」
「ふむ、それなら私は構わないが、みんなはどうだ?」
この提案に全員が賛同した後、更に七瀬さんが家に連絡させてほしいと言ってきたので、みんなも連絡する流れになった。見た目はルーズな印象なのに、意外としっかりしているんだな。
俺は一人暮らしだから連絡の必要はないので、まだ6時前だから混んでないだろうけど、一応予備の店候補を調べようとしたら、大輔が申し訳なさそうに尋ねてきた。
「真守、携帯借りていい? 僕のはバッテリー切れで」
「ああ、そういえばそうだったな。どう…」
携帯を渡そうとした所で、気付いてしまった。
合コンで帰りが遅くなるって美緒にバレたら、殺される。
「??? 真守?」
「大輔、今から連絡するのは美緒じゃなくて彩さんだよな?」
「うん。勿論母さんだよ」
「あと彩さんの携帯番号は覚えてるか? 家の子機じゃなく、彩さんの携帯に直接連絡してほしいんだが」
「うん、家族の番号は全部覚えてあるからできるよ」
「よし! あと最後は俺に代わってくれ。夜遊びって勘違いされるのもアレだし、俺も一緒だって伝えれば安心するだろうから」
「分かった」
よしっ、これで美緒に情報が漏れる事はない。
完璧な予防線が張れたと安心してから携帯を渡してから、大輔が話し始める。
「もしもし母さん。大輔だよ。ごめん、今日は帰りが遅くなるから夕食はいらないから。……………理由? 真守と一緒に合コン中なの。…………………………………うん、分かった。はい真守、代わって」
「おっ、意外と早かったな」
彩さんはフランクな性格っぽいし、こういう事には寛大なのかもしれない。
そう思いながら渡された携帯に耳を当てると、
『どういう事、説明してくれるかしら?』
あっ、俺死んだ。
まさかの美緒ボイスに全細胞に戦慄が走り、殺意が凝縮されたド低音に、マイク(送話口)を指で塞いでから大輔に尋ねる。
「おい、彩さんと話すって約束したよな?」
「うん。でも合コンって言った途端、美緒が出てきたの。それで真守に代わってほしいって」
「そ、そっかー」
やばーい。この状況から美緒を納得させる手段が思い付かない。しかも事後報告で合コンってキーワード出しちゃったから印象最悪だし、最早どう足掻いても絶望じゃ…
『聞こえているの? 市ヶ谷真守』
「はいっ、聞こえてます!」
『そう。兄さんの携帯に繋がらなくて、これ以上遅くなればあなたに連絡してみようと思っていたのだけど……………、弁明は必要?』
「必要です! 説明させて下さい!」
目の前に美緒はいないのに地面におでこを叩き付けそうな勢いでお辞儀をして、言葉を選びながら経緯を伝える。
『つまり、ハメられて合コン参加、今も帰れる状況じゃないから連絡してきたと?』
「そうです! それにこれは進学校同士の交流がメインで、場所も地元駅前ですぐ帰れる距離だから安心して下さい!」
『そう。これから何処に行く予定なの?』
「駅前のファミレスです。前に美緒と食事した所です」
『分かったわ。…………今はまだ大目に見てあげるけど、これ以上の失態を重ねたら、次からは手加減なしの肘鉄をプレゼントしてあげるから』
……何………、だと……………。
あの威力で、手加減していたというのか!?
既に死ぬ程痛いのに、もし美緒の言葉が本当なら、俺の横っ腹が消し飛びかねない。
『とにかく、可能な範囲で状況報告をして頂戴。いい?』
「はい、分かりました!」
『返事だけは一人前ね。それじゃあ合コン、楽しんでね』
ブツッ、ツーツーツー。
………………………………………こえええええええええええええええええええええ!
最後の『楽しんでね』だけが妙に可愛い声だったのが余計怖いよ!
どっ、どどどどどどうすれば!?
「真守、電話が終わったなら行こう。みんな待ってるよ」
「お、おう。悪い、待たせた」
俺の電話が最後だったので急いで戻り、ファミレスに向かう事になりました。移動中に大輔から「顔色が悪いけど大丈夫?」って心配されたけど、気のせいだよね?




